3.仮定の解説
(1) 合計特殊出生率1.26の意味
「日本の将来推計人口」(平成18年12月推計)の出生中位推計では、2005年に1.26であった合計特殊出生率が、2013年の1.21まで穏やかに低下し、その後やや上昇に転じて、2055年までには再び1.26へと推移すると仮定されている。この出生率の推移を見るかぎり、今後、出生力低下は底を打ち、安定的に推移するように見える。はたしてそうだろうか。
ふりかえるとわが国の合計特殊出生率は、1974年に人口置換水準(当時2.11)を割り込んで以降、近年の1.3を下回る水準にまでダイナミックに低下してきた。このような急速な変化に比べれば、今後に想定されている合計特殊出生率の変動は小さなものと映るかもしれない。少子化はもはや過去の現象なのではないかといった印象を受ける人も少なくないだろう。
しかしながら、こうした指標の動きがもたらすイメージとは異なり、出生をめぐる行動変化が目にみえる形で現れ、本格化するのは、まさにこれからである。2055年に合計特殊出生率が1.26であるということは、2005年に1.26であったということとはまったく異なる意味を持っている。
以下では、異なる時代の同じ合計特殊出生率の背景にどのような出生行動の違いが隠されているのか、出生変動のメカニズムの理解を軸に読み解くことにしよう。
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