2.推計結果の解説
(1)人口減少のメカニズム
3)減少モメンタムの時代
表2-1には、1955年以降の人口と置換水準を設定したときの静止人口、そして人口モメンタムの推移を示した。人口モメンタムはこの期間を通して低下を続けており、1990年代後半には1を下回り急速に低下を示している。
これは、長期にわたって低出生率が続いた結果、若い世代ほど人口規模が縮小しており、一人ひとりの出生数が回復しても、全体としての出生数が増えない状態にあることを示している。
このように現在のわが国の人口は、その年齢構造の中に従来とは逆の減少方向への惰性を根付かせてしまっているのである。これをここでは減少モメンタムと呼ぼう。
注)各時期の日本の人口が持つ人口モメンタムを、静止人口比(人口置換水準の出生率によって到達する静止人口規模の総人口に対する比、単に人口モメンタムとも呼ぶ)で表したもの。1996年以降は負の値となっている。
こうした減少モメンタムを持つ人口は、たとえ出生率が置換水準まで回復したとしても、その規模は最終的に縮小することが運命付けられている。
すでにみたように、わが国の人口は、1990年代後半からすでに減少モメンタムの時代に入っており、出生率に一定の回復があったとしても、人口減少は免れることができない状況にある。これが本節冒頭に、21世紀の大半を通して人口減が続くことは、非常に確度の高いことであると述べた理由である。
事実、極端な例として2005年以降、出生率が人口置換水準に復帰して、以降その水準を保ったとしても、2070年代頃までは人口減少が続き(図2)、当初人口の約87%に縮小してようやく安定化することがわかる(表2-1)。したがって、わが国では人口の長期的な減少を決定的な事態と捉えなければならない。
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