1.将来推計人口の基本的性質と見方
(3)将来推計人口の見方
2)推計の不確実性と複数仮定による推計の見方 b) 複数仮定による推計の見方
ここで、異なる仮定の組み合わせによる推計結果を比較すると、人口規模は出生高位・死亡低位推計が最も多く推移し、出生低位・死亡高位推計が最も少なく推移する。
2055年における人口規模の幅は、1,715万人であり、出生中位・死亡中位推計結果の19.1%に相当するものであった。
しかし、人口高齢化の程度を示す高齢化率(65歳以上人口割合)は、出生低位・死亡低位推計が最も高く推移し、逆に出生高位・死亡高位推計が最も低く推移する。2055年における高齢化率は、前者で44.4%、後者では36.3%であり、8.1ポイントの幅があった(注)。
すなわち、人口規模と高齢化率では、最大・最小を与える仮定の組み合わせが異なっている。このように、人口指標によっては最大・最小を示す推計が異なっているので、安全幅を設ける方向については、推計を使用する目的に応じた確認が必要である。
複数の推計を利用するには、このような難点があるほか、それぞれの推計の蓋然性の違いについて定量的な情報がなく、利用法が制約される面がある。複数推計の利用のこうした不都合を解消する方法としては、確率推計と呼ばれる提示の仕方がある。この方法ついては第2節(4)において紹介する。
なお、複数推計については、それらの比較によって、仮定値の違いがもたらす将来人口への影響を評価するという機能がある。とくに本書第U章に掲載した仮定値一定推計、ならびに封鎖人口による推計(国際人口移動をゼロとした推計)をすでに公表された9推計と合わせて比較すれば、それぞれの仮定値が推計人口に対して持つ意味を理解し、また効果を測定することができる。
(注)出生中位・死亡中位推計の高齢化率は、40.5%である。
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