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国立社会保障・人口問題研究所

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第U部 夫婦調査の結果概要:4.子育ての状況




U-4.子育ての状況
(1)妻の就業と出生

いずれのライフステージでも、子を持つ妻の就業率は上昇
 子どもを生んだことのある妻の出産後のライフステージ別(子どもの追加予定の有無、末子の年齢別)に就業状態をみると、子どもの追加予定がある夫婦の場合29.5%の妻が正規の職員、19.9%がパート・派遣として働いており、自営業等を含め52.9%が就業している。子どもの追加予定がなく末子が0〜2歳の夫婦の場合、妻が就業しているのは47.6%だが、末子が3〜5歳では61.0%となっている。また、第7回調査(1977年)からの約40年間の推移を見ると、いずれのライフステージにおいても妻の就業率は上昇傾向にある。

図表U-4-1 調査・出産後のライフステージ別にみた、妻の就業状態の構成


育児休業制度の利用者が増加し、出産前後の就業継続率が上昇
 結婚前後の妻の就業状態についてみると、結婚退職が減少しており、結婚前後で就業を継続した妻の割合は7割を超えた(図表U-4-2)
 また、第1子出産前後の妻の就業状態の変化をみると(図表U-4-3)、妊娠前の妻の就業率が7割超で推移する中、出産退職する妻は減少しており、第1子出産後の就業継続者の割合は、2005〜09年の29.0%から2010〜14年の38.3%へと10%ポイント近く上昇した。

図表U-4-2 結婚年別にみた、結婚前後の妻の就業変化

図表U-4-3 第1子出生年別にみた、第1子出産前後の妻の就業変化

 結婚前、妊娠前にそれぞれ就業していた妻に限定して、就業継続率をみると、結婚前後では、1980年代後半の60.3%から2010年代の81.0%へと約21%ポイント上昇した。第1子出産前後では、就業継続率は4割前後で推移してきたものの2010〜14年では53.1%へと上昇した。一方、第2子、第3子出産前後の継続率は8割前後で推移している。なお、育児休業制度を利用して就業継続をした妻の割合は第1子〜第3子ともに大きく上昇している。

図表U-4-4 結婚・出産前後の妻の就業継続率、および育児休業を利用した就業継続率
(結婚を決めたとき、妊娠がわかったときに就業していた妻)


子どもを産み終えた無職の妻の86%が就業を希望、多くがパート・派遣での就業を望み、背景には経済的理由
 15歳未満の子どものいる夫婦について、現在無職の妻に就業意欲の有無をたずねたところ、86.0%が何らかの時点で就業を希望していた。また、末子の年齢別に見ると、0〜2歳の子どもを持つ妻の12.4%、3〜5歳の子どもを持つ妻の17.8%が「すぐにでも働きたい」と回答している。


図表U-4-5 末子年齢別にみた、現在無職の妻の就業希望:第15回調査(2015年) (子どもの追加予定がない夫婦の妻)


 現在無職で就業を希望している妻に、希望する従業上の地位についてたずねたところ、「パート・派遣」が全体の87.5%を占めた(図表U-4-6)。また、仕事をしたい最大の理由については、52.1%が経済的理由(「自分の収入を得たい」、「子どもの教育費のため」、「生活費のため」、「貯蓄のため」、「老後のため」のいずれかを最大の理由として選んだ者の合計)を挙げている(図表U-4-7)

図表U-4-6 子どもがいる現在無職の妻の希望する従業上の地位:第15回調査(2015年)

図表U-4-7 子どもがいる現在無職の妻の就業を希望する最大の理由:第15回調査(2015年)

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(2)子育て支援制度・施設の利用

正規雇用を継続する妻の98%が何らかの支援制度・施設を利用
 第1子が3歳以上15歳未満の夫婦について、第1子が3歳になるまでに利用した子育て支援制度・施設についてみると、いずれかの制度・施設の利用率は80.3%となっている。特に、出産後も継続して正規雇用の場合の利用率は98.1%となっており、産前・産後休業制度(90.7%)、育児休業制度(83.6%)の利用率が高い。
 これを妻の出生年別にみると、若い世代ほど利用率が高い。また、妻の勤め先の従業員規模別に産前・産後休業制度、妻の育児休業制度および育児時間制度・短時間勤務制度をみると、規模が大きいか官公庁勤務者で利用率が高い傾向がある。なお、夫が育児休業制度および育児時間制度・短時間勤務制度を利用するケースはきわめて少ない。

