U 推計結果の概要

 日本の将来推計人口では、将来の出生推移・死亡推移についてそれぞれ中位、高位、低位の3仮定を設け、それらの組み合せにより9通りの推計を行っている。以下では、まず出生3仮定と死亡中位仮定を組み合わせた3推計の結果の概要について記述し、次いで出生3仮定と死亡高位、および死亡低位とを組み合わせた結果の概要について記述する。なお、以下の記述では各推計はその出生仮定と死亡仮定の組み合わせにより、たとえば出生中位(死亡中位)推計などと呼ぶことにする。


出生3仮定死亡中位仮定)の推計結果〕

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1.総人口の推移

 人口推計の出発点である平成22(2010)年の日本の総人口は同年の国勢調査によれば1億2,806万人であった。出生中位推計の結果に基づけば、この総人口は、以後長期の人口減少過程に入る。平成42(2030)年の1億1,662万人を経て、平成60(2048)年には1億人を割って9,913万人となり、平成72(2060)年には8,674万人になるものと推計される(表1-1図1-1)。

 出生高位推計によれば、総人口は平成66(2054)年に1億人を割って9,962万人となり、平成72(2060)年に9,460万人になるものと推計される(表1-2図1-1)。

 一方、出生低位推計では平成56(2044)年に1億人を割り、平成72(2060)年には7,997万人になるものと推計される(表1-3図1-1)。


2.年齢3区分別人口規模、および構成の推移

(1)年少(0〜14歳)人口、および構成比の推移
 出生数(日本人)は昭和48年(1973)年の209万人から平成22(2010)年の107万人まで減少してきた。その結果、年少(0〜14歳)人口(外国人を含む総人口)も1980年代初めの2,700万人規模から平成22(2010)年国勢調査の1,684万人まで減少した。

 出生中位推計の結果によると、年少人口は平成27(2015)年に1,500万人台へと減少する(表1-1図1-3)。その後も減少が続き、平成58(2046)年には1,000万人を割り、平成72(2060)年には791万人の規模になるものと推計される。

 出生高位ならびに低位推計によって、今後の出生率仮定の違いによる年少人口の傾向をみると、出生高位推計においても、年少人口は減少傾向に向かい、平成72(2060)年には1,087万人となる(表1-2)。出生低位推計では、より急速な年少人口の減少が見られ、平成42(2030)年に1,000万人を割り、平成72(2060)年には562万人となる(表1-3)。

 こうした年少人口の減少を総人口に占める割合によって見ると、出生中位推計によれば、平成22(2010)年の13.1%から減少を続け、平成37(2025)年に11.0%となった後、平成56(2044)年に10%台を割り、平成72(2060)年には9.1%となる(表1-1図1-4)。

 出生高位推計では、年少人口割合の減少はやや緩やかで、平成25(2013)年に13%台を割り、平成72(2060)年に11.5%となる(表1-2)。

 出生低位推計では、年少人口割合の減少は急速で、平成24(2012)年に13%台を割り、平成36(2024)年に10%台を割り込んだ後、平成72(2060)年に7.0%となる(表1-3)。

(2)生産年齢(15〜64歳)人口、および構成比の推移
 生産年齢人口(15〜64歳)は戦後一貫して増加を続け、平成7(1995)年の国勢調査では8,726万人に達したが、その後減少局面に入り、平成22(2010)年国勢調査によると8,173万人となっている。

 将来の生産年齢人口は、出生中位推計の結果によれば、平成25(2013)年、平成39(2027)年、平成63(2051)年にはそれぞれ8,000万人、7,000万人、5,000万人を割り、平成72(2060)年には4,418万人となる(表1-1図1-3)。

 出生高位ならびに低位推計では、生産年齢人口は平成37(2025)年までは中位推計と同一である。その後の出生仮定による違いをみると、高位推計では生産年齢人口の減少のペースはやや遅く、平成70(2058)年に5,000万人を割り、平成72(2060)年には4,909万人となる(表1-2)。低位推計では、生産年齢人口はより速いペースで減少し、平成59(2047)年に5,000万人を割り、平成72(2060)年には4,000万人をも割り込んで、3,971万人となる(表1-3)。

