U.推計方法の概要


1.推計期間

 推計期間は平成13(2001)年〜平成62(2050)年の50年間とした。


2.推計の方法

 推計の方法としては、前回同様コーホート要因法を採用した。この方法は、国際人口移動を考慮しつつ、すでに生存する人口については将来生命表を用いて年々加齢していく人口を求めると同時に、新たに生まれる人口については、将来の出生率を用いて将来の出生数を計算してその生存数を求める方法である。コーホート要因法によって将来人口を推計するためには、(1) 基準人口、(2) 将来の生残率、(3) 将来の出生率、(4) 将来の出生性比、(5) 将来の国際人口移動数(率)の5つのデータが必要である。


3.基準人口

 推計の出発点となる基準人口は、総務省統計局『平成12年国勢調査』による平成12(2000)年10月1日現在男女年齢各歳別人口(総人口)を用いた。ただし、年齢「不詳」の人口を各歳別に按分して含めた。


4.生残率の仮定(将来生命表)

 ある年の人口から翌年の人口を推計するには男女年齢各歳別の生残率が必要であり、将来の生残率を得るためには将来生命表を作成する必要がある。
 将来生命表の作成方法には、大きく分けて、経験的方法、数学的方法、そしてリレーショナルモデルの3種類の方法がある。本推計では、リレーショナルモデルを用いた方法であるリー・カーター・モデルを採用し修正して使用した。リー・カーター・モデルは、「平均的な」年齢別死亡率、死亡の一般的水準(死亡指数)、「死亡の一般的水準が変化するときの」年齢別死亡率変化率および誤差項に分解することで、死亡の一般的水準の変化に応じて年齢毎に異なる変化率を記述するモデルである。最近30年間に徐々に緩やかになっている死亡水準の変化を反映させるために、昭和45(1970)年以降のデータを用い関数当てはめを行った。ただし、平成7(1995)年は阪神大震災の影響があるために除外し、また、平成13(2001)年の2月の死亡数が例年になく極めて少ないことから、平成13年については別途生命表を作成し、最終的な関数当てはめを行った。以上の手続きにより求められたパラメータと変数から最終的に平成62(2050)年までの死亡率を男女別各歳別で算出し、将来生命表を推計した。
 将来生命表に基づくと、平成12(2000)年に男子77.64年、女子84.62年であった平均寿命は、平成17(2005)年には男子78.11年、女子85.20年、平成37(2025)年には男子79.76年、女子87.52年、平成62(2050)年には男子80.95年、女子89.22年に到達する(表6図6)。


5.出生率の仮定

 将来の出生数を推計するには、将来における女子の年齢各歳別出生率が必要である。将来の出生率を推計する方法としては期間出生率法とコーホート出生率法があるが、本推計では後者の方法を採用した。コーホート出生率法は、毎年の女子出生コーホート毎に出生過程を観察し、出生過程が完結していないコーホートについて完結出生力の水準と出生タイミングを予測しようとするものである。将来の各年の年齢別出生率ならびに合計特殊出生率は、推計されたコーホート出生率データを年次別データに変換することによって得られる。出生率の将来については不確定要素が大きいため以下の三つの仮定(中位、高位、低位)を設け、それぞれについて出生率を推計した。

(1)中位の仮定について

  1. コーホート別にみた晩婚化は昭和25(1950)年出生コーホートの24.4歳から昭和60(1985)年出生コーホートの27.8歳まで進み、平成12(2000)年出生コーホート以後は変わらない。
  2. 生涯未婚率は昭和25(1950)年出生コーホートの4.9%から昭和60(1985)年出生コーホートの16.8%まで進み、平成12(2000)年出生コーホート以後は変わらない。
  3. 夫婦の完結出生児数は、晩婚・晩産の影響および夫婦の出生行動の変化によって、昭和23〜27(1948〜52)年出生コーホートの2.14人から昭和60(1985)年出生コーホートの1.72人まで低下し、平成12(2000)年出生コーホート以後は変わらない。
  4. 全女子の完結出生児数別の分布は以下のように変化し、平成12(2000)年出生コーホート以後一定となる。


