V.推計の方法と仮定

5.国際人口移動の仮定            6.参考推計(超長期推計)についてはこちら

(2) 国際人口移動の仮定設定

 国際人口移動の動向は、日本人と外国人では異なった動向を示していること、またそもそも日本人と外国人の人口移動は異なる要因が働いていると考えられることなどから、本推計の国際人口移動の仮定においては、日本人と外国人を分けて設定を行った。すなわち、日本人については年齢別入国超過率を用いて人口規模に比例的に発生させる一方、外国人については率を用いず、直接年齢別入国超過数を求めている。外国人について率を用いない理由は、仮に率を用いると外国人の出入国数が日本人人口の年齢構造に依存して決まるなどの矛盾が生ずるからである。日本人と外国人、それぞれについての具体的な仮定設定の方法は、以下の通りである。

 1)日本人の国際人口移動

 日本人の国際人口移動については、概ね出国超過傾向を示していることから次のように仮定した。まず、性、年齢別日本人人口を分母とした日本人の入国超過率について1995〜2005年のデータを基に、その期間に発生した事象等の影響や偶然変動により国際人口移動が一時的あるいは短期的に大きく変動した年次を除いた。具体的には、2001年の同時多発テロ事件と2003年に顕在化した新型肺炎(SARS)による影響により変動が顕著であった2001年から2004年を除外した。また、それ以外の年次においても偶然変動を取り除くため年齢毎にその期間において最大および最小値を示す年次も同様に除いた。それらを除去した5年分のデータの平均値を求め、さらにそれを平滑化し日本人の性、年齢別入国超過率とした(図V-5-3)。将来人口の推計に際しては、その率を一定とし、男女年齢別日本人人口に乗ずることにより、日本人の入国超過数を算出した。

 2)外国人の国際人口移動

 外国人の国際人口移動の動きをみると、近年は概ね入国超過を示し、また増加傾向にある。入国超過数を国籍別にみると、1990年代半ば以降、アジア(主に中国)からの入国が全体の約8割を占めている(図V-5-4)。そこで、主な国について男女別に1995年以降の動向を考慮し、短期的な変動を除いた年次分を用いて指数曲線をあてはめることにより2025年まで投影を行い、以降は一定とした(図V-5-5)。


 なお、国際人口移動の基本データとなる『出入国管理統計』(法務省)による外国人の国籍別入国超過数は、観光などの短期滞在者が含まれ、また年次観察の期間は1〜12月である。本推計においては、『人口推計年報』(総務省統計局)で用いられている在住者の定義(滞在日数91日以上)と期間(当年10月〜翌年9月間)に合致する形式のデータが必要となるため、そのように調整した値を用いた。

 本推計において、入国超過数を年齢別に推計するためには、外国人入国者の男女年齢別割合が必要である。外国人入国超過の男女年齢別分布の実績をみると、近年は安定していることから、本推計では1999年から2005年の6か年分の割合の平均値を求め、これを平滑化することにより仮定値とした(図V-5-6)。以上、外国人の男女別入国超過数と入国超過の男女年齢別分布を組み合わせることにより、外国人の国際人口移動に関する男女年齢別入国超過数の仮定とした。

 3)国籍異動について

 本推計では、出生ならびに国際人口移動の仮定において日本人と外国人を別に扱うことにより精密な総人口の推計を行うこととしている。これを正確に行うためには、さらに、国籍の異動を考慮しなくてはならない。

 国籍異動による日本人の純増の実績をみると、近年は日本に在住する外国人の増加にともなって増加がみられる。そこで、国内の外国人人口を分母にした男女年齢別国籍異動の純増率について1995年から2005年間の平均値を求め、平滑化した率を算出して、これを外国人が日本国籍を取得した率とみなした(図V-5-7)。本推計においてはこの率を一定とし、国籍異動の仮定値とした。

6.参考推計(超長期推計)について

 本推計では、2006年から2055年までの50年間を推計期間としているが、長期の人口推移分析の参考とするため、あわせて平成68(2056)年から平成117(2105)年について参考推計を行った。生残率、出生率、出生性比、国際人口移動率(数)は、平成67(2055)年以降一定とした。

V.推計の方法と仮定
 1.推計の方法
 2.基準人口
 3.出生率の仮定
  (1) 近年の出生動向
  (2) 出生率の推計方法
  (3) コーホート出生指標の仮定設定
   1)仮定設定の方法と参照コーホート
   2)平均初婚年齢と生涯未婚率の推定
   3)夫婦完結出生児数の推定
   4)離死別・再婚効果
   5)コーホート出生仮定値
  (4) 年次別出生率の推計結果
  (5) 出生性比の仮定
 4.生残率の仮定(将来生命表)
  (1) 近年の死亡動向
  (2) 生残率仮定設定の方法
  (3) 将来生命表の推計方法
  (4) 将来生命表の推計結果
 5.国際人口移動の仮定
  (1) 近年における国際人口移動の動向
  (2) 国際人口移動の仮定設定
   1)日本人の国際人口移動
   2)外国人の国際人口移動
   3)国籍異動について
 6.参考推計(超長期推計)について