2.親の健康状態と介護状況

  • 高齢者の居住状態は、高齢になるほど世帯規模の大きい家族で生活している
     高齢者個々人がどのような規模の世帯に住むかは、時代や文化によって違いがみられる。それは、高齢者の扶養や介護の社会化の問題とも大きく関係している。日本では高齢の独居世帯や夫婦世帯の増加が著しく、3世代の同居は減少し、小家族化が進行している。今回の調査から、高齢者個人がどのような大きさの世帯に所属するかをみると、60歳以上では高齢になるほど、比較的世帯規模の大きな4人以上の世帯に属する割合が増加している。70歳以上ではほぼ4割が5人以上の世帯に属し、75歳以上の後期高齢者では半数以上が、4人以上の世帯で生活していることになる。また、7割近くが3人以上の世帯に属している。近年、子どもとの同居割合が低下傾向にあるものの、それでもほかの欧米諸国とは異なった高齢者の居住形態を示し、高齢者の扶養や介護に家族の果たす役割が多大であることが理解される。それだけに、将来の超高齢社会を考えると、介護の社会化が急務であることを示唆している。
図3 高齢者の所属世帯人員別割合
高齢者の所属世帯人員別割合


  • 子育てと介護両方を担う妻は少ない
     親が生存していても健康状態が良くなければ子育ての援助者として機能を果たせない。逆に、親が日常生活に何らかの手助けを必要とすれば、出産や育児の妨げになることも考えられる。妻の年齢別に夫妻双方の両親の介護の要否をみると、29歳以下の若い妻の親では1%台であり、30歳代では母親の場合には2%台である。出産や子育てに、より手のかかる40歳より若い妻の親では、介護が必要と思われる親は少ない。したがって、育児と介護の両方に手がかかる妻は総じて少ないといえる。しかし、子育て支援資源としての親を考えた場合、50歳以上の妻の親は、かなりの割合で自分の親の介護が必 要となっている。出産・子育て期世代の親世代が、自分たちの親世代の介護を担うことによって、孫の子育てサポート資源としての役割を担えない、阻害要因になることも考えられる。
表8 妻の年齢別親の介護要否
妻の年齢別親の介護要否


  • 別居している場合、親の介護に関わる割合は低くなる
     つぎに、別居している親の介護状況をみている。同居親については件数が小さいので介護者の内容についてはふれず、頻度のみを掲載してある。
     別居している親について、介助や介護の必要のある親はそれぞれ6〜8%程度で、全面的な介助が必要な親も全体では1%程度みられる。これらの要介助や介護者の担い手に主たる介助者として、妻本人がどう関わっているかは、それぞれの親によって多少差がみられるものの、ほぼ1割程度であり、夫の父親への担い手割合が夫婦双方の親のなかでは最も低いものとなっている。いずれにしても、別居している親への介護の主体者とはなりにくい状況が表れている。主たる介護者でなくとも、その補助的な役割として手伝っている妻は、自分の親では父母とも3分の1程度あるのに対し、夫の親では、父親の場合は1割強、母親の場合は2割程度と自分の親と夫の親では関わり方に差が出ている。それでは、妻本人以外の場合について、だれが主たる介護者となっているかをみると、父親の場合は、いずれの父親も配偶者である母親が、半数以上を占めている。妻の父親の場合は、息子の妻、娘が均衡して1割強で続いている。夫の父親については、息子の妻が15%程度で、娘が介助する割合は息子よりも低い。
     母親の場合は、配偶者である父親が看病をするケースは、夫の母親の場合は1割強であるのに対し、妻の母親では、2割弱が行っている。母親の看病の場合は、息子の妻、息子、娘などがほぼ均衡して2割前後である。その他の親族がその他に含まれているが内容の詳細は不明である。しかし、ホームヘルパーや家政婦などの外部サービスを利用する割合は低く、親族中心の介護状況がみられる。
    また、別居している親族の介護の参与へは低く、副次的な役割しか果たせない。要介護者を抱える当該家族からみれば、介護負担の同居家族外からの協力は非常に難しい状況にある。
表9 別居している親の介護の要否
別居している親の介護の要否

表10 別居親の介護の担い手
別居親の介護の担い手
*調査対象である有配偶の妻は、妻の親の場合は娘に、夫の親の場合は息子の妻に含まれている。

表11 別居親に対する介護役割
別居親に対する介護役割


  • 別居の親と話をするなら妻の母親:「週1-2回以上」は半数を超える
     親と話をする頻度は、居住地の近接性にそれほど影響を受けず接触頻度ほどには地域的な差異は大きくないと思われる。週1-2回以上と比較的よく話をする割合では、妻側の母親で半数を超えるのに対し、夫側の母親へは3分の1強程度である。妻側の母親と話す頻度は両地域とも同じ様な傾向を示しているのに対し、夫の母親と話す回数では、非人口集中地区でより高くなっている。また、人口集中地区の方が、夫婦の双方の親との話す頻度は妻方により偏った傾向になっている。年数回程度よりさらに頻度の少ない割合の合計では、夫方が妻方の親のほぼ倍以上も高く、3割近くにも達する。会ったり、電話したりで話しをする頻度は妻側の母親への傾斜が強いこと、地域的には人口集中地区で、よりその傾向が強いことが確認された。
図4 妻の年齢別、別居親と話す頻度
妻の年齢別、別居親と話す頻度

図5 居住地域別、別居親と話す頻度
居住地域別、別居親と話す頻度



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