 出生中位推計による生産年齢人口割合は、平成22(2010)年の63.8%から減少を続け、平成29(2017)年には60%台を割った後、平成52(2040)年に現在の水準よりおよそ10ポイント低い53.9%を経て、平成72(2060)年には50.9%となる(表1-1図1-4)。
 出生高位推計においても、生産年齢人口割合は当初から一貫して減少を示し、平成72(2060)年には中位推計結果より1ポイント高い51.9%となる。

 出生低位推計では、生産年齢人口割合の減少は年少人口の急速な減少にともなって一定の期間は相対的に緩やかとなるため60%台を割るのは中位推計より1年遅い平成30(2018)年である。しかし、その後に減少は加速し、平成72(2060)年には49.7%と中位推計より1.2ポイント低くなる。

(3)老年(65歳以上)人口、および構成比の推移
 老年(65歳以上)人口の推移は、死亡仮定が同一の場合、50年間の推計期間を通して出生3仮定で同一となる。すなわち、老年人口は平成22(2010)年現在の2,948万人から、団塊世代が参入を始める平成24(2012)年に3,000万人を上回り、平成32(2020)年には3,612万人へと増加する(表1-1表1-2表1-3図1-3)。その後しばらくは緩やかな増加期となるが、平成45(2033)年に3,701万人となった後、第二次ベビーブーム世代が老年人口に入った後の平成54(2042)年に3,878万人でピークを迎える。その後は一貫した減少に転じ、平成72(2060)年には3,464万人となる。

 老年人口割合を見ると、平成22(2010)年現在の23.0%から、出生3仮定推計とも平成25(2013)年には25.1〜2%で4人に1人を上回り、その後出生中位推計では、平成47(2035)年に33.4%で3人に1人を上回り、50年後の平成72(2060)年には39.9%、すなわち2.5人に一人が老年人口となる(表1-1図1-2)。

 出生高位推計では、平成49(2037)年に33.3%で3人に1人となり、平成72(2060)年には36.6%、すなわち2.7人に一人が老年人口である(表1-2図1-2

 また、出生低位推計では、平成45(2033)年に33.3%で3人に1人となり、平成72(2060)年には43.3%、すなわち2.3人に一人が老年人口となる(表1-3図1-2

 将来の出生水準の違いによる高齢化の程度の差を、出生高位と出生低位の推計結果の比較によってみると、平成42(2030)年には出生低位推計では32.3%、出生高位推計では30.9%と1.4ポイントの差があるが、この差はその後さらに拡大し、平成72(2060)年には、出生低位43.3%、出生高位36.6%と6.7ポイントの差が生じる(図1-2)。

 すでに見たように老年人口自体の増加は、平成32(2020)年頃より減速し、平成54(2042)年をピークにその後減少するにもかかわらず、出生中位仮定・低位仮定で向こう50年間老年人口割合が増加を続けるのは、年少人口、ならびに生産年齢人口の減少が続くことによる相対的な増大が続くからである。


3.従属人口指数の推移

 生産年齢人口に対する年少人口と老年人口の相対的な大きさを比較し、生産年齢人口の扶養負担の程度を大まかに表すための指標として従属人口指数がある。出生中位推計に基づく老年従属人口指数(生産年齢人口100に対する老年人口の比)は、平成22(2010)年現在の36.1(働き手2.8人で高齢者1人を扶養)から平成34(2022)年に50.2(同2人で1人を扶養)へ上昇し、平成72(2060)年には78.4(同1.3人で1人を扶養)となるものと推計される(表1-4)。一方、年少従属人口指数(生産年齢人口100に対する年少人口の比)は、平成22(2010)年現在の20.6(働き手4.9人で年少者1人を扶養)の水準から今後17〜20の水準の範囲で推移する。低出生率によって年少人口が減少するにもかかわらず、平成41(2029)年頃より年少従属人口指数が一定水準以下に低下しないのは、生産年齢人口も同時に減少していくからである。

 年少従属人口指数と老年従属人口指数を合わせた値を従属人口指数と呼び、生産年齢人口に対する年少・老年人口全体の扶養負担の程度を表す。出生中位推計における従属人口指数は、生産年齢人口の縮小傾向のもとで、平成22(2010)年現在の56.7から平成49(2037)年に80.0に上昇し、その後平成72(2060)年に96.3に達する。

