はじめに
将来推計人口の基本的性質と見方
推計結果の解説
仮定の解説
(1)合計特殊出生率1.26の意味
(2)なぜ寿命は延び続けるのか
(3)国際人口移動の仮定とその効果
1)外国人の出入国の状況
2)日本人の出入国超過の状況
3)国籍異動の動向
4)国際人口移動の仮定値が将来人口変動に及ぼす影響
(4)将来推計人口の国際比較
(5)将来推計人口の描く日本人のライフコース
参考推計(条件付推計)
将来人口推計[報告書]

3.仮定の解説

(3) 国際人口移動の仮定とその効果

2)日本人の出入国超過の状況

 日本人は1970年代以降、出国超過が続いており、近年では大きな変動を経験しつつも、おおむね数万人規模の出国超過傾向が続いている(注1)(図3-11)。1970年代からほぼ30年にわたって出国超過が生じていることで、海外に在留する日本人の増加と長期間の居住者も増加している。

 日本人の国際人口移動は、世界の社会経済情勢に強く左右される傾向があり、将来の動向を推計することは容易ではない。

 近年みられた典型的な事例としては、2001年に米国で起きた同時多発テロ、ならびに2003年に顕在化し中国を中心にアジア諸国に広がった新型肺炎(SARS)の二つの事件により、日本人の帰国ラッシュとその後の大規模な出国超過が立て続けに生じたことが挙げられる。しかしながら、1970年代以降の出入国数は全体として上述の通りマイナスとなっており、社会経済の国際化にともなって国境を越える人の流れが拡大するなか、日本人の海外在留期間が長期化していることがうかがえる。

 実際、『海外在留邦人数調査統計』(外務省領事局)(注2)によれば、1970年代以降、海外に3ヵ月以上滞在する日本人は増加を続け、2005年には100万人を突破した(表3-1)。

図3-11 日本人の入国超過数 表3-1 海外在留邦人数

 海外に在留する日本人人口を地域別(注3)にみると、アジア、北米、南米、西欧での在留が多く、その他の地域では人口規模は比較的小さい(図3-12)。

 在留国によって日本人人口の推移に異なる傾向がみられ、在留邦人の地域分布にも変化が生じている。たとえば、従来最も多くの日本人が在留していた南米のシェアが減少する一方で、アジアや大洋州のシェアが増加している。

 それぞれの地域における日本人人口の増減は、地域間の経済関係や特定国の政治情勢などに関わっており、地域ごとの独自の事情によるところが大きいと言えよう。

表3-1 海外在留邦人数

(注1)総務省統計局『人口推計年報』において『出入国管理統計』(法務省)から得られる入国者数、出国者数から10月1日〜翌年9月30日の1年間における日本人の入国超過数を集計した結果による。
(注2)世界の在外公館を通じて毎年10月1日時点で課外に在留する日本人(日本国籍を有するもの)のうち、3ヵ月以上の長期滞在者および永住者を取りまとめている。
(注3)各地域に属する国は、外務省領事局政策課『海外在留邦人数調査統計』の定義に従っている。『海外在留邦人数調査統計』では、世界各国を10の地域(アジア、大洋州、北米、中米、南米、西欧、中・東欧および旧ソ連、中東、アフリカ、南極)に分けている。よって、前節まで引用されている「出入国管理統計」中の地域区分と一部異なる。なお、『出入国管理統計』(法務省)では、地域区分としてアジア、ヨーロッパ、アフリカ、北アメリカ、南アメリカ、オセアニアが用いられている。

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