3.仮定の解説
(1) 合計特殊出生率1.26の意味
3)生み戻しによる期間合計特殊出生率の反転上昇
20歳代前半など若い年齢での出産先送りによる期間合計特殊出生率の低下は、1960年代以降、欧州を中心にほとんどの先進国で観察された。
しかし、多くの国では若い年齢で子どもを生み控えた世代が、出生適齢期の後半に入ってから子どもを生み始めることによって、合計特殊出生率が再び上昇をみた。このメカニズムを再び模式図によって示そう。
図3-3は、図3-1の状況に続いて晩産化が定着した状態を想定して示している。この時期に登場する世代では、かつての世代よりも晩産化しているが、生涯に生む子ども数には変化がないとする。すると、すべての世代が同様の晩産パターンを示すことによって、期間の年齢別出生率はコーホートの年齢別出生率と同じものとなるから、これを合計した期間合計特殊出生率はコーホート合計特殊出生率と同じ水準に戻っていることがわかる。
1980年代に期間合計特殊出生率が低下した国のうち、フランス、デンマーク、オランダなど、90年代以降上昇に転じた国々では、この間、コーホート合計特殊出生率にはほとんど変化がなく、その変動のほとんどが出産の先送りと高年齢での生み戻しという出生タイミングの変化によるメカニズムで説明できる。
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