1.将来推計人口の基本的性質と見方
(2)将来推計人口の基本的性質
1)公的推計の要件
将来人口推計(population projection)とは、どのようなものであろうか (注)。上述のとおり、「日本の将来推計人口」は、わが国の将来の出生、死亡、および国際人口移動について仮定を設け、これらに基づいて将来の人口規模ならびに年齢構成等の人口構造の推移について推計を行ったものである。
そして、それは国や自治体による諸制度ならびに諸施策立案の基礎資料として用いられるのをはじめとして、広範な分野において利用されている。
そのため、それは多様な目的をもって用いられていると考えられ、推計が特別な意図や考え方に基づいて作成されたものであることは望ましくない。すなわち、公的な将来推計人口には、可能な限り恣意性を廃した客観性、中立性が求められる。
それでは、いかにしたら客観的で中立な推計が可能となるであろうか。一言でいえば、そのためには、正確な実績データを用い、科学的な手法によって推計を行わなくてはならない。
現状で求め得る最良のデータと最良の手法を組み合わせて用いることができれば、現時点における最も客観的な推計が行えることになるだろう。
そして、こうした推計を実施するためには、一方では国際的視野に根ざした高い専門技術の応用と、他方では推計結果とその根拠を利用者に正確に伝える説明責任の遂行が求められる。こうしたことを確実に行うことが、公的な推計を行う上での一つの目指すべき方向であると考えられる。
(注) 将来推計人口は推計された人口を指し、これを推計することを将来人口推計という。将来人口推計は、技術的観点からは将来の人口規模と構造の変化に関する計量的情報を提供する数値シミュレーションの一種と考えられるが、それらは大きく分けると、公的利用のための推計と、研究等の目的で恣意的な前提を与えて行う実験的推計の二種類がある。本書では前者に限定して説明することにする。
|