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国立社会保障・人口問題研究所

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研究所の紹介

主な研究プロジェクト
1. 全ての人の社会参加を可能とするための研究
「一億総活躍社会」実現に向けた総合的研究(平成29年度~)[一般会計プロジェクト]

 「一億総活躍社会」実現に向けたキーコンセプトとして、「包摂と多様性による持続的成長と分配の好循環」のサイクルを回転させていくことが掲げられており、 そこでは子育てや介護をしている者をはじめとして、社会参加に困難が生じている者への支援を充実させることが重要視されています。

 本研究プロジェクトでは、社会への参加が阻害されている状態のみならず、経済的困窮、日常の家事の過負荷、家庭内ケア関係の不整合が存在する場合を含めて、 これらを個人の自助努力を超えて生活に対する支援を必要とする状態ととらえ、1)若者世代の包摂、2)子ども・子育て支援、3)障害者の包摂、について実証的な観点からの研究を実施し、 生活支援ニーズの現状と要因の実態把握を行った上で、関連諸施策等のあり方について検討を行っています。

若者世代の包摂の実証研究
 就職氷河期世代のうち、36-45 歳(2017年時点。以下同じ)と、20-35 歳、46-60 歳の層のグループ・インタビューで支援ニーズを比較分析するとともに、 同じ世代の生活困窮者自立支援窓口の相談者から相談実態を把握し、生活安定化に向けた支援の課題を検討しています。 下の表から氷河期世代でも暮らす地域により生活支援ニーズが違うことがわかります。
■ 就職氷河期世代(非正規雇用・未婚)グループでの生活支援ニーズの優先順位(グループインタビュー参加者の発言の整理)
就職氷河期世代(非正規雇用・未婚)グループでの生活支援ニーズの優先順位(グループインタビュー参加者の発言の整理)
資料) 国立社会保障・人口問題研究所『「一億総活躍社会」実現に向けた総合的研究: 就職氷河期世代の支援ニーズに関するグループ・インタビュー調査報告書』, 2019 年, p59.

子ども・子育て支援の実証研究
 虐待の発生前後の児童、保護者、家庭等の状況が詳細に記録されている虐待相談記録を量的、質的に分析し、養育困難に至る背景や、 支援提供上の課題を検討しています。下の表から調査対象となった児童相談所A ~ F、H、I では相談記録に記載している項目にバラツキがあることがわかります。
■ 児童虐待相談記録における基礎的情報の比較(○は文書に記載があることを示す)
児童虐待相談記録における基礎的情報の比較(○は文書に記載があることを示す)
資料) 遠藤久夫・野田正人・藤間公太監修, 国立社会保障・人口問題研究所編「児童相談所の役割と課題」東京大学出版会, 2020 年, p188.
2. 日本の超長寿化に関する人口学的・学際的研究
超長寿社会における人口・経済・社会のモデリングと総合分析(令和2年度~)[一般会計プロジェクト]

 国立社会保障・人口問題研究所ではこれまで、日本の長寿化を対象に人口学的・学際的分析を進めてきました。 また、平均寿命の延伸に伴って、健康寿命の延伸等、世界有数の長寿国である日本の長寿化の進展と健康期間の関係等に係る研究等を進めるなど、 超長寿社会における人口・経済・社会の総合的なデータ分析とモデリングに関する研究を行うことによって、来たるべき超高齢化社会への処方箋を探るとともに、その研究成果を国内及び海外に発信しています。

 なお、当プロジェクトにて作成・更新している日本版死亡データベース(JMD)については本パンフレット内で別に掲載しておりますので、そちらもご参照ください。

■ 長期時系列死因統計の整備(例:心疾患)
一般に死因分類ICD(※)は改訂されると全く別の体系と疾患による死亡者数の推移をみてみると、 1993 ~ 95年にかけて特に心疾患による死亡数に不連続があります。これは、「死の直前の状態としての心不全等のみを捉えて『心不全』等と記載しないでほしい」旨のWHO勧告の影響、及びICD の改訂(ICD-10 の導入)の影響とみられます。 そこで旧分類による統計をICD-10 による分類へ組み替える試みが国際死因データベース(HCD:Human Cause-of-Death Database)によって行われており、本プロジェクトも協力しています。組み替えられたデータのうち1981 ~ 2011 年について、死因簡単分類別にまとめ、当プロジェクトのHP 上で公開しています。
(※)ICD とは「疾病及び関連保健問題の国際統計分類」のことです。 WHO が定めており、日本を含めた諸外国の死因統計は基本的にこの分類に従って行われています。
■ 生命表分析から得られた主観的健康度別人口の変化


