社会保障費用統計
令和5年度 社会保障費用統計
社会保障費用統計について
社会支出(OECD基準)、社会保障給付費・社会保障財源(ILO基準)、社会保障財源(EU基準)は、ともに国際機関が
定める基準に則って集計された統計であり、本書ではこれらを総称して「社会保障費用統計」と呼んでいる。
1. 社会支出(OECD基準)
OECD(経済協力開発機構)は、1996年より社会支出データベースの公表を開始した。OECDの基準に基づく「社会支出」は、
その範囲を「人々の厚生水準が極端に低下した場合にそれを補うために個人や世帯に対して財政支援や給付をする公的あるいは
私的供給」としている。ただし、集計する範囲は、制度による支出のみを社会支出と定義し、人々の直接の財・サービスの購入や、
個人単位の契約や移転は含まない。
当該制度が「社会支出」に該当するか否かの判断は、まず、その給付がひとつ又は複数の社会的目的をもっており、制度が
個人間の所得再分配に寄与しているか、又はその制度への関与が公的な強制力をもって行われているかによる。
社会支出では、社会的目的を次の9つの政策分野に分けている。
(1)高齢 (2)遺族 (3)障害、業務災害、傷病 (4)保健 (5)家族 (6)積極的労働市場政策
(7)失業 (8)住宅 (9)他の政策分野
社会支出には、現金給付(例えば、年金、産休中の所得保障、生活保護など)、サービス(現物)給付(例えば、保育、高齢者や
障害者の介護など)を含む。
OECD基準の「社会支出」は、ILO基準の「社会保障給付費」に比べて、その範囲が広く、施設整備費など直接個人には移転され
ない費用も計上されるという違いがある。
2. 社会保障給付費・社会保障財源(ILO基準)
我が国は、1951年にILO(国際労働機関)に再加盟して以降、ILOの調査に協力し、政府機関(当初は旧労働省、後に旧厚生省、
現在は国立社会保障・人口問題研究所)において、ILO基準に則した社会保障費用の取りまとめを行っている。
ILOは、1949年以来社会保障費用について調査を実施してきており、その調査結果を刊行物として公表してきた。同調査では、
社会保障の最低基準に関するILO条約No.102(1952年)、ILO勧告No.67(1944年)及びNo.69(1944年)の枠組みに基づいて、
社会保障の収入と支出が集められた。
その後社会保障の概念は、社会経済情勢の変化に伴って、拠出や雇用の実態に関わらず、全ての国民に対する一般的な援助を
提供する社会保護の枠組みを含むまで拡張された。そこでILOは、1997年に実施された第19次調査より、9つのリスク・ニーズを
カバーする制度の収支を集計する枠組みへと移行し、以下3つの基準を満たすものを社会保障制度と定義した。
①制度の目的が、次のリスクやニーズのいずれかに対する給付を提供するものであること。
(1)高齢 (2)遺族 (3)障害 (4)労働災害 (5)保健医療 (6)家族 (7)失業
(8)住宅 (9)生活保護その他
②制度が法律によって定められ、それによって特定の権利が付与され、あるいは公的、準公的、若しくは独立の機関によって
責任が課せられるものであること。
③制度が法律によって定められた公的、準公的、若しくは独立の機関によって管理されていること。あるいは法的に定められた
責務の実行を委任された民間の機関であること。
我が国では、第19次調査基準による集計を1994年度以降について行っているが、過去のデータとの比較可能性を担保するため、
それ以前の第18次調査基準による集計も引き続き公表している。
ILOの社会保障費用調査は第19次をもって終了し、2005年に新たな調査(Social Security Inquiry)へ移行した。新調査では、
ILO基準に準拠したデータのみならず、同基準と集計範囲が必ずしも同一ではない他の国際基準に基づいて集計されたデータの
登録が認められた。その結果、1990年代後半以降において、ILO基準で統一された定義による国際比較が不可能となっている。
そのため、本統計が2012年7月に、統計法上の基幹統計に指定されたことを契機に、諸外国のデータが定期的に公表されている
OECDの基準に基づく「社会支出」の集計を充実させることを通じて、社会保障費用統計としてその国際比較性を向上させること
とした。
3. 社会保障財源(EU基準)
EU(欧州連合)では、1980年代より、Eurostat(欧州連合統計局)において、欧州総合社会保護統計(European system of
integrated social protection statistics, 以下 ESSPROS)として、EU諸国における家計への社会保障給付と社会保障財源に
関する統計を作成している。
ESSPROSにおいて、社会保障制度は、以下のように定義される。
下記に定義されるリスクやニーズによる経済的負担を、世帯または個人から取り除くための公的または民間機関からの全ての
介入を含む。
(1)傷病・保健医療 (2)障害 (3)高齢 (4)遺族 (5)家族・児童
(6)失業 (7)住宅 (8)社会的排除(他の分類に入らないもの)
我が国では、ILO基準による社会保障財源表を1951年度以降について、作成、公表してきたところであり、OECDでは社会保障
財源を集計するための基準が定められていない。
こうした中、「公的統計の整備に関する基本的な計画」(2018年3月6日閣議決定)において、社会保障財源の国際比較が可能と
なるEU(ESSPROS)基準に準拠した統計の作成、提供を開始するとされたことを踏まえ、「令和3年度社会保障費用統計」より、
新たにEU(ESSPROS)基準による集計を独自に行い、社会保障財源表の公表を開始した(同基準の主な用語等については、「巻末
参考資料」参照)。
なお、社会保障財源表(EU基準)の公表により財源の国際比較を行うことが可能となるが、引き続きILO基準による社会保障財源
の集計、公表は継続することとしている。
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