1.将来推計人口の基本的性質と見方
(3)将来推計人口の見方
2)推計の不確実性と複数仮定による推計の見方 a) 推計の不確実性:出生仮定と死亡仮定
将来推計人口には不確実性が付随するが、その原因は多様である。
大きく分けると、基にした実績データや統計的手法に由来する不確実性と、 推計された人口推移の実現性に関する不確実性の2種類がある。
まず、前者についてみよう。「日本の将来推計人口」の仮定値は、実績データの趨勢を投影して得たものであるが、趨勢の捉え方などによって投影結果は必ずしも一意には定まらず、一定の幅として捉えられる。これが出生3仮定、死亡3仮定が生ずる理由である。
出生仮定については、女性の世代ごとに結婚、出生行動に関する4つの指標(平均初婚年齢、生涯未婚率、夫婦完結出生児数、および離死別再婚効果係数)の趨勢が測定され、将来に向けて投影されるが、それぞれについて幅が設けられ最も高い出生率を帰結する値の組み合わせによって高位仮定が定められ、逆に低い出生率を帰結する組み合わせによって低位仮定が決められている(表1-1)。
一方、死亡仮定は、従来は安定的と考えられ、これまでは1種類の仮定のみが設定されていた。しかし、近年の死亡率推移に関する分析から、平成18年12月推計では死亡仮定についても不確実性を表現することとし、死亡水準を表す時系列指標(注)の実績推移に内在する統計的誤差の分布に従い、信頼区間(99%)を算出し、その高死亡率側の境界を高位仮定、低死亡率側の境界を低位仮定としたものである。
上記、出生3仮定、死亡3仮定の組み合わせにより、平成18年12月推計では、9つの推計結果が提供されている。これらを用いることによって、ある程度の推計結果の不確定性に対処することができる。
すなわち、中心的な推計となる出生中位・死亡中位推計を基準としながらも、仮定に用いた変数の現状の趨勢から投影される限界幅を見込むことで、目的に応じた一定の安全幅を設けることができる。
(注)リー・カーター・モデルにおけるパラメータ(一般にktと表されるもの)のこと。
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