はじめに
将来推計人口の基本的性質と見方
推計結果の解説
(1)人口減少のメカニズム―人口減少の世紀
(2)人口ピラミッドの変遷―人口高齢化を視る
(3)将来推計人口における仮定値改定の効果−推計結果の比較分析
(4)将来推計人口の不確実性と確率推計の試み
1) 確率推計の方法
2) 確率推計による総人口・年齢別人口割合の推計
a) 確率推計による総人口の推計結果
b) 年齢別人口割合の推計結果
仮定の解説
参考推計(条件付推計)
将来人口推計[報告書]

2.推計結果の解説

(4)将来推計人口の不確実性と確率推計の試み

2) 確率推計による総人口・年齢別人口割合の推計
  b) 年齢別人口割合の推計結果

年齢別人口割合についてみると、それぞれで様相が異なっている。

 まず、年少人口割合についてみると(図2-12)、2055年におけるその50%信頼区間は1.1ポイント(7.7〜8.8%)、95%信頼区間は4.6ポイント(6.6〜11.2%)となっている。

 平成18年12月推計において、同年の年少人口割合が最も高くなる出生高位・死亡高位では、11.0%であり、95%信頼区間の中にある。

 しかし、最も低くなる出生低位・死亡低位では、6.4%となっており、95%信頼区間の下限と同等かわずかに下回る値となっている。ただし、その幅4.6ポイントは95%信頼区間と同じであり、ほぼ同等の範囲がカバーされているといえる。

  生産年齢人口割合では(図2-13)、2055年50%信頼区間は2.1ポイント(49.9〜52.0%)、95%信頼区間は7.2ポイント(47.1〜54.3%)であり、前者はかなり狭い幅に収まる形に なっている。

 一方、平成18年12月推計において、同年の生産年齢人口割合が最も高くなる出生高位・死亡高位では、52.7%、最も低くなる出生低位・死亡低位では、49.2%であるから、その幅3.5ポイントは、50%信頼区間をやや上回る程度となっている(注)。

 人口高齢化の程度を表す老年人口割合についてみると(図2-14)、2055年の50%信頼区間は2.7ポイント(39.3〜42.1%)、95%信頼区間は9.4ポイント(36.2〜45.5%)である。

 平成18年12月推計において、同年の老年人口割合が最も高くなる出生低位・死亡低位では、44.4%であり、最も低くなる出生高位・死亡高位では、36.3%であるから、この幅8.1ポイントは、50%信頼区間よりは広く、95%信頼区間に近くなっている。

図2-12 年少人口割合の推計結果の信頼区間
図2-13 生産年齢人口割合の推計結果の信頼区間
図2-14 老年人口割合の推計結果の信頼区間

 すでに第1節で述べたように、将来の人口は今後の社会経済の展開を反映して変動して行くものであるから、どのような推計手法を採用しても不確実性を拭い去ることは本質的に不可能である。

 「日本の将来推計人口」では、これまで各種指標の実績値変動の調査や有力とされる理論やモデルなどをもとに、一定の幅を持った推計を提供することでこの不確実性を表現してきた。

 利用者にはこのことを踏まえて、複数の推計結果を用いることによって、その利用の過程に不確実性に対する対処を含めることが望まれる。

 しかしその際に、もし推計された将来人口の確率的特性が同時にもたらされ、たとえば統計的な信頼区間等が提示されたならば、推計の活用の幅は大いに広がるであろう。

 こうした視点から、現在、将来推計人口を確率的に表現する手法が世界の研究者によって盛んに研究されつつある。今回紹介したエキスパート・オピニオン法もそうした手法の一つである。これを日本の将来推計人口に適用することで、確率推計の応用の可能性を垣間見ることができたし、また、たとえば既存の推計の幅が、現在の有識者の総意の分布からみて妥当なものかどうかといった検討も行うことができた。

 しかしながら、注意しなくてはならないのは、将来人口はその確率的特性も含めて、現在のわれわれには知り得るものでなく、推計に際して提示された確率は、決して天気予報のように実現する確率を表現したものではないということである。

 ここでは将来人口の確率的特性に代替するものとして有識者調査の結果を用いたが、他のいかなる方法であっても代替であることは同じである。

 したがって、確率推計においも、何を前提として設定された確率なのかを十分理解した上で利用しなくてはならない。そうした条件が満たされれば、確率推計は結果の活用の幅を大きく広げる可能性を持っており、様々な議論を行う上でも有用なものとなるに違いない。

(注) ただし死亡中位仮定に限定した出生高位、低位仮定による結果の差は1.8ポイント(50.1〜51.9%)であり、50%信頼区間を下回っている。

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