2.両親との居住関係



1.子育て資源としての母親

  • 妻30歳代までの夫妻の母親は、どちらかがほぼ生存している
     妻、あるいは夫の親は出産、子育てに対するもっとも重要な支援者のうちのひとつといえる。そこで、ここではおもに再生産年齢にあたる49歳までの妻に限って夫妻の親の状態について確認している。直接的な援助を期待できる母親については、30歳代までの妻にとって夫妻それぞれの母親が生存している割合はほぼいずれもが9割を越している。さらに、妻あるいは夫どちらかの母親が生存している割合は40歳代前半までほぼ100%に近い。これは前回の調査よりもわずかであるが高くなっている。
表2 両親の生存割合
両親の生存割合


  • 別居割合の増加の一方で、40代後半世代では親との同居が増加
     親との居住関係を妻の年齢別にみると、どちらかの母親との同居率、夫妻双方の親のうちのだれかとの同居率は、20歳代から40-44歳代まで漸増し、45-49歳代で反転し減少する。その結果、同居の余数として得られる別居形態の割合は、逆に、40-44歳の年齢階級から若い年齢層に向かって高くなり、20歳代では8割強が別居となっている。40-44歳代までの年齢階層では、前回に比べ、別居割合はいずれも高くなっている。同居割合のピークは、前回の35-39歳代から今回は40-44歳代へ、45-49歳代で反転するものの、この年齢層のみがわずかであるが親との同居率を高めている。別居志向とは別の次元、すなわち、親世代の長寿化によって中年期世代の親夫婦との同居率が高まったことも一因と考えられる。
表3 年齢別親との同・別居割合
年齢別親との同・別居割合


  • 人口集中地区では親との同居は2割を下回る。しかし、両地域とも別居傾向は高まる
     地域別にみた親との同別居の状態については、農村的地域を示す非人口集中地区で夫側に傾斜して同居率が高く、妻側を含めれば4割強が親と同居をしている。これに対し人口集中地区では親と同居しているのは2割を切っており、8割以上が別居である。このように親世代との居住関係は生活地域によって大きな差がある。しかし、両地域とも共通して別居割合が増加している。とくに農村地域で同居割合の落ち込みが大きい。
表4 地域別親との同別居割合
地域別親との同別居割合


  • 若い年齢層ほど親と近隣に住む割合が高い
     親と別居している場合でも、居住地が近接しているほど親の援助が受け易いと考えられる。親との別居の状況を時間距離帯別に検討してみると、親世代との同居では若い年齢層ほど別居志向が強いことをみたが、その一方で、別居については若い年齢層ほど近居の割合が高く、敷地内別居を含めると30歳代前半までの世代では、別居の4割以上を占めている。逆に、「60分以上」の遠居は年齢層が高くなるほど順に割合を増加させている。若い世代ほど同居より別居を、別居であれば親からの便宜を享受しやすい近居別居を選考する傾向がある。ただし、こうした意志的な側面とは別に、たとえば、45-49歳層は団塊の世代か、その後続の世代であるというような人口学的な側面も考慮に入れて考える必要がある。
     比較的近距離といえる15分以内、30分以内に親が居住している割合は非人口集中地区で高く、別居している親であっても双方とも半数以上が30分以内のところに住んでおり、どちらかの親であれば7割を占めている。一方人口集中地区では30分以内に双方の母親が居住する割合は、それぞれ3分の1強程度で、どちらかの親であっても半数近くが30分以上の距離に居住している。非人口集中地区に比べると同居率、近居率とも低く、時間距離的には親の直接的援助を得にくい客観的条件の差が確認できる。
表5 年齢別、別居親との距離
年齢別、別居親との距離

図1 地域別、別居親との距離
地域別、別居親との距離



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