現代の日本社会では、単に死亡率の低下によって長寿化を実現するだけでなく健康的に生活することが国民の重大な関心事となってきており、 政府も健康寿命の延伸を政策目標に掲げています。年齢別にみた女性の主観的健康度は「ふつう」が最も多く、「比較的わるい」はあまり多くありません。 これは、健康度が悪化してくると施設や病院へ入ったり、死亡してしまうためと考えられます。2013 年と2022 年を比較すると、ほぼ全年齢で健康状態が「比較的よい」とする期間が伸長している一方で「比較的わるい」はほぼ全年齢で短縮しており、 この間に国民の健康度は改善されてきているといえます。
■ 複合死因による新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の分析

原死因がCOVID-19 について、死因欄別記載された死因:2020 年

20 件以上の記載があった33 の死因について、COVID-19 のⅠ欄アは2247 件.


2019 年末から突如として新たな感染症、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が出現し、社会は大きく混乱しました。 その中で、糖尿病などの基礎疾患とCOVID-19 の関連についての指摘もありました。こうした指摘が死因の委細にどう現れているかについて、原死因以外の死因も用いた複合死因の視点から分析を行っています。 例えばCOVID-19 はⅠ欄ア(直接死因)への記載が多いこと、Ⅱ欄に記載される関連する死因には糖尿病、心不全、慢性腎臓病といった基礎疾患が多くなっていることなどが示されています。
3. 死亡研究に特化した、日本初のデータベース
日本版死亡データベース(JMD)

 本データベースは当研究所「超長寿社会における人口・経済・社会のモデリングと総合分析」(令和2年度~) 及び関連する先行プロジェクトの一環として作成されています。

 当研究所では、世界的にも広く使われている人類死亡データベース(HMD:Human Motality Database)と整合性を持ち、 かつ日本の生命表を総合的に再編成した「日本版死亡データベース(JMD:Japanese Mortality Database)」を日本初の試みとして開発し、和文・英文のホームページ上で公開しています。 生命表はこれまでも厚生労働省から公表されていますが、JMD では計算方法などが更新された場合、過去のデータについても再計算し改訂を行っています。

 本データベースでは手法以外の改善にも取り組んでいます。例えば、2022 年度公表分からは死因分類別の年齢調整死亡率を追加するとともに、2023 年度公表分からは都道府県別の生命表について、 従来の5 年・5 歳階級に加えて各年・各歳の生命表も作成し、公表しています。

 こうした特徴から、当研究所において実施している将来人口推計(全国及び地域別)において、JMD は死亡仮定を設定する際の基礎データとして用いられています。

■ 全国及び都道府県別平均寿命(女性)
全国及び都道府県別平均寿命(女性)
■ 死因別標準化死亡率の推移(全国:男女計、人口10万対)
死因別標準化死亡率の推移(全国:男女計、人口10万対)


A) Changes in ADL
この死亡データベースは、当研究所が行っている「超長寿社会における人口・経済・社会のモデリングと統合分析」の一環として開発・更新されています。 この研究プロジェクトの概要は、前のページをご覧ください。

A) Changes in ADL
4. 世代間のお金の流れを様々なデータで「見える化」する研究
国民移転勘定(NTA)プロジェクト(令和3年度~)[一般会計プロジェクト]

 少子高齢化・人口減少に直面し、社会保障負担が増大している日本においては、現役世代の所得を子ども世代と高齢世 代にどのように配分していくのかは、 次世代の育成、現役世代のWell-being、そして高齢世代の生活保障に関わる最重要課題であるといえます。

 「国民移転勘定(National Transfer Accounts, NTA)」は、高齢化が社会保障や世帯における所得移転に与える影響を解明するため、近年、国連による支援の下に開発された加工統計です。

