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国立社会保障・人口問題研究所

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東アジア、ASEAN 諸国の人口高齢化と人口移動に関する総合的研究

研究目的

日本を追って急速な経済発展を果たしたアジアNIEs と中国に続き,発展の波は東南アジアのASEAN 諸国へと波及している。同時にこれらの国々では出生率が急激に低下し,日本以上に急速な高齢化が予想される。韓国・中国・タイなどでは,既に生産年齢人口の相対的減少が始まっており,人口ボーナスは早くも消失しつつある。こうした中,十分な経済発展が達成される前に人口高齢化の負の影響が現れる「未富先老」が懸念されている。すなわち社会保障制度の整備が高齢化の速度に追いつかず,不足する公的移転に家族移転や自助努 力を合わせても高齢者の福祉が低下する懸念がある。
 東アジア・ASEAN 諸国の人口高齢化のスピードは日本よりも早く,さらに若年人口の都市流入は地方の人口減少・高齢化に拍車をかけている。国内の人口変動に対応するため,韓国・台湾では短期外国人雇用プログラムを運用しており,ASEAN 諸国では域内移動の自由化が進められている。今後は労働力のみならず,留学,観光,国際結婚,退職者の移住等を含めた国際人口移動の動向が,日本とアジアの将来に重大な影響を与えることになろう。
 世界最高齢化国として先頭を歩む日本が,単独でこの歴史的課題を乗り越えることは不可能であり,一方で後続の国々も遅れて同様の課題に直面することを考えれば,わが国にとって地理的,経済的,文化的要素を共有する東アジア,ASEAN 諸国との連携の必要性は論を待たない。しかし,これまでアジア全域を見通した人口・世帯変動を前提とした人口移動の動向や家族支援,健康医療介護政策も含めた社会保障制度の在り方に関する研究は少ない。本事業においては,まず東アジア,ASEAN 諸国における人口変動過程(少子化,長寿化,高齢化,国内・国際人口移動等)および関連する政策(少子化対策,家族政策,健康医療介護政策,地方分権政策,移民政策等)の比較分析により,個々の特徴や改善点を明らかにする。それらを体系的に扱うことにより,個別分析では得られない結論を得ることを目指す。また,人口変動に対処する社会保障制度,とりわけ高齢化により需要が急増する医療・介護人材に関する比較を行い,現状や課題,対応策などの多様性を明らかにし,各国の介護政策のあり方とともに,わが国の医療・介護施策の東アジアでの位置,施策の普遍性,今後のあり方に資する知見を得ることを目指す。


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