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(1) 研究目的
本研究の目的は個人属性を踏まえた所得と健康の関係を明らかにすることにより,所得保障のあり方を踏
まえた医療保障制度のあり方を具体的に示すことである。得られた結果をもとに,特に国民健康保険,のあ
り方を検討することである。
(2) 研究計画
昨年度の成果を踏まえて,本年度は実証研究の成果から制度改正に対する含意を得ることを中心にさらに分
析を進める。実証研究については昨年度の研究成果との関連から,a)乳幼児医療費助成制度等の自己負担軽
減策と健康等との関係,b)三大疾病の罹患年齢の違いと生涯所得の関係及び罹患後の生涯医療費自己負担額
の推計,c)加入者の疾病罹患と医療保険制度間の異動の関係,について分析を行う。制度のあり方に対しては,
d)医療保険制度間の保険料賦課水準及びリスク調整のあり方,e)医療費水準や保険料水準と未納との関係,f)
高齢期の医療・所得保障制度のあり方,g)子どもへの医療保障のあり方,については社会保障制度に造詣の
深い研究者等の協力により,制度論の観点からコメントを受けつつ検討を行う。これらを総合して,医療(介
護)保障制度・所得保障制度改革への含意を検討する。
また,本年度も引き続き,分析に利用する調査データ等の申請作業を行う。公的統計の使用申請の実施,市
町村での調査や個人に対するアンケート実施に係る倫理審査の受審,調査の実施を迅速に実施し,データが
利用可能となったものから随時分析に着手する。
@ 既存統計については厚生労働省大臣官房統計情報部等へ使用の申出を行って分析を実施する。使用す
る統計調査は,国民生活基礎調査,国民健康・栄養調査,国民健康保険医療給付実態調査報告,国民
健康保険実態調査報告,である。
A 市町村での調査を行う研究
所得水準と健康状態・要介護状態の関係をコホート別に追跡するデータセットを作成し,地域間比較可
能な形で分析を実施する。
B 個人に対するヒアリング・アンケート調査による研究
市町村での調査実施は被用者保険加入の勤労者の情報把握には限界がある。また,個別疾患の費用と負
担の現状把握は,当該疾患の発現率が低い場合に効率性が低くなる。この弱点を補完するために実施する。
1 ) 疾患別の費用負担の現状を把握するために個人に対するヒアリングを継続して実施する。精神疾患
は疾病負担が大きいことが知られており,同疾患について調査を実施しているところである。
2 ) 引退期の個人の所得と健康の関係について分析するためにアンケート調査を引き続き同一個人を追
跡可能な形で実施する。疾病罹患の有無と引退時期の早さ,所得の多寡の関係等を明らかにする。
今年度は昨年度得た成果を学会等で報告するほか,所得と健康の問題に関する世界的な権威であるMichael
Grossman 教授(ニューヨーク州立大学)を招へいし,研究成果について幅広く内外の研究者と議論する機会
を持つことを検討している。
(3) 研究実施状況
(4) 研究組織の構成
研究代表者 泉田信行(社会保障応用分析研究部第1室長)
研究分担者 川越雅弘(企画部第1室長),野口晴子(社会保障基礎理論研究部第2室長),
小島克久(国際関係部第2室長),菊池 潤(社会保障応用分析研究部研究員),
山田篤裕(慶應義塾大学経済学部准教授),中村さやか(名古屋大学経済学部准教授),
野田寿恵(国立精神・神経医療研究センター社会福祉研究室長),
近藤尚己(山梨大学大学院医学工学総合研究部講師),
府川哲夫(田園調布学園大学人間福祉学部客員教授)
研究協力者 東 修司(企画部長),新田秀樹(大正大学人間学部教授),
近藤克則(日本福祉大学社会福祉学部教授),
宮澤 仁(お茶の水女子大学人間文化創成科学研究科准教授),
濱秋純哉(内閣府経済社会総合研究所研究官),
石井加代子(慶應義塾大学大学院商学研究科特別研究講師),
高久玲音(日本経済研究センター研究員),西 晃弘(ハーバード大学公衆衛生大学院),
大津 唯(慶應義塾大学大学院経済学研究科大学院生)
(5) 研究成果の公表予定
研究報告書を作成し公表する予定。また,個別の成果については研究班員が所属する各学会・学術誌で
報告される予定である。