 NTA では、年金・医療・介護といった公的領域における所得移転、及び家族・親族間の私的領域における金銭的な所得移転について、 その支払いと受け取りの金額を性、年齢別に明らかにすることができます。NTA データを継続的に公表していくことにより、公的・私的な領域における世代間移転の大きさやその変化を正しく把握することが可能となり、 少子高齢化あるいはそれに伴う各種の政策変更が、個別の社会保障制度の持続可能性や世代間の公平性に与える影響を客観的に評価・分析することに利用していくことができます。 当研究所における「国民移転勘定(NTA)プロジェクト」は、外部委員の先生方、国連・外国政府のNTA 担当職員、諸外国のNTA 研究者らとの密接な連携・協力の下で進めています。 令和6(2024)年3月には、平成26(2014)/令和元(2019)年度のNTA データを公表しており(公表HP:https://www.ipss.go.jp/projects/NTA/index.html)、今後も継続的なアップデート・公表を行っていきます。

■ 令和元(2019)年度の NTA 結果概要
令和元(2019)年度の NTA 結果概要
出典)『 令和 5(2023)年度 研究報告書:平成 26(2014)/令和元(2019)年度の国民移転勘定(NTA)の結果』, p15.

※上図について、「ライフサイクル不足」とは、各年齢層において「消費から労働収入を引いた値」であり、これが正の値である場合を「不足」、 負の値である場合を「余剰」と定義する。公的及び私的な世代間移転や資産再配分を通じて、年少層と老年層ではそれぞれ58.7 兆円、114.4 兆円の純受取りが生じており、 生産年齢層では94 兆円の純支払いが生じていることを表している。
5. 日本の外国人労働者政策の特徴を国際的な視点から明らかにする研究
国際的な視点から見たわが国の労働移民政策の位置づけに関する総合的研究 [一般会計プロジェクト]

 日本で働く外国人労働者は2023 年には200 万人を超えるなど、その勢いは近年、むしろ加速しています。こうした中、1990 年代以降、大きく増えた日系ブラジル人、 1993 年に始まった技能実習制度や2019 年に開始された特定技能制度、留学生の日本での就職率の上昇など、外国人が日本で働くためのルートは多様化しています。

 その一方で、日本は「移民政策をとっていない」といわれるなど、日本の外国人受け入れは例外的な形で進んできたとされてきました。 こうした状況について、移民政策に関して高い専門性を有する国際機関である経済協力開発機構(OECD)と当研究所が連携して政策レビュー事業を行いました。

 その結果、以下のような結果及び提言が得られました。

主な分析結果(抄)

1. 日本の外国人労働者政策は、労働市場の変化に対応するために検討された政策オプションのひとつであり、一部のミドルスキル外国人(特定技能)に定住の道が開かれた。

2. 日本に来ることを選択したハイスキル外国人(在留資格「技術・人文知識・国際業務」)は、日本に留まる傾向がある。

3. 日本は国際的に見ても留学生の定着率が高い。

OECD からの主な提言(抄)

1. 技能実習制度が見直されている中*、改革案においても、現在の制度の下で労働者に提供されている支援を維持すべきである。
* 技能実習制度に代わる育成就労制度に関する法律が令和6 年6 月14 日に国会で成立した。

2. 特定技能制度は技能実習制度と同様、他のOECD 加盟国の労働移住プログラムよりも厳重に管理されている。 特定技能制度はパンデミックによって遅れたが、その後軌道に乗った。 特定技能制度は将来の労働需要を効果的に満たす可能性を秘めているが、外国人が必要な技能を習得できるようにするためには、別のプログラムに頼る必要がある。

3. 特定技能制度が規模を拡大するためには、日本は、準備の整った労働者を出身国から直接採用する能力も拡大しなければならない。 日本の利害関係者(業界団体、雇用主、公的機関)は、「スキルズ・モビリティ・パートナーシップ(skills mobility partnerships)」という新たなモデルに倣うことができる。 これは、特定技能制度及び育成就労制度の双方に参加するための語学力と職業技能を候補者に提供する能力を強化するために、出身国のパートナー訓練機関に投資することを意味する。 また、研修は、より多くの候補者にとって魅力的であり、出身国の技能基盤に貢献するよう、出身国の就業機会に関連したものでなければならない。

Overview of FY2019 NTA Results
報告書「Recruiting Immigrant Worker Japan: 2024」 (令和6年6 月30 日公表)
https://doi.org/10.1787/0e5a10e3-en
Overview of FY2019 NTA Results