V.推計の方法と仮定

5.国際人口移動の仮定

(1) 近年における国際人口移動の動向

 国際人口移動は、国際化の進展や経済変動に伴い大きく変化する。さらに、わが国の政策や施策あるいは諸外国における経済・社会状況によっても変動する。近年の動向を入国超過数によってみると、年次によって大きく変動しており時系列的にみて必ずしも一定の傾向を示しているとはいえない(図V-5-1)。

 しかし、国際人口移動を日本人と外国人に分けて観察すると、それぞれ異なる特徴がみられる。すなわち、日本人は概ね出国超過の傾向がみられ、1980年代後半から1990年代中葉にかけては平均で約4万人規模に達している。それに対し、外国人は、近年大きな上下動を繰り返してはいるが、大幅な入国超過が続いている(図V-5-2)。

 日本人、外国人ともに、1980年代後半以降、出入国超過数の規模が増大しているが、その背景には、国際経済状況、ならびに外交関係の変化、それにともなうわが国における出入国に関する法制度の変更などがある。具体的には、1980年代中葉以降に外国人留学生を積極的に受け入れる政策をとったこと、あるいは1980年代後半、日系人を中心とした南米からの入国を大幅に緩和したことなどに起因して、外国人の入国超過が急増した。その一方で、1990年代半ばには興行目的の入国に制限を設けたことなどにより特定国からの入国者が一時的に減少している。2000年以降は、就学や興行による入国の制限などにより外国人の入国超過数の増加はやや縮小したものの、一定規模の外国人入国超過数が保たれている。それに対し、日本人の国際人口移動の動向は、企業の海外進出など国際的な人的交流の活性化にともない総じて出国超過の傾向がみられる。しかし、2001年に生じた同時多発テロ事件や2003年に顕在化した新型肺炎(SARS)など、国際的な状況の変化を背景に日本人の帰国者の増加、出国者の減少が特定時期に集中して生じ、出入国の動向は大きく変動した。

V.推計の方法と仮定
 1.推計の方法
 2.基準人口
 3.出生率の仮定
  (1) 近年の出生動向
  (2) 出生率の推計方法
  (3) コーホート出生指標の仮定設定
   1)仮定設定の方法と参照コーホート
   2)平均初婚年齢と生涯未婚率の推定
   3)夫婦完結出生児数の推定
   4)離死別・再婚効果
   5)コーホート出生仮定値
  (4) 年次別出生率の推計結果
  (5) 出生性比の仮定
 4.生残率の仮定(将来生命表)
  (1) 近年の死亡動向
  (2) 生残率仮定設定の方法
  (3) 将来生命表の推計方法
  (4) 将来生命表の推計結果
 5.国際人口移動の仮定
  (1) 近年における国際人口移動の動向
  (2) 国際人口移動の仮定設定
   1)日本人の国際人口移動
   2)外国人の国際人口移動
   3)国籍異動について
 6.参考推計(超長期推計)について