5.子育ての状況



(1)妻の就業と出生



  • 出産後、パートや派遣として働く妻の割合が増大
     子どもを1人以上産んだ妻について、出産後のライフステージ別(子どもの追加予定の有無、末子の年齢別)に就業状態を見ると、子どもの追加予定がある夫婦の場合、今回調査では19.5%の妻が正規の職員として、また19.8%がパート・派遣として働いており、自営業等を含め43.3%が就業している。子どもを生む予定がない場合、末子が3歳未満では妻が就業しているのは33.0%だが、末子が3〜5歳になると51.5%となる(末子6〜8歳では61.0%、9歳以上では72.8%−付表3)。第7回調査(1977年)からの約30年間の推移を見ると、いずれのライフステージにおいても正規の職員として働く妻の割合には大きな変化はない一方、パート・派遣として働く妻の割合が増えている。




  • 育児休業制度の利用は拡大するも、出産前後の就業継続割合は停滞
     結婚前後に妻がどのような就業状態であったかを見ると、結婚前に無職であった者が増加傾向にある一方で、結婚前就業していた者では結婚退職が減少しており、それらが相殺することにより、結婚後も就業を継続している妻の割合は6割前後に保たれている(図5-2)。同様に、第1子出産前後の妻の就業変化を見ると(図5-3)、妊娠前に就業していた妻の割合が増加しており、出産退職する妻の割合は増えているものの、出産後も働いている妻の割合には微増の傾向が見られる。
     これについて、結婚前、妊娠前に就業していた妻に限定して、就業を継続した者の割合を見ると(表5-1)、まず結婚前後の就業継続割合は、1980年代後半の60.3%から2000年代の70.5%へと約10ポイント上昇した。しかし、出産前後について就業を継続した者の割合は、第1子で4割弱、第2子、第3子で7〜8割で推移しており、ほとんど変わっていない。ただ、就業継続者における育児休業制度を利用した割合は第1子〜第3子ともに大きく上昇している。






(2)子育て支援制度・施設の利用



  • 正規雇用を継続する妻の9割が何らかの支援制度・施設を利用、ただし企業規模によって利用率に差
     1歳以上の子どもを持つ夫婦について、最初の子どもが3歳になるまでに利用した子育て支援制度・施設について見ると、全体ではいずれかの制度・支援を利用した割合は41.9%であるが、妻が出産後も正規雇用を継続している場合には利用率は92.3%に達する。とりわけよく利用されているのは、産前・産後休業制度(81.8%)、育児休業制度(62.4%)などである。また、概ね妻の世代が若いほど利用率は高まっている。ただし、制度・施設の利用率は勤め先の企業規模で差があり、大企業や官公庁に勤める場合に高い。なお、これらの制度・施設を夫が利用するケースはきわめて少ない。




  • 子育て支援制度・施設の利用は増加
     3歳未満を対象とした保育園の利用は、1990年代以降上昇しており、2005年以降の利用割合は34.9%であった。育児休業制度を利用した妻も増加傾向にあり、2005年以降18.2%の妻が利用している。しかし夫の利用者は同時期でも1%に満たない。第1子1歳時に就業していた妻に限ると、いずれの支援も利用の割合が高く、2005年以降の妻の育児休業制度の利用は56.1%、保育園の利用は70.5%、短時間勤務制度は20.9%であった。




(3)祖母の子育て支援



  • 夫妻の母親(子の祖母)からの子育て支援は5割で推移
     最初の子どもが3歳になるまでに夫妻の母親(子の祖母)から支援を受けた(「ひんぱんに」「日常的に」子育ての手助けを受けた)割合は1980年代後半以降上昇傾向にあったが、2000年以降は5割程度で推移している。2005年以降では、52.3%の夫婦が夫方、妻方いずれかの母親から支援を受けており、妻が第1子1歳時に就業している場合は61.2%にのぼる。ただし、内訳は変わってきており、妻方の母親から支援を受ける割合が増える一方、夫方の母親からの支援は減少傾向にある。


  • 妻が就業継続の場合、制度・施設に加えて母親(子の祖母)の支援を援用
     1歳以上の子どもを持つ夫婦について、妻の就業経歴のタイプ別に母親(子の祖母)の支援と、制度・施設の利用状況を見ると、就業継続型ではほぼ全ての夫婦が親の支援または制度・施設を利用している(結婚持続期間0〜9年で97.4%、10〜19年で95.7%)。就業継続型でない場合(再就職型と専業主婦型)、継続型に比べるとこの割合は低い(結婚持続期間0〜9年で70.5%、10〜19年で59.4%)。


  • 専業主婦(再就職型含む)でも子育て支援がないと出生意欲は低い
     1歳以上の子どもを1人持つ結婚後10年未満の夫婦について、その子どもが3歳になるまでに母親(子の祖母)の支援、または制度・施設の利用があったか否かの別に平均予定子ども数を比較した。支援を受けた就業継続型、再就職型と専業主婦型の夫婦に比べて、支援を受けなかった再就職型と専業主婦型の夫婦では、平均予定子ども数が少なかった(第2子以上を予定する割合が低い)。ただし、子どもが1人以上いる夫婦全体について実際の平均出生子ども数を見ると、支援を受けた再就職型と専業主婦型の夫婦がやや多く生んでいる(1.75人)のに対し、支援を受けた就業継続型では少なくなっており(1.67人)、就業継続型の妻がいる夫婦では予定を実現するペースに遅れが見られる。


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