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社会保障費用統計

令和5年度 社会保障費用統計


1 主な用語の解説
1-1 OECD基準

社会支出
  社会支出の範囲は、人々の厚生水準が極端に低下した場合にそれを補うために個人や世帯に対して財政支援や給付をする公的
 あるいは私的供給とされている。ただし、制度による支出のみとし、人々の直接の財やサービスの購入、個人単位の契約や世帯間の
 助け合いなどの移転は含まない。
  当該制度が「社会的」と判断することが含まれる条件だが、その給付にひとつ又は複数の社会的目的(政策9分野)があり、
 制度が個人間の所得再分配に寄与しているか、又は公的な強制力をもってその制度が存在しているかによって判断される。
  これらの基準を踏まえて、我が国の社会支出集計では、以下に説明する公的社会支出と義務的私的社会支出を集計しており、
 施設整備費など直接個人には移転されない費用を含めたデータを提供している。公的、私的社会支出は、誰が資金面の流れを
 総合的にコントロールしているか、すなわち公的機関か私的な実施主体か、という点を基礎として区別される。

公的社会支出
  公的社会支出は一般政府(中央、地方政府、社会保障基金)によって資金の流れがコントロールされる社会支出であり、
 社会保険や社会扶助給付として支給される。

義務的私的社会支出
  義務的私的社会支出は、私的部門により運営されるが法令により定められた社会的支援であり、例えば公的機関の規定に基づく
 雇用主による休業被用者への直接疾病手当、私的保険基金への強制拠出による給付などがある。

政策分野別社会支出
  社会支出は9つの政策分野に分類される。各政策分野の定義は以下の通り。
 なお、各政策分野に含まれる具体的な給付・事業については巻末参考資料2-2を参照のこと。

  (1)高齢
    退職によって労働市場から引退した人及び決められた年齢に達した人に提供される現金給付が対象。給付の形態は年金及び、
   一時金を含み早期退職をした人の給付もここに含めるが、雇用政策として早期退職をした場合の給付は「積極的労働市場政策」
   に計上。高齢者を対象にした、買い物、洗濯等のIADL(手段的日常生活動作)に関する支援サービスなども計上。
  (2)遺族
    被扶養者である配偶者やその独立前の子どもに対する制度の支出を計上。
  (3)障害・業務災害・傷病
    業務災害補償制度下で給付された全ての給付と障害者福祉のサービス給付、障害年金や療養中の所得保障としての傷病手当金
   などを計上。
  (4)保健
    医療の現物給付を計上(治療にかかる費用であって、傷病手当金は含まない)。具体的には、入院・入院外治療費、救急医療
   サービス、調剤、医療用品、予防、長期療養・介護サービスのうち、医療・看護系サービス及び入浴・食事・排泄等のADL(日常
   生活動作)に関する支援サービス等。
  (5)家族
    家族を支援するために支出される現金給付及び現物給付(サービス)を計上。
  (6)積極的労働市場政策
    社会的な支出で労働者の働く機会を提供したり、能力を高めたりする為の支出を計上。障害を持つ勤労者の雇用促進を含む。
  (7)失業
    失業中の所得を保障する現金給付を計上。なお、年金受給開始年齢であっても失業を理由に給付されるものを含むが、それが
   労働政策の一部であれば「積極的労働市場政策」に含まれる。
  (8)住宅
    公的住宅や対個人の住宅費用を減らすための給付を計上。
  (9)他の政策分野
    上記に含まれない社会的給付を計上。具体的には公的扶助給付や他に分類できない現物給付。

1-2 ILO基準

社会保障給付費
  ILOの第18次及び第19次の社会保障費用調査では、次の3つの基準を満たすものを、社会保障制度として定義している。
  ①制度の目的が、(1)高齢 (2)遺族 (3)障害 (4)労働災害 (5)保健医療 (6)家族 (7)失業 (8)住宅 (9)生活保護その他、
   のリスクやニーズのいずれかに対する給付を提供するものであること。
  ②制度が法律によって定められ、それによって特定の権利が付与され、あるいは公的、準公的、若しくは独立の機関によって
   責任が課せられるものであること。
  ③制度が法律によって定められた公的、準公的、若しくは独立の機関によって管理されていること。あるいは法的に定められた
   責務の実行を委任された民間の機関であること。

部門別社会保障給付費
  部門別としては、「医療」「年金」「福祉その他」の3つに区分している。これは、我が国独自の区分方法であり、ILO第18次調査の
 社会保障給付費収支表(12-19頁)を基礎としている。

