2.推計結果の解説
(1)人口減少のメカニズム
1)人口置換水準
人口の増減は、出生、死亡、ならびに人口移動(移入、移出)の多寡によって決定される。ここでは移出入がないとすると )、長期的な人口の増減は、出生と死亡の水準で決まることになる。そして、ある死亡の水準の下で、人口が長期的に増えも減りもせずに一定となる出生の水準を「人口置換水準」と呼んでいる。たとえば、現在のわが国における死亡の水準
)を前提とした場合、合計特殊出生率の人口置換水準は、概ね2.07となっている。
図2-1は、わが国の出生数、合計特殊出生率、ならびに合計特殊出生率の人口置換水準の過去の推移を示したものである。これからわかるようにわが国の出生率は1974年以降、30年以上もの間、人口置換水準を下回りながら低下を続けてきており、まさにその帰結として日本人口は減少を迎えようとしているのである。
しかし、出生率が人口置換水準を下回ったことによって人口減少が生ずるのであれば、この図からは別の疑問が生ずるはずである。すなわち、わが国の出生率は過去30年以上にもわたって人口置換水準を下回っていたのであれば、なぜもっと早くに人口減少が生じなかったのであろうか?実は、このメカニズムが今後の人口減少についての理解を深める鍵となる。そのメカニズムの正体は、人口構造の持つ人口モメンタムという特性である。
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