図表U-4-8 第1子が3歳になるまでに利用した子育て支援制度や施設:第15回調査(2015年)総数、正規雇用継続者

子育て支援制度・施設の利用は増加傾向
 第1子が3歳以上15歳未満の夫婦の間で、3歳未満を対象とした保育園の利用率をみると、第1子出生年が1990年代以降で上昇しており、2010年代初頭に生まれた第1子の利用率は37.7%であった。また、育児休業制度を利用した妻も増加しており、2010年以降30.0%の妻が同制度を利用する一方、夫の利用者は1%に満たない。

図表U-4-9 第1子出生年別にみた、第1子3歳時までの子育て支援制度・施設利用割合の推移

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(3)祖母の子育て支援

夫妻の母親(子の祖母)から子育ての手助けを受けた夫婦は全体の半数程度
 最初の子どもが3歳になるまでに夫妻の母親(子の祖母)から子育ての手助けを受けた(「日常的に」「ひんぱんに」子育ての手助けを受けた)割合は、第1子出生年が1980〜90年代にかけては上昇傾向にあったが、2000年以降は5割程度で推移し、2010年以降では52.9%となっている。この水準は第1子1歳時に妻が就業している場合には58.2%とやや高く、その内訳をみると、妻方の母親(子の祖母)から子育ての手助けを受けた夫婦割合が上昇する一方で、夫方の母親(子の祖母)から受けた夫婦の割合は低下する傾向にある。

図表U-4-10 第1子出生年別にみた、第1子が3歳になるまでに 夫妻の母親(子の祖母)から子育ての手助けを受けた割合の推移

妻が就業継続の場合、母親(子の祖母)からの子育ての手助けに加え、制度・施設の役割が重要
 3歳以上の子どもを持つ夫婦について、妻の就業経歴のタイプ別に母親(子の祖母)からの子育ての手助けと、制度・施設の利用状況をみると、就業継続型ではほぼ全ての夫婦が母親(子の祖母)からの子育ての手助けを受けたか、あるいは制度・施設を利用している(結婚持続期間0〜9年で97.4%、10〜19年で97.0%)。一方、就業継続型でない場合(再就職型と専業主婦型)、これらの率は低くなっている(結婚持続期間0〜9年で75.3%、10〜19年で62.6%)。
 また、結婚持続期間が0〜9年の場合、母親(子の祖母)からの子育ての手助けを受けた夫婦の割合は、就業継続の有無にかかわらず約6割と変わらないものの、制度・施設を利用した夫婦の割合は、再就職型・専業主婦型では38.6%であるのに対して、就業継続型では90.2%となっている。また、制度・施設のみの利用率も、再就職型・専業主婦型では16.6%であるのに対して、就業継続型では34.2%と高い。
 結婚持続期間が10〜19年の場合、母親(子の祖母)からの子育ての手助けを受けた夫婦の割合は、再就職型・専業主婦型では48.2%、就業継続型で68.2%である一方、制度・施設を利用した夫婦の割合は、再就職型・専業主婦型では26.8%、就業継続型で87.1%と、母親(子の祖母)からの子育ての手助けを受けた夫婦割合の差よりも大きい。また、制度・施設のみの利用も、再就職型・専業主婦型では14.4%であるのに対して、就業継続型では28.8%となっている。このように、就業継続型では母親(子の祖母)からの子育ての手助けに加え、制度・施設の利用が重要な役割を果たしていることがわかる。

図表U-4-11 就業経歴・結婚持続期間別にみた、第1子が3歳になるまでに受けた
母親(子の祖母)からの子育ての手助けと制度・施設の利用状況:第15回調査(2015年)


子育ての支援がない場合、再就職型・専業主婦型でも出生意欲が低い傾向にある
 3歳以上の子どもがいる結婚持続期間10年未満の夫婦について、妻の就業経歴のタイプ別に平均予定子ども数をみると、同じ再就職型と専業主婦型であっても、母親からの手助けや制度利用といった子育て支援がないと、平均予定子ども数が低くなることがわかる。また、結婚持続期間10年未満の夫婦全体について、妻の就業経歴のタイプ別に平均出生子ども数をみると、子育て支援を受けた再就職型と専業主婦型でもっとも高く、子育ての支援を受けた就業継続型はそれに次ぐ高さとなる。

図表U-4-12 就業経歴別、第1子が3歳になるまでに受けた母親(子の祖母)からの子育ての手助けと制度・施設の利用状況別にみた、平均予定子ども数、および平均出生子ども数:
第15回調査(2015年)(結婚持続期間10年未満の夫婦)