4.夫の育児参加の実態と変化

  • 若い世代ほど育児参加は高い、しかし、20代の育児参加は前回に比べ伸びず
     出産か子育て期が進行中である、あるいはそれに近い世代である妻50歳未満の夫の育児実態について検討している。具体的には、育児に関連する6項目(「遊び相手」、「風呂に入れる」、「寝かしつける」、「食事をさせる」、「おむつを替える」、および今回「あやす」を追加)について、夫が「週1−2回」程度以上参加している割合を5年前と比較している。

     種目別に前回と比較してみると、「週1−2回」以上遂行の割合は、5項目の内4項目で4-9ポイント台上昇している。ただ「寝かしつける」では、ほとんど変化がみられない。

     育児全体の夫の遂行実態を、家事同様に育児領域別に尺度化し、この得点のトータルを妻の年齢別に前回と比較してみると、20歳代以外の年齢階級では、わずかながら得点を上昇させている。唯一20代のみが5年前とほとんど変化がない。
図16 夫の育児遂行割合(週1〜2回以上)
夫の育児遂行割合(週1〜2回以上)


図17 妻の年齢別夫の育児合計得点
妻の年齢別夫の育児合計得点


  • 手のかかる育児項目ではほとんどやらないが6割
     妻の年齢別にみると、「風呂に入れる」や「遊び相手をする」といった比較的軽微な育児領域でほぼ8割を超え、前回に比べ遂行率は上昇している。ただ、20歳代のみほぼ前回並の結果となっている。「食事をさせる」「おむつを替える」は、前回との共通項目中もっとも増加した項目であるが全体では半数を切る程度である。比較的手のかかる「寝かしつける」といった項目の遂行は、4割を切っており、前回とほとんど変化がみられなかった。また、今回どの項目でも、またどの年代でも「週1−2回以上」の遂行率が上昇したが、20歳代では3項目で低下している。このように20歳代であまり変化がみられなかったものの、遂行率では20歳代が最も高く、年齢が上昇するにつれて夫の育児への参加度が徐々に低下する傾向は、今回も同様であった。新たに、今回追加した「あやす」では、「遊び相手」「風呂に入れる」に続いての割合であった。

     つぎに、夫が育児に「週1−2回」以上参加している割合を年齢以外の属性別に検討している。まず、末子の年齢段階別にみると、どの育児項目も1歳未満や3歳未満と子どもが小さいほど高い割合を示している。この傾向は、前回と同様である。また、多くの項目で、それぞれの末子段階で遂行率は上昇している。しかし、「寝かしつける」では、どの段階もほとんど変化がみられなかった。ほかのステージに比べ1歳未満や3歳未満の子を持つ場合は、夫の育児遂行は高まるが、「食事をさせる」「寝かしつける」「おむつを換える」などでは、夫の育児への関与は低く、妻が育児の主体者である実態は変化していない。

     親との居住関係別には、「食事をさせる」「おむつを換える」など、ほぼすべての項目で、親と別居している夫の場合、親と同居する者に比べ遂行率は高く、前回からこの傾向は維持され、親との居住関係は夫の育児行動に影響を与える要因のひとつであろう。

     妻の就業状態別にみると、今回の特徴は、フルタイムで働く妻の夫は、いずれの項目も1回目と2回目の比較による伸び率の平均を上回っていることであり、とくに、「おむつを換える」「食事をさせる」などの項目では10ポイント以上割合が上がっている。また、「寝かしつける」でも5ポイント以上の上昇になっている。

     いずれにしても、「寝かしつける」、「食事をさせる」、さらに「おむつを替える」などの育児項目で、「週1〜2回」程度以上行うの余数である「ほとんど育児に参加していない」夫が項目によっては、6割もいる。このことは、家事ばかりでなく、育児についても基本的に妻まかせ、妻主体であることを反映していることに変化はない。
表13 属性別にみた夫の育児遂行割合
属性別にみた夫の育児遂行割合


  • 夫の帰宅時間は、5年前よりも早まっている
     今回は前回と比較して、全体的に夫の家事、育児行動に軽微な底上げがみられる。夫の家庭役割は、親との居住関係、夫の帰宅時間など日本的な環境要因によって影響を受けることがわかっている。そこで、夫の帰宅時間について5年前と比較してみると、50代までのどの年齢階層でも8時前、9時前に帰宅する割合が増加している。逆に9時以降の帰宅は減少している。これは年齢別以外にも、妻の従業上の地位別に夫の帰宅時間をみても同様である。物理的に家事、育児への参加を阻害する要因になる帰宅時間の改善は、夫の家事、育児遂行の促進要因になっている可能性がある。しかし、20,30,40代の妻の夫では、3割前後が依然として9時以降に帰宅している。30代では10時以降の帰宅が2割を占めている。育児のうち「寝かしつける」で前回に比べ遂行率の伸びが小さかったのは、全体として帰宅時間が早くなったものの、まだまだ十分でないことも要因であろう。小さな子どもをもつ家庭では、より夫婦の協力やコミュニケ−ションが必要である。環境要因の変化と併せて夫婦の意識変革がないと、家庭内の役割構造の変化は進まない。
表14 妻の年齢、就業形態別にみた夫の帰宅時間
妻の年齢、就業形態別にみた夫の帰宅時間



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