U. 結婚という選択

− 若者たちの結婚離れを探る−





1. 結婚の意欲



  • 結婚を先延ばししようとする意識は継続
     未婚者のうち一年以内の結婚意思について「まだ結婚するつもりはない」と回答した人は、男性20歳代後半から30歳代、女性20歳代後半で増加傾向にあり、結婚を先延ばしする意識は継続して増加している。

【解  説】未婚者の結婚意欲の変化  若者たちの結婚意欲の変化を、本調査から得られる指標によって調べよう。これまでに見た三つの設問の回答結果を一緒にして結婚意欲の段階順に再構成した(表U-1-4)。各段階を意欲の強さにしたがって得点化し平均することで、グループごとに結婚意欲を比較することができる。年齢階級ごとに結婚意欲の年次推移を見ると(図U-1-4)、第11回調査(1997年)まで低下を続けていた結婚意欲が、今回主要な年齢でほぼ前回並みにとどまっていることがわかる。ただし、30歳代後半の未婚女性では結婚意欲が継続して高まっている。

2 .結婚の利点・独身の利点



  • 「結婚には利点がある」と考える未婚男性が減少傾向
     現在結婚することに利点があると感じているのは未婚男性の6割(62.3%)、未婚女性の7割(69.4%)であった。逆に男性の1/3(33.1%)、女性の1/4(26.3%)は結婚に利点はないと考えている。男女とも利点を感じない人がわずかずつ増えており、とりわけ男性で明瞭である。一方、現在の独身生活に利点があると考える人は男性8割(79.8%)、女性9割弱(86.6%)と、結婚に利点を感ずる割合よりかなり多いが、こちらもわずかながら減少傾向にある(以上、表U-2-1)。結婚の利点の感じ方は年齢によって異なり、20歳代後半から30歳頃にかけて最も多く意識されるが(図U-2-1)、それに比べると独身生活の利点の感じ方は年齢による違いがあまりない(図U-2-2)。



  • 結婚の利点は「家族をもてる」が増加、「社会的信用」、「生活の利便」はさらに減少
     結婚の利点として男性では「精神的な安らぎの場が得られる」が最も多いが、女性ではこれとともに「自分の子どもや家族をもてる」が同程度に多い。後者は今回男女とも増加していて、女性でははっきりと第一位の項目となった。次いで男女とも「愛情を感じている人と暮らせる」が続き、現在の未婚者の感じる結婚の利点は内面的な事柄が上位を占めている。一方で第9回(1987年)には男性で2位を占めていた「社会的信用を得たり、周囲と対等になれる」は、男女ともに急速に減少している。また、男性では「生活上便利になる」も減少を続けている。一方、女性では「経済的余裕がもてる」を結婚の利点とする者がやや増える傾向にある。



  • 独身生活の最大の魅力は「行動や生き方が自由」であること
     独身生活の利点は、男女とも圧倒的に「行動や生き方が自由」を挙げる人が多い。それ以外では「金銭的に裕福」「家族を養う責任がなく、気楽」「友人などとの広い人間関係が保ちやすい」などが比較的多い。この構図には調査ごとにほとんど変化がない。すなわち現代の未婚者は結婚すると行動や生き方、友人関係などが束縛され、家族扶養の精神的負担が加わると一貫して考えている。ただし、女性で広い友人関係が保てることを独身生活の利点とする人が漸減しており、この点に関する結婚の束縛感は緩んでいると見られる。

【解  説】結婚意欲は結婚の利点の感じ方によって決まる 未婚者の結婚意欲は、現在の独身生活の魅力に関わらず、結婚に利点を感じているかどうかによって決まるようだ。調査結果によれば、結婚に利点があると回答したグループでは当然結婚意欲が高く、年齢による変化もはっきりしているのに対し、利点がないと回答したグループでは全年齢を通じて意欲が低いままにとどまっている(図U-2-5)。一方で独身生活に利点を感じているかどうかは、20歳代前半までの若い層で結婚意欲にいくぶん影響しているものの差は小さく、また20歳代後半以降ではむしろ逆転が見られる(図U-2-6)。こうしたことから、結婚に対する意欲の強さは、現在の独身生活がどれほど魅力的かに関わらず、結婚にどれだけ利点を感じているかによって決まっていると考えられる。

3. 異性との交際



  • 異性との交際は二極化
     「異性の交際相手をもたない」と回答した未婚男性は52.8%で前回調査(49.8%)より3ポイント増え、半数を超えた。女性では40.3%で、前回調査(41.9%)より1.6ポイント減少したがそれ以前よりは多く、異性との交際は意外に低調なまま推移している(表U-3-1)。しかし、逆に恋人以上の親密な交際相手(「恋人」「婚約者」)を持つ女性は25歳以上で継続的に増える傾向にあり(図U-3-1)、この年代では交際相手がいないか、親密な相手を持つかに二極化する傾向が見られる。



  • 同棲経験者、20代後半で1割に達する
     現在または過去に同棲した経験があると回答した未婚者(18〜34歳)は、男性6.7%、女性7.6%であり、近年わずかずつだが増加を示している。とりわけ25〜29歳での増加が目立ち、今回調査では男性10.3%、女性10.0%と初めて1割に達した。しかしながら、現在同棲を継続している未婚男女は、最も多い25〜29歳でも3%足らずであり、いまだ少数派である。



  • 未婚者の性経験、男性で増加に頭打ち。一方、女性では上昇が継続
     性経験があると回答した未婚者(18〜34歳)は、男性59.8%、女性55.4%であり、25歳以上では男性7割、女性6割強となっている。これらは過去いずれも増加を示していたが、男性ではこのところ全年齢で頭打ちの傾向が見られる。他方、女性では全年齢で上昇が継続しており、従来見られた男女の差は消失しつつある。

【解  説】既婚も含めたパートナーシップ構成の変化 国勢調査から推定される配偶関係の構成と本調査から得られる未婚者の異性交際の状況から、各年次、各年齢階級における異性のパートナーシップの状況を推定した。年齢とともに恋人、友人としてのパートナーシップから、夫、妻としてのパートナーシップに移り変わるようすがわかる。近年未婚率が上昇していることと、未婚者中の交際相手を持たない割合があまり変わらないことから、ほとんどの年齢層で異性のパートナーを持たない男女が増加していると見られる。ただし、20歳代前半までの若い層では恋人以上の親密なパートナーを持つ割合は変わらないか、むしろ増加気味である。

4. なぜ結婚しないのか?



  • 「結婚できない」から「結婚しない」へ
     未婚者に独身にとどまっている理由をたずねたところ、25歳未満の若い年齢層では「まだ若すぎる」「必要性を感じない」などの結婚の必然性の欠如や「仕事(学業)」や「趣味、娯楽」との競合、さらには「自由や気楽さを失いたくない」などが多く、結婚するための積極的理由の欠如が目立つ。とくに「仕事(学業)」との競合は今回大幅な増加が見られた。一方、25歳以上になると「適当な相手にめぐり会わない」という理由を挙げる人が増えて半数程度となる。ただ、この年齢に至っても「必要性を感じない」「自由や気楽さを失いたくない」を選ぶ人は多く、とくに後者は若い年齢層よりも多く選ばれている。全年齢を通して「適当な相手にめぐり会わない」は減少傾向にあり、代わって「仕事(学業)」との競合や「必要性を感じない」などが増えており、独身にとどまっている理由は「結婚できない」から「結婚しない」に徐々に重心が移りつつある。




目次へ戻る 前へ戻る 次へ進む

社人研トップへ