2.推計結果の解説
(4)将来推計人口の不確実性と確率推計の試み
1) 確率推計の方法
a) 平均余命と合計特殊出生率の仮定値
ここで適用した確率推計手法は、次のようなものである。すなわち、それは出生仮定、および死亡仮定(生残率仮定)について確率的に仮定設定を行い、これに基づいて多数回の推計シミュレーションを行うことによって、将来人口についての信頼区間等の確率的特性を調べようというものである。以下では、これらの個々の過程について、具体的に説明していこう。
まず、推計期間である2005〜2055年について、男女別の平均寿命と合計特殊出生率(TFR)を乱数を用いて一定の確率分布に従うように生成する。このときに用いる平均寿命とTFRの確率分布に何を用いるかによって確率推計の種類が決まる。
大きく分けると、有識者等の意見によるもの、指標の実績値の変動を用いるもの、過去の推計の誤差を用いるものなどがある。
ここでは厚生労働省の研究班によって実施された有識者調査から得られた回答の分布を用いることにする。すなわち、出生中位仮定、死亡中位仮定の仮定値を中心に有識者調査における予測値の分布を用いて変動させたものを新しい仮定値とした。
一般に調査の回答は主観的なものであるが、逆に客観的な統計分析では捉えられない変動や測定のできない事柄も含めた総合的な判断が得られるとされている。主観的指標であることにともなう限界もあるが、それは現状において人口推移に関して見識を有する専門家の集団の総意を反映した想定と考えることができるだろう。
この有識者の予測値分布を適用した2050 年平均寿命の予測値分布を図2-7に、また合計特殊出生率の予測値分布を図2-8に示した(いずれも平滑化等の調整処理を施している)。
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