はじめに
将来推計人口の基本的性質と見方
推計結果の解説
仮定の解説
(1)合計特殊出生率1.26の意味
(2)なぜ寿命は延び続けるのか
(3)国際人口移動の仮定とその効果
(4)将来推計人口の国際比較
1) 出生率・平均寿命の中位仮定値および人口規模の国際比較
2) 人口ピラミッドの国際比較
(5)将来推計人口の描く日本人のライフコース
参考推計(条件付推計)
将来人口推計[報告書]

3.仮定の解説

(4) 将来推計人口の国際比較

1) 出生率・平均寿命の中位仮定値および人口規模の国際比較

 将来人口推計は、国の将来像を描く上で重要な基礎資料となるため、各国ともこれに責任を持つ政府機関が行っている場合が多い。

 国によって1年〜5年ごとの間隔で新しい人口統計データによる改訂が行われることが普通で、推計期間は多くが50年程度である。

 推計方法は、現在ではほとんどの場合、コーホート要因法が用いられている。

 本節では諸外国で行われている将来人口推計に目を転じ、「日本の将来推計人口」をそれらと比較することで、国際的な観点からわが国の今後の人口推移の特徴を探ってみよう(注)。

 まず、出生率の仮定について、日本と主要先進諸国の推計で用いられている値を比較したものが図3-19である。

 ほとんどの国で3通りの仮定が設定されているが、ここではベース推計に用いられる中位仮定のみを取り上げて比較している。

 現在、先進諸国は合計特殊出生率(TFR)のレベルによって、大きく三つのグループに分けられる。

1.5未満の超低出生率の国々のグループ
1.5〜2.0未満の緩やかな低出生率の国々のグループ
少数だが2.0以上の人口置換水準に近い出生率レベルの国のグループである。

 図3-19では、2005年時点のTFRが低い順に、同年の実績値と2050年の将来仮定値を並べて示しているが、日本〜スイスの超低出生率の国々と、イギリス〜アメリカの緩やかな低出生率および2.0を超える出生率の国々では、将来の出生率の水準の見通しが大きく異なっているのがわかる。

 現在、TFRが1.5を下回る国々では、イタリアを除いて将来の出生率水準も1.5以下となっている。その中でも日本の値は最も低く、将来も回復を見込んでいない。

 一方、2005年のTFRの実績が1.7以上の国々では、どこも将来もほぼ同じ水準を維持するとしている。

図3-19 出生率の比較:2005年実績,2050年中位仮定値

 図3-20では、死亡仮定(平均寿命)について同様に仮定値の国際比較を行った。出生率と異なり、将来の平均寿命はすべての国で延びるとされており、その延び率に関しては日本より大きい国も多い。

 しかし、日本は現状で世界トップクラスの平均寿命を持ち、今後についても高年齢層を中心に死亡率の改善が続くとみられることから、2050年時点でも男女とも世界最長の平均寿命が仮定されている。

図3-20 男女別にみた平均寿命:2005年実績、2050年中位仮定値

 結局日本は、50年後の将来に対して世界で最も低い合計特殊出生率とともに、最も高い平均寿命を仮定している特異な国であるということができる。

  次に、推計結果としての総人口についてみてみよう。図3-21は、2005年の総人口を100としたとき、2050年の総人口がどのくらいの規模になるかを指数化して示したものである。

 この中では、将来、人口が減少する推計結果を提示しているのは日本、ドイツ、イタリアの3カ国のみである。中でも、日本の総人口の減少率は大きい。

 そのほかの多くの国では、2050年までにおよそ10〜30%程度増加するとみており、オーストラリアとアメリカでは、40%前後の大きな増加が見込まれている。ただし、わが国と異なり、諸外国ではこうした人口変動に対して、移民の動向が重要な役割を果たしている。

図3-21 人口規模の比較:2005年総人口=100

(注) 参考とした資料は、次の通り。
日本:国立社会保障・人口問題研究所(2007)『日本の将来推計人口:平成18年12月推計』厚生統計協会。
オーストリア:Statistic Austria (2006). Bevolkerungsvorausschatzung 2006-2050.
ドイツ:Statistisches Bundesamt (2006). 11.koordinierte Bevolkerungsvorausberechnung: Annahmen und Ergebnisse 2006-2050.
イタリア:Instituto Nazionale di Statistica (2006). “Previsioni demografiche nazionali: 1° gennaio 2005-1° gennaio 2050.” Nota Informativa 22.
スイス:Bundesamt fur Statistik (2006). Szenarien zur Bevolkerungsentwicklung der Schweiz 2005-2050.
イギリス:Government Actuary’s Department(GAD) (2006). National Population Projections 2004-based.
フランス:Institut National de la Statistique et des Etudes Economique (2006). Projections de population 2005-2050 pour la France metropolitaine methode et resultats.
スウェーデン:Statistics Sweden (2007). Population Projection for Sweden 2007-2050. (英語はサマリーのみ、スウェーデン語タイトルSveriges framtida befolkning 2007-2050)
ノルウェー:Statistics Norway (2005). Population projections, National and regional figures, 2005-2060. http://www.ssb.no/english/subjects/02/03/folkfram_en/
オーストラリア:Australian Bureau of Statistics (2006). Population Projections Australia 2004 to 2101 (Reissue).
アメリカ:U.S. Census Breau (2004). U.S. Interim Projections by Age, Sex, Race, and Hispanic Origin (with 2000 Census). http://www.census.gov/ipc/www/usinterimproj/

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