第5回人口移動調査の要旨


国立社会保障・人口問題研究所



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 結果のおもなポイント


○ 過去5年間の移動理由(表1)


・ 過去5年間に現住地へ移動してきた人の移動理由で最も多いのは、「住宅を主とする理由」で全体の35.7%を占めた。続いて「結婚・離婚」(15.7%)、「職業上の理由」(13.0%)であった。

・ 前回調査とくらべると、「結婚・離婚」(12.8%→15.7%)や「親や子との同居・近居」(4.9%→7.4%)の割合が増えた。一方、「職業上の理由」(15.3%→13.0%)や「親や配偶者の移動に伴って」(17.6%→11.0%)の割合は減少した。

・ 最近の人口移動の特徴として、住宅市場の活性化にともない、新規の住宅取得を目的に移動する人が増えていることがあげられる(都心回帰など)。ただし、今回の調査によれば、「住宅を主とする理由」で移動する人の割合は、前回とほとんど変わらない。今回の場合、「結婚・離婚」や「親や子との同居・近居」で前回より割合が増加したので、これらを理由とする移動も住宅市場の活性化にともなう移動を支えたものと推察される。



表1 過去5年間における現住地への移動理由





○ 出生県へのUターン移動(世帯主・配偶者)

・ 県Uターン率(出生県から転出した経験のある人のうち、調査時点で出生県に戻っている人の割合)を年齢別にみると、男女とも40歳代前半にかけて上昇している。その後、男性では50歳代後半まで横ばいだが、女性では低下する。男性の場合、60代後半以降でUターン率が再び上昇する。男性60歳以上でのUターン率上昇は、定年後に故郷へ戻る帰還移動が要因となっている可能性がある。

・ 前回調査と比較すると、男性の30歳代後半、女性の30歳代をのぞき、どの年齢層でも県Uターン率は上昇している。

・ 前回や今回の調査によれば、30歳未満から40歳代前半にかけての上昇幅は、男性で約22〜24%、女性では16%程度であった。今後、人口が減少していくなかで、いまの30歳未満の県外他出者が、現在の40歳代前半と同じ程度のUターン率で出生県に帰還するならば、今後の地域人口の減少を多少なりとも緩和する働きをもつことが見込まれる。



図1 年齢別、県Uターン率(男性)



図2 年齢別、県Uターン率(女性)





○ 5年後の居住地と移動理由

・ 今後5年間に移動する見通しの人は全体の16.4%であった。この値は、過去5年間の移動実績(24.4%)や、前回調査による今後5年間に移動する見通し(20.5%)を下回っている。移動するかどうか「分からない」とする人が11.0%いるため、こうした人々の動向や、今後経済環境なども大幅に変化しないという条件付き予想ではあるが、移動見通しのみから判断すれば、今後の5年間で移動率が現在より低下する可能性がある。

・ 今後5年間の地域移動の見通しでは、大都市圏から非大都市圏への移動が、非大都市圏から大都市圏への移動を上回っている。過去5年間の実績値と比較しても、大都市圏から非大都市圏への移動見通しの割合は高まっている(表2)。

・ 「定年退職」を理由とした移動については、男性の50歳代から60歳代前半で、前回にくらべ、割合がいずれの年齢層でも上昇している(表3)。今後1940年代後半出生コーホートである第一次ベビーブーム世代の定年退職が本格化すると、非大都市圏への移動が増加する可能性もある。



表2 過去と今後の地域類型間移動パターン



表3 男性定年世代を中心とした移動理由分布の比較(全世帯員)





○ 移動の経験と居住地域

・ 世帯主と配偶者について、居住経験のある地域ブロックの割合をみると、現住地域がどのブロックの場合でも、1割以上の人が東京圏に住んだ経験をもつ。

・ 現住ブロックごとに出生地域ブロック別の人口割合をみると、現在、東京圏(1都3県)に住んでいる人の68.1%が、地元(東京圏)出身であった。他方、東北や北海道、四国などでは、地元出身の割合が非常に高い(順に94.7%、91.8%、91.4%)。

・ 現在、東京圏に居住する人のうち、地元(東京圏)出身者がしめる割合は、14歳未満では93%だが、年齢があがるにつれほぼ一律に低下し、50歳代前半で53%になる。前回の調査にくらべると、30歳未満ではほとんど値が変わらないが、30〜49歳で前回の値を2〜9%程度上回っている。この年齢層では、前々回調査から一貫して割合が上昇しており、若いコーホートほど東京圏出身者の割合が高くなっている(図3)。



図3 東京圏居住者にしめる東京圏出生者の割合(%)





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