 この場合、合計特殊出生率は平成12(2000)年の1.36から平成19(2007)年の1.31まで低下した後は上昇に転じ、平成61(2049)年には1.39の水準に達する(表7図7)。

(2)高位の仮定について

  1. コーホート別にみた晩婚化は昭和25(1950)年出生コーホートの24.4歳から昭和60(1985)年出生コーホートの27.3歳まで進み、平成12(2000)年出生コーホート以後は変わらない。
  2. 生涯未婚率は昭和25(1950)年出生コーホートの4.9%から昭和60(1985)年出生コーホートの13.3%まで進み、平成12(2000)年出生コーホート以後は変わらない。
  3. 夫婦の完結出生児数は、晩婚・晩産の影響で昭和23〜27(1948〜52)年出生コーホートの2.14人から昭和60(1985)年出生コーホートの1.93人まで低下し、平成12(2000)年出生コーホート以後は変わらない。
  4. 全女子の完結出生児数別の分布は以下のように変化し、平成12(2000)年出生コーホート以後一定となる。


 この場合、合計特殊出生率は平成12(2000)年の1.36から直ちに上昇に転じ、平成61 (2049)年には1.63の水準に到達する(表7図7)。

(3)低位の仮定について

  1. コーホート別にみた晩婚化は昭和25(1950)年出生コーホートの24.4歳から昭和60(1985)年出生コーホートの28.7歳まで進み、平成12(2000)年出生コーホート以後は変わらない。
  2. 生涯未婚率は昭和25(1950)年出生コーホートの4.9%から昭和60(1985)年出生コーホートの22.6%まで進み、平成12(2000)年出生コーホート以後は変わらない。
  3. 夫婦の完結出生児数は、晩婚・晩産の影響および夫婦の出生行動の変化によって、昭和23〜27(1948〜52)年出生コーホートの2.14人から昭和60(1985)年出生コーホートの1.49人まで低下し、平成12(2000)年出生コーホート以後は変わらない。
  4. 全女子の完結出生児数別の分布は以下のように変化し、平成12(2000)年出生コーホート以後一定となる。


 この場合、合計特殊出生率は平成12(2000)年の1.36から低下を続け、平成61(2049)年に1.10に達する(表7図7)。


6.出生性比の仮定

 将来の出生数を男児と女児に分けるための出生性比については、最近の5年間の実績に基づき女子100に対して男子105.5とし、平成13(2001)年以降一定とした(表8図8)。


7.国際人口移動率の仮定

 国際人口移動は、わが国の国際化の進展や経済変動に伴い大きく変化する。さらに、国の政策や施策あるいは諸外国における経済・社会状況によっても変動する。
 従来の将来人口推計における国際人口移動の仮定は、性、年齢別入国超過率を一定とした仮定設定を行った。しかし、国際人口移動の動向は、日本人と外国人では異なった推移を示している。さらに、人口移動、特に入国数の発生は、人口規模ならびに構造に依存しない。
 今回の推計では、将来の国際人口移動は、日本人と外国人とに分けて仮定した。すなわち、日本人の入国超過率、ならびに外国人の入国超過数の2種類について仮定した。
 日本人の国際人口移動については、比較的安定し、かつ出国超過を示していることから次のように仮定した。まず、性、年齢別純移動率(入国超過率)の1995〜2000年平均値を求め、さらに、偶然変動によるブレを取り除くため補整した率を、2001年以降一定とした。なお、移動数の発生母数(人口)は、日本人であるため、別途日本人人口の推定が必要になる。そこで、算出された将来の性、年齢別人口に日本人人口割合(2000年の国勢調査人口と人口動態統計出生数より算定)を乗ずることにより、日本人人口を求めた。
 つぎに、外国人の国際人口移動については、ほぼ入国超過であり、近年増加傾向にあることから、1970年以降について性別に回帰線の当てはめを行った。しかし、1990年前後の急激な変動は、全体の傾向との乖離が大きいため1988〜95年を除いた年次を用いて、ロジスティック曲線により補外し、将来の外国人の性別入国超過数を求めた。なお、入国者の年齢別割合は、1995〜2000年の平均値を一定とした(図9図10図11)。


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