2.推計結果の解説
(3)将来推計人口における仮定値改定の効果
−推計結果の比較分析
1) H14年推計とH18年推計の仮定値の比較
まず、合計特殊出生率(以下出生率)の中位仮定値についてH14年推計とH18年推計の相違点についてみると(図2-4)
H14年推計では、その基準年(2000年)の出生率1.36に対し、その後低下して、2007年に1.31まで下がるが、後に上昇に転じ、2010年に1.32、2050年には1.39に達するとされた。しかし2005年までの実績値はこの仮定値を下回り、その差は2005年で0.05となった。ただし、2006年は実績が1.32と急騰したため、仮定よりも上回った。
これに対し、H18年推計における仮定値は、上記5年間の実績を踏襲し、その後の水準もより低く推移すると仮定された。H14年推計と比較すると、2010年で0.10、2025年には0.15、そして2050年では0.13
低く設定された。これはこの5年間において新しい世代の出生力に低下がみられたため、これに沿って各種の指標が見直されたためである(詳しくは後述)。
つぎに死亡率の中位仮定について平均寿命によって比較しよう(図2-5)。平均寿命は男女とも近年一貫して改善を示しており、1990年には男性75.9年、女性81.9年、2000年には男性77.7年、女性84.6年となっていた。しかし、90年代後半には(とくに男性で)伸長傾向に鈍化の兆候がみられたため、H14年推計ではこれらを反映して、2050年に男性80.95年、女性89.22年と仮定された。ところがその後実績値は順調な伸長ペースを取り戻し、仮定値を上回る水準で推移してきた。
そこでH18年推計においては、実績を踏襲し、平均寿命の伸長は順調に進むものとし、2050年では男性83.37年、女性90.07年となるとされた。
この背景には、死亡率改善・寿命伸長に関する基礎理論の見直しが関係している(後述)。
なお、この改定にともなって、平均寿命の男女差は、H14年推計の拡大基調から、ほぼ並行した推移に見直されている。
国際人口移動の仮定値は、日本人では年齢別入国超過率を、外国人では入国超過数を、それぞれ別々に設定している。
日本人の国際移動は出入国を差し引きするとその数はきわめて小さく、人口変動に対する効果も小さい。そこで、ここでは外国人の入国超過数についてのみ比較を行う(図2-6)。
国際人口移動の動向は、1980年代以降概ね増加傾向を示していたが、1990年代では短期的な変動がみられるようになった。
H14年推計においては、90年代後半における増加傾向に着目し、長期的にはさらに増加するものとし、2025年には9万人を上回るものと仮定した。しかしその後の実績推移をみると2000年をピークとして2005年まで減少傾向がみられる。
ただしこの5年間には、同時多発テロ事件(2001年)や新型肺炎(SARS、2003年顕在化)など一時的な事象の影響があり、また2003年末以降中国からの就学目的ビザの厳格化(注)等、法令変更に伴う入国減などがあり、短期的な変動要素が多く含まれる。
そこでH18年推計でも、長期的な増加の傾向は今後も続くが、最終的に前回推計より年間約2万人程度少ない移動数になるものと仮定された。
(注) 中国人が留学・修学する条件として,過去3年分の(概ね300万円以上の)預金残高証明書の提出など入国審査を厳しくした。
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