5.夫の家事、育児遂行に対する妻の評定

  • 若い主婦層では満足度が高く、中年期の主婦では不満が大きい
     日本の妻は、夫の家事、育児への役割遂行の低さにもかかわらず割合と満足度が高いといわれる。今回の調査でも夫の家事、育児への寄与、分担の度合いは低水準であることが明らかになっている。そこで、夫の家事、育児への遂行実態に対し妻はどう認識しているのか。また、この5年間の変化についてもみている。

     今回の結果では、夫の家事、育児に対し肯定的に受けとめている「満足」している妻の割合(「非常に満足」と「まあまあ満足」の合計)と不満足の割合(「非常に不満」「やや不満」の合計)が、ほぼ拮抗する状態になっている。前回は肯定派が6割を占めていたのに対し、今回は否定的な不満の割合が増加し、ほぼ同数の状態になっている。妻の年齢別にみると、29歳以下の若い妻でもっとも満足度が高いことは、前回同様である。しかし、この20代をはじめいずれの年齢層の妻でも肯定する割合は低下している。とくに40代の妻では肯定派否定派が逆転し、否定派の方が多数になっている。40歳代が低くなっているのは、夫のU字型の家事参加割合の実態とも相応している。

     妻の従業上の地位別にみても、いずれも不満足派が増加し、もっとも肯定的態度を示している専業主婦でも5年前に比べ、1割近く不満足の割合が増加している。親との居住関係別でも、同居別居に関わらず不満派が伸びている。同居者の方では満足派と不満足派が逆転している。夫の帰宅時間別にみると、いずれの時間帯でもやはり支持しない層が増えているが、帰宅時間の後れとともに夫の家庭役割に対し不満を持つ層が増えている。8時前帰宅かどうかで肯定否定が分岐するが、8時以降の帰宅では不満足派が過半数を越える。「非常に不満」派も夫の帰宅時間が遅くなるにしたがって増加している。

     不満派が増えたとはいえ、夫の家事、育児への遂行実態に依拠すれば、ほぼ半数が肯定派であることは、「夫も家事や育児を平等に分担すべき」に4分の3以上が肯定している妻の意識と併せて考えれば納得のいく結果とは言えない。しかし、こうあって欲しいという願望が意識に反映され、一方実態認識には現実の生活のなかで妻の側でも性別役割分業を肯定するような、あるいはあきらめ感が潜在意識としてあり、それを前提とした判断であると考えれば、意識と実態認識の間に乖離が生じても不思議ではない。
表15 属性別にみた妻の夫の家事・育児に対する満足度
属性別にみた妻の夫の家事・育児に対する満足度


     夫の家庭役割の遂行実態からすれば、不満派が増えたとは言え、かなり甘い評価のようにみえる。夫の家事や育児遂行に対し、妻がどのような期待を抱いているのかをみてみる。

     妻の年齢別にみると、期待度の高い(「非常に期待」「まあまあ期待」の合計)のは、20歳代で最も高く6割程度を占めている。40歳代以降は半数を切り、40歳代の妻が最も期待度は低くなっている。いずれにしても、夫の家事、育児遂行には期待していない割合(「あまり期待しない」「ほとんど期待しない」「もともと期待しない」の合計)が高い。

     また、妻の従業上の地位別にみると、専業主婦にとって家事役割は、夫の収入獲得役割に対する互酬的役割としての代替行為であるから、「もともと期待していない」が高く、全体の期待度が低いと予想できたが、肯定的期待度はフルタイムで働く妻に比べれば低いものの、パート、自営・家族従業の妻よりも高く、これは専業主婦が決して自己を家事や育児の専従者とは認識していないことの反映であろう。
表16 属性別にみた妻の夫の家事・育児に対する期待度
属性別にみた妻の夫の家事・育児に対する期待度


     それでは、評価と実際の行動とはどのような関係にあるのかを、尺度化した家事得点・育児得点を用いて検討してみた。これによれば、それぞれ相対的ではあるが、遂行得点の高い夫に対しては高い評価、満足度が与えられている。4段階の満足度に対応する平均得点は、どのレベルでも前回に比べ切り上げられており、妻の夫の家事育児への要求水準は、5年前に比べわずかに高くなっている。
表17 家事育児得点と満足度評価
家事育児得点と満足度評価



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