はじめに
将来推計人口の基本的性質と見方
推計結果の解説
(1)人口減少のメカニズム―人口減少の世紀
(2)人口ピラミッドの変遷―人口高齢化を視る
(3)将来推計人口における仮定値改定の効果−推計結果の比較分析
1) H14年推計とH18年推計の仮定値の比較
2) 仮定値の推計人口に対する影響について
(4)将来推計人口の不確実性と確率推計の試み
仮定の解説
参考推計(条件付推計)
将来人口推計[報告書]

2.推計結果の解説

(3)将来推計人口における仮定値改定の効果
  −推計結果の比較分析

2) 仮定値の推計人口に対する影響について

 各要因の仮定値の相違が将来の人口に及ぼす影響については、以下のように計測した。

 まず、H14年推計の全て仮定について、本来の2000年ではなく、2005年を基点とした将来推計を行い、元の推計人口との差を求める。すると、この差は、2000〜05年の仮定値と実績値の違いによって生じた基準人口の違いに起因するものである(注1) 。

 そしてつぎに、この推計の2005年以降に対して、出生率のみをH18年推計の仮定にした推計を行って比較を行えば、その差はH14年推計とH18年推計の出生率仮定の違いのみよって生じたものと考えられる。

 さらに、死亡ならびに国際人口移動についても同様の比較を行えば、それぞれの仮定の違いのみの効果を計測できることになる。

 ただし、これは二つの推計がまったく同じ方法を用いていることを前提にした話である。実際には、いくつかの変更が行われているために、二つの推計結果の差の要因として、これら推計システムの違いによる効果が加わる(注2) 。ただし、以下に示すように、この効果はわずかに過ぎない。

 それではいよいよH14年推計とH18年推計の人口の違いについてみていこう。

 まず2050年時点の人口をみるとH14年推計による結果は、1億0,059.3万人であったのに対し、H18年推計では、9,515.2万人であり、544.2万人(5.4%)少ない結果となっている。

 すなわち、同じ中位仮定による推計でも新推計の方が人口が少なく見積もられており、その差は2050年で5%程度となっている。

 この差を生じた要因の内訳をみると、基準人口の違いによる差分は、-81.0万人(全差分における割合は、-14.9%)、各仮定値の違いによる差分が、-474.3万人(同、-87.2%)、さらに人口推計システムの変更による差分が 11.2万人(同、2.0%、ただし人口増の方向)に分解される(表2-2)。

 すなわち、2050年時点の二つの推計人口の差(5.4%)に対しては、仮定設定を見直した効果が大部分を占めている。

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 さらに、どの仮定設定の違いが推計人口の差に影響しているかをみると、出生仮定による寄与が -105.8%、死亡仮定が 46.4%、国際人口移動の仮定が -27.7%となっており、出生仮定の見直しの効果が、ほぼ推計人口の減少分に相当するだけ寄与していることがわかる。

 逆に死亡仮定の改定は、推計人口を増やす方向に働いた。これは寿命の改定によって、より高い年齢まで生存する人口が多く見積もられたためである。

 つぎに、人口の年齢構造の違いについてみていこう。まず、2050年の年少(0〜14歳)人口は、1,084.2万人から848.0万人に改定され、総人口中の年少人口割合は、10.8%から8.6%になった。

 この変化に対しては、実数も割合もともに出生仮定の見直し効果が大きく、寄与率はそれぞれ85.3%、80.5%となっている。年少人口割合の減少については、これに加えて、死亡仮定見直しの効果も存在する(12.5%)。これは死亡率改善によって年長者の人口が増えるため、子どもの人口割合が相対的に低下することを示している。

 生産年齢(15〜64歳)人口は、5,388.9万人から4,929.7万人へ改定され、人口割合も53.6%から51.8%へと低下したが、まず人口実数の差についてみると、出生仮定改定の効果が76.6%であり、さらに国際人口移動仮定の見直し効果が21.7%存在する。

 しかし、総人口中の生産年齢人口割合の1.8ポイントの違いについては、死亡仮定改定の効果が思いの外大きく、69.6%の寄与を示している。出生仮定はこれに次いで、25.8%、人口移動仮定は、10.7%の寄与となっている。

 続いて老年(65歳以上)人口については、3,586.3万人から 3,764.1万人へと177.8万人増の差が生じた。また老年人口割合も、35.7%から39.6%へと3.9ポイント上昇した。まず実数の増加に寄与した要因をみると、死亡仮定の効果がほとんどであり、その他、国際人口移動仮定の改定がわずかに人口を減らす方向に働いた。なお、65歳以上の人口に対しては、出生仮定はまったく関与していない(出生仮定に基づいて生じた世代が、2050年においてはまだ65歳に達していないため)。

 しかし、老年人口割合の違い(3.9ポイント)については状況が異なり、出生仮定を見直した効果が最も大きく、55.8%の寄与を示しており、死亡仮定の違いはこれに次いで38.3%の寄与となっている。一般に、人口高齢化は寿命伸長によってもたらされているとの理解が強いが、この結果は今後の出生率の見通しの違いによって高齢化の水準がかなりの程度異なることを示している。

(注1) 実は、H14年推計における2000〜05年仮定値と実績値との差は,必ずしも2005年実績人口(国勢調査人口)に100%反映されるわけではない。それは2000年と2005年の国勢調査間にはわずかながら実態調査として不可避な精度の差が存在するからである。したがって,ここでの差は「基準人口の違いに起因するもの」とした方がより適切であろう。

  (注2) H14年推計からのH18年推計の推計システムの主な変更点は、次の3点である。(1)年齢の上限(オープンエンド)を従来の「100歳以上」から「120歳以上」とした。(2)出生率を日本人と外国人に対して別々に与えるものとした。(3)国籍別(日本人・外国人の別)人口構造変化の動態率(H18年推計の場合、出生率と国際人口移動率)への効果を精密に表現するために、システムの内部計算において日本人と外国人を別々に算出し、それらを合わせることで総人口を求めるようにした。

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