  (1)医療
    社会保障給付費収支表のうち、「疾病・出産」の医療及び「業務災害」の医療の合計である。医療保険、後期高齢者医療の
   医療給付、生活保護の医療扶助、労災保険の医療給付、結核、精神その他の公費負担医療等が含まれる。
  (2)年金
    社会保障給付費収支表のうち、「業務災害」の年金及び「年金」の合計である。厚生年金、国民年金等の公的年金、恩給及び
   労災保険の年金給付等が含まれる。
  (3)福祉その他
    社会保障給付費収支表の給付のうち、「医療」と「年金」以外の項目の合計である。社会福祉サービスや介護対策に係る費用、
   生活保護の医療扶助以外の各種扶助、児童手当等の各種手当、医療保険の傷病手当金等、労災保険の休業補償給付等、雇用保険の
   求職者給付等が含まれる。また、再掲した介護対策には、介護保険、生活保護の介護扶助、原爆被爆者介護保険法一部負担金、
   雇用保険等の介護休業給付等が含まれる。

機能別社会保障給付費
  ILOの第19次社会保障費用調査に基づく分類である。機能別社会保障給付費の定義及び各機能に含まれる給付・事業については
 巻末参考資料2-4を参照のこと。

社会保障財源
  社会保障給付費(ILO基準)、管理費及び施設整備費等に充てられる財源であり、大分類では社会保険料・公費負担・資産収入・
 その他の4つに分かれる。

  (1)社会保険料
    事業主と被保険者に分かれる。公務員制度で事業主が国である場合は、国が事業主として拠出した金額はたとえ国庫支出金で
   あっても、事業主拠出に計上する(地方公務員制度についても同様)。
  (2)公費負担
    国(国庫負担)と地方(他の公費負担)に分かれる。
  (3)資産収入
    利子、利息、配当金等が含まれる。
  (4)その他
    積立金からの受入等が含まれる。

1-3 EU基準

社会保障財源
  社会保障給付、管理費及び施設整備費等に充てられる財源であり、「社会保険料拠出」「一般政府拠出」「他の収入」の3区分から
 構成される。

  (1)社会保険料拠出
    ①事業主拠出
     「現実事業主拠出」と「帰属事業主拠出」の2区分から成る。「現実事業主拠出」とは、被用者の社会保障給付の受給権
    確保のため事業主が社会保障制度に支払うものである。「帰属事業主拠出」とは、基金や積立金を設けずに事業主が被用者
    等のために拠出するものである(注1)。なお、公務員制度において、国又は地方公共団体が事業主として拠出した金額は、
    事業主拠出に計上する。
    ②被保険者拠出
     社会保障給付の受給権の取得または維持のため個人又は家計が社会保障制度に支払うものである。被保険者拠出の区分は
    「被用者」「自営業者」「年金受給者その他」の3区分から構成されるが、日本の社会保障財源の集計においては統計の制約
    により「被用者」「自営業者・年金受給者その他」の2区分として表章している。

  (2)一般政府拠出
    政府が管掌する非拠出制度(注2)を運営する費用または社会保障制度に対する国又は地方公共団体からの財政支援であり、
   「目的税」と「一般収入」の2区分から成る。「目的税」とは、租税及び公課からの収入で法律により社会保障制度の資金調達
   のみに用いることのできるものである(注3)。「一般収入」とは、目的税以外の一般政府拠出である。社会保障財源表においては、
   「目的税」と「一般収入」の計である「一般政府拠出」を表章している。

  (3)他の収入
    「資産収入」と「その他」の2区分から成る。「資産収入」には公的年金制度等における運用収入等が含まれる。資産収入
   以外の雑収入等は「その他」に区分される。公的年金や雇用保険制度等における積立金からの受入は各制度内部の費用移転と
   して扱うため「その他」に計上しない。


(注1)「帰属事業主拠出」に該当する我が国の制度は、国家公務員災害補償制度、地方公務員等災害補償制度(地方公務員災害補償
   基金を除く)、旧公共企業体職員業務災害である。
(注2)社会保険料の拠出を受給の要件としない制度。
(注3)目的税には例えばフランスの社会保障目的税である一般社会拠出金が該当する。我が国の消費税収入は、消費税法において
   「地方交付税法に定めるところによるほか、毎年度、制度として確立された年金、医療及び介護の社会保障給付並びに少子化に
   対処するための施策に要する経費に充てるものとする」とされているが区分経理されないため、EU基準上の「目的税」ではなく
   「一般収入」と整理している。日本の目的税には、医薬品副作用被害救済制度など原因企業が費用負担する制度における拠出金
   が該当する。




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