はじめに
将来推計人口の基本的性質と見方
推計結果の解説
仮定の解説
(1)合計特殊出生率1.26の意味
(2)なぜ寿命は延び続けるのか
1) 人口投影と平均寿命
2) 寿命の限界論と死亡率モデル
3) 年齢シフトモデルの開発
(3)国際人口移動の仮定とその効果
(4)将来推計人口の国際比較
(5)将来推計人口の描く日本人のライフコース
参考推計(条件付推計)
将来人口推計[報告書]

3.仮定の解説

(2) なぜ寿命は延び続けるのか

3) 年齢シフトモデルの開発

 今回、投影に用いられた死亡率モデルでは、国際的に標準として用いられ、平成14年1月推計にも用いられたリー・カーター・モデルを基にして、死亡率曲線の「年齢シフト」という新たな捉え方を取り込んだモデルを開発することで、死亡の遅延という現象を直接表現できるものとした。その違いをみるために、リー・カーター・モデルと今回のモデルによる投影結果とを比較をしてみよう。

 図3-6は、リー・カーター・モデルによって投影された生存数曲線と、同程度の平均寿命を持つが年齢シフトによる改良を加えたモデルによって投影された生存数曲線を比較したものである。

 前者には、同じ程度の平均寿命でも、死亡率の改善が生存数曲線の「矩形化」として強く現れている様子がわかる。

 一方、年齢シフトモデルでは死亡率の改善が生存数曲線の右方向シフトの動きで表現されており、近年の実際の死亡率改善パターンをよく再現するモデルとなっている。

 世界トップクラスの平均寿命を誇るわが国の場合、他国や国際機関において採用されている技術に加えて、こうした新しい傾向を正確に捉える技術を開発して行かなくてはならない。

 平成18年12月推計においては、新たに得られた実績データと、大きな改良を加えた新しいモデルに基づいて寿命を投影した結果、わが国の寿命は今後もいっそう伸長していくとの推計結果が導き出された。

 したがって、日本ではすでに寿命伸長の限界に達しているのではないかという見方は、実績データに基づく立場からは棄却される。

 ただし、こうした死亡率改善の新たな展開によって、将来のある年次に平均寿命がどこまで延びているのかということの定量的な不確実性は増したと考えられるので、今回、死亡率についても中位仮定の他に、新たに高位仮定、低位仮定を設け、一定の幅によって推計するものとした。

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