2.夫婦に関する規範意識

(1)夫婦間の役割分業意識

  • 30歳代、40歳代で低い役割分業意識への支持
     「結婚後は、夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」という役割分業規範に対する賛否を妻の年齢別にみると、第1回調査では、若年層ほど「反対」(「まったく反対」+「どちらかといえば反対」、以下同様)が多く、40歳代で拮抗し、50歳代をこえると「賛成」(「まったく賛成」+「どちらかといえば賛成」、以下同様)が多数を占めた。今回調査で唯一賛成が増加したのが20歳代で、30歳代,40歳代と賛成の度合いが低くなり、40歳代を底に反転している。今回20歳代で半数近くの妻がこの役割分業規範を支持していることは注目される。ただし、全体では過半数を超える賛成を示しているが、そのほとんどが「どちらかといえば賛成」であって、消極的な支持の傾向がみられた。その傾向は今回も変わりがない。
表25 妻の年齢別「結婚後は、夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」への賛否
妻の年齢別「結婚後は、夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」への賛否


  • フルタイムで働く妻は役割分業規範に7割近くが反対、専業主婦の賛成は変わらず
     妻が何らかの形で就業している場合は、役割分業規範に「反対」の傾向がみられた。その度合いは、常勤、パート、自営業・家族従業の順に強い。これに対し、妻が専業主婦の場合は6割以上が「賛成」であった。今回もこの傾向は維持されているが、専業主婦の支持は2.5ポイントほど低下している。
表26 妻の就業形態別「結婚後は、夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」への賛否
妻の就業形態別「結婚後は、夫は外で働き、妻は主婦業に専念すべきだ」への賛否


  • 専業主婦も家事や育児は夫婦平等を望む
     しかしながら、夫婦間の役割分業規範を「夫も家事や育児を平等に分担すべきである」という別の表現で尋ねると、かなり異なる反応があらわれている。年齢別にみると、20歳代で肯定的態度が最も高いものの、予想外に世代間の差異は小さい。いずれの世代でも、家庭役割としての家事や育児を平等に分担してほしい、と考えており、この傾向は、前回に比べ強まっている。妻の就業状態別に賛否をみると、常雇で働く場合が、最も強い支持を示し、8割近くが「賛成」している。一方で専業主婦の妻の場合でも、前回同様7割が「賛成」している。専業主婦の場合、夫に対しては、「稼ぎ手役割+家庭役割」の両方を期待し、妻自身は、少しでも「家庭役割」からの回避を期待していることがうかがえる。このことは、「専業主婦=家事や育児の専従者」とか「主婦の仕事=家事や育児」という図式では、現実の専業主婦像が捉え切れないことを示唆している。
表27 妻の年齢、就業形態別「夫も家事や育児を平等に負担すべきだ」への賛否
妻の年齢、就業形態別「夫も家事や育児を平等に負担すべきだ」への賛否


(2)夫婦の社会的認知

  • 20歳代では、子どもを持つこと=社会的認知に反対が8割近い
     「夫婦は子どもを持ってはじめて社会的に認められる」という規範に対しては、否定的態度が多数で、若い妻層ほど「反対」が多いものの、50歳代で拮抗し、60歳代以上では「賛成」が多数を占めるようになることは前回同様である。この設問は、今回の設問のなかで、世代間で差が最も大きい設問で、20代と60代では35ポイント近い開きがあり、若い世代に、子供を持つこと=社会的認知に強い抵抗感がみられる。
表28 妻の年齢別「夫婦は子供をもってはじめて社会に認められる」への賛否
妻の年齢別「夫婦は子供をもってはじめて社会に認められる」への賛否


  • 「夫婦=子どもを持つ」は子育て期が終わった妻で増加する
     社会的認知における「夫婦=子ども」は、現在子どもがいて、しかも親としての愛情がもっとも強く注がれる乳幼児期の子どものいる妻に多いのではないか、という予想もありうるだろう。だが、実際には、より小さい子どもをもつ妻の方でむしろ「反対」が多く、子育て期がひととおり終わった段階になってから「賛成」が増える傾向が、今回も維持され、上記でみた妻の年齢の方がこの規範に対する賛否をより強く規定しているものと考えられる。今回は、子どもの年齢が小さくなるほど賛成の支持が順に低くなっている。また、子どものない妻が最も否定的態度の割合が高いことも、5年前と同じ傾向である。
表29 末子年齢別「夫婦は子供をもってはじめて社会に認められる」への賛否
末子年齢別「夫婦は子供をもってはじめて社会に認められる」への賛否



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