 出生高位推計における従属人口指数は、出生中位推計に比べ年少従属人口指数が高いため当初これより高く推移するが、平成56(2044)年以降は逆転し、平成72(2060)年には92.7となる。逆に出生低位推計における従属人口指数は、当初出生中位推計の同指標より低く推移するが、平成55(2043)年に逆転し、平成72(2060)年には101.4に達する。


4.人口ピラミッドの変化

 日本の人口ピラミッドは、過去における出生数の急増減、たとえば昭和20(1945)〜21(1946)年終戦にともなう出生減、昭和22(1947)〜24(1949)年の第1次ベビーブーム、昭和25(1950)〜32(1957)年の出生減、昭和41(1966)年の丙午(ひのえうま)の出生減、昭和46(1971)年〜49(1974)年の第2次ベビーブームとその後の出生減などにより、著しい凹凸を持つ人口ピラミッドとなっている(図1-5(1))。

 平成22(2010)年の人口ピラミッドは第1次ベビーブーム世代が60歳代の前半、第2次ベビーブーム世代が30歳代後半にあるが、出生中位推計によってその後の形状の変化を見ると、平成42(2030)年に第1次ベビーブーム世代は80歳代の前半、第2次ベビーブーム世代は50歳代後半となる。したがって、平成42(2030)年頃までの人口高齢化は第1次ベビーブーム世代が高年齢層に入ることを中心とするものであることがわかる(図1-5(2))。

 その後、平成72(2060)年までの高齢化の進展は、第2次ベビーブーム世代が高年齢層に入るとともに、低い出生率の下で世代ごとに人口規模が縮小して行くことを反映したものとなっている(図1-5(3))。


出生中位仮定(死亡高位・低位仮定)の推計結果〕

1.死亡高位仮定による推計結果の概要

 死亡高位推計は死亡中位推計よりも高い死亡率、すなわち死亡率改善のペースが遅く、平均寿命が低めに推移することを仮定した推計である。したがって、死亡数は多くなり、同じ出生仮定の下では人口は少なめに推移する。すなわち、出生中位(死亡中位)推計による平成72(2060)年の総人口が8,674万人であるのに対し、出生中位(死亡高位)推計による同年の総人口は、8,532万人にまで減少する。一方、年齢3区分別人口、およびその構成を見ると、出生中位(死亡高位)推計による年少人口は平成72(2060)年で790 万人(構成比9.3%)、生産年齢人口は4,410万人(同51.7%)、老年人口は3,332万人(同39.1%)となっており、出生中位(死亡中位)推計の結果と比較した場合、人口はいずれも少ないが、とくに老年人口が少なく、老年人口割合が低い推計結果となることが特徴である(表2-1表3-4)。

2.死亡低位仮定による推計結果の概要

 死亡低位推計は死亡中位推計よりも低い死亡率、すなわち死亡率改善のペースが速く、平均寿命が高めに推移することを仮定した推計である。したがって、死亡数は少なくなり、同じ出生仮定の下では人口は多めに推移する。すなわち、出生中位(死亡中位)推計による平成72(2060)年の総人口が8,674万人であるのに対し、出生中位(死亡低位)推計による平成72(2060)年の総人口は、8,815万人となる。一方、年齢3区分別人口、およびその構成を見ると、出生中位(死亡低位)推計による年少人口は平成72(2060)年で792万人(構成比9.0%)、生産年齢人口は4,426万人(同50.2%)、老年人口は3,597万人(同40.8%)となっており、出生中位(死亡中位)推計による結果と比較した場合、人口はいずれも多いが、とくに老年人口が多く、老年人口割合が高い推計結果となることが特徴である(表2-2表3-4)。


出生高位・低位仮定(死亡高位・低位仮定)の推計結果〕

 日本の将来推計人口では、上述した推計の他に出生高位・低位仮定と死亡高位・低位仮定を組み合わせた4通りの推計を行っている。最も総人口が多く推移する出生高位(死亡低位)推計によれば、平成72(2060)年に9,602万人、逆に最も少なく推移する出生低位(死亡高位)推計によれば、同年7,856万人となる(表3-1)。また、最も老年人口割合が高く推移する出生低位(死亡低位)推計によれば、同割合は平成72(2060)年に44.2%、最も低く推移する出生高位(死亡高位)推計によれば、同年35.8%となる(表3-4)。

※ 本概要では当該推計の主要な結果表の掲載を省略した。
  同表については国立社会保障・人口問題研究所ホームページを参照のこと。


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