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(1)研究目的
本研究は,イギリスのNational Health Service(NHS)の変遷を地域医療計画の展開という観点からを捉え直し,
サービス間の連携を促進するためにどのような取り組みがなされたのかを,バーミンガムなどの都市圏におけ
る施策を軸として検討していく。現地の資料館や公文書館等で入手可能な一次資料及び内外の二次研究の成
果,NHS 関係者等への聞き取りをもとにして,切れ目のないサービス提供に向けた具体的な施策を明らかにし,
考察を行う。それによって,現場のサービス従事者はいかにして政策の限界を克服し,保健・医療・福祉サー
ビスの連携を図ったのかを検証したい。本研究は,イギリスの地域医療計画の特色を地域社会に即した形で
解明するだけでなく,現代に至る地域医療連携の変遷を福祉国家の展開の中に位置付けていくことも目指し
ている。
(2)研究計画
最終年度である今年度は,以下の2点に焦点を当て,これまで収集してきた史資料の分析を集中的に進め
る計画である。
@ 医療政策における患者・医療従事者の位置付け:患者本位の医療ということが昨今のNHSでは強調さ
れている。医療政策への住民参加は1974年に開始され,1991年には「患者憲章」が制定され,医療制
度における患者の権利と義務が明示された。その後も形を変え,多様な取り組みがなされている。こ
うした変遷を踏まえ,患者の位置づけへの検討を通じて,同時に医療従事者の役割を検証したい。
A 医療制度と公衆衛生との関係性:20世紀に入り,公衆衛生施策の中心が環境衛生から対人保健へと変
化をして行く過程で,保健医療サービスにおける母子福祉の位置づけは重要なポイントであった。そ
こで本研究では,医療保障制度と公衆衛生との関係を探るべく,NHS発足以後の母子福祉施策(Maternity
and Child Welfare)の変遷を検討し,助産師や保健師の活動と病院・診療所との関係などを考察する。
本年度も引き続き学会での報告や投稿論文の執筆に積極的に取り組んでいく。研究者や医療従事者と意見
交換を行い,資料収集をすることを目的とした10日間程度の現地調査を予定している。
(3)研究組織の構成
研究代表者 白P由美香(社会保障応用分析研究部研究員)
(4)研究成果の公表(本年度分の場合は,研究成果の公表予定)
学会,研究会等で研究成果の報告を行い,学術雑誌へ論文を投稿する予定である。