第4回人口移動調査(1996年7月1日実施)について


T 調査の概要

 

調査期日 :1996年7月1日

調査対象 :全国の世帯および世帯員を対象とする標本調査

      調査票配布…15,131世帯 有効回答…14,083世帯(有効回答率93.1%)

調査事項 :世帯員の属性,現住所への移動時期・移動理由および前住地,生涯の移動経験,

      5年前および1年前の居住地,5年後の予定居住地,など

重点テーマ:@最近5年間の人口移動の動向,A生涯移動の動向,B高齢者をめぐる移動,

      C今後の移動の動向,など

 

U.調査結果のポイント

 

(1)最近5年間の人口移動

5年前と住所が異なる人の割合は22.2%であった.前回の調査(第3回人口移動調査:1991年実施)では26.7%であり,人口移動はやや鎮静化している.

  1. 5年前と住所が異なる人を年齢別にみると,25〜29歳が約5割(49.5%)でもっとも高い割合となっている.前回の調査と比べると,今回はどの年齢階級でも割合が少しずつ低くなっている.

  2. 同一区市町村内移動のような短距離移動も,都道府県間移動のような比較的長距離の移動も,前回と比較して同様に低下している.低下幅が大きいのは20歳代前半の都道府県間移動であり,進学や就職をめぐる長距離移動が近年やや減少傾向であることが読みとれる.

(2)生涯移動の動向

生涯の平均移動回数は3.12回(男子3.21回,女子3.03回),これまでに居住したことのある都道府県の平均数は2.13であった.

  1. 生涯の平均移動回数は一般には年齢が上昇するほど多くなるが,青年期が高度経済成長期と重なった現在の50歳代がもっとも移動経験が多く,それより上の世代では移動回数がやや少なくなっている.

  2. これまでに居住したことのある都道府県数が1つのみの人は全体の約4割を占める.3つ以上の都道府県に住んだ経験のある人は全体の3割であった.

(3)東京圏居住者の出生地域

東京圏(東京,埼玉,千葉,神奈川)居住者のうち,現在の40歳代,50歳代では東京圏生まれが約半数であるのに対し,30歳未満では7割を超える.若い世代で東京圏生まれの割合が高くなっている.

  • 全年齢でみると,東京圏居住者のうち東京圏生まれはほぼ3分の2(68.4%)であり,他地域の出身者は残りの約3分の1を占めている.一方,東北と九州・沖縄では現在の居住者の9割以上がそれぞれ東北,九州・沖縄で生まれており,流動性が小さい.

  • (4)現住所への移動理由

    最近5年間に現住所へ移動した人の移動理由をみると,もっとも多いのは「親や配偶者の移動に伴って」(30.1%),続いて「住宅を主とする理由」(22.4%),「職業上の理由」(17.2%),「結婚・離婚」(16.4%)であった.

  • 前回の調査(第3回人口移動調査:1991年実施)よりも移動率自体は若干低下したものの,移動理由の構成には大きな変化はみられない.

  • (5)高齢者の移動

    65歳以上の高齢者のうち5年前と住所が異なる人は6.2%であり,総人口でみた場合と同様に,前回(9.7%)よりも移動率が低下している.

  • 過去5年間に現住所へ移動した高齢者の移動理由のうち,「子と同居・近居」はとくに後期高齢者(75歳以上)に多い(32.3%).前期高齢者(65〜74歳)では21.8%であり,年齢が上昇するにしたがって「子と同居・近居」を移動理由とする割合が高くなる.

  • (6)Uターン移動

    出生した県へのUターン率は男子で27.2%,女子では24.9%であった.

    1. 出生した県の外へ転出した経験がある世帯主および配偶者のうち,現在出生県に戻っている割合は男子で27.2%,女子で24.9%となっている.40歳代で高く,50歳代から60歳代前半で低くなっている.これは高度経済成長期に地方から都市へ移動しそのまま定着した,きょうだい数の多い世代と一致する.

    2. しかし,県外で居住した経験があることを示す県外他出率では,男子の場合,総じて若い世代から高齢世代に向かうほど低くなっており,移動性向そのものは若い世代ほど遠距離移動が活発であることを示している(30歳未満67.2%,65歳以上44.9%).

    (7)離家の経験

    離家時の平均年齢は,大都市圏と非大都市圏で顕著な差があった(1960-69年生まれの女子で非大都市圏21.5歳,大都市圏23.4歳).

    1. 親元を離れた経験のある人は,男子で全体の82.3%,女子で88.1%となっている.戦後世代では長男比率が上昇したにもかかわらず,最近出生の世代ほど離家経験率が上昇していることは,長男であっても一度は親と離れて別の世帯を形成する割合が上昇したことを意味する(1950年以降生まれでは9割以上の離家経験率).

    2. 非大都市圏生まれの女子の離家理由は,時代の影響を受けて,結婚をきっかけとした離家から就職や進学を離家理由とするように大きく変化してきた.一方で,大都市圏生まれの場合は比較的単純な離家パターンを示している.結婚まで親元を離れない者の割合が,戦前生まれの出生世代から一貫して,6割以上の水準で続いている.

    3. 離家のタイミングは,結婚まで親元にいる場合が多いために,女子のほうが遅いとされるが,この傾向は大都市圏でより顕著である.たとえば,1960-1969年生まれ世代の女子で,非大都市圏生まれの離家年齢が21.5歳であるのに対し,大都市圏生まれでは23.4歳に達する.

    (8)今後5年間の移動予定

    5年後の居住地移動の見通しでは,大都市圏→非大都市圏の移動が非大都市圏→大都市圏の移動を上回り,非大都市圏が志向されている.

    1. 今後5年間に移動する見通しの人は全体の20.5%で,過去5年間の移動率22.2%より少し低い数字になっている.今回調査の過去5年間の移動実績は前回(1991年)の第3回人口移動調査結果と比較して低下傾向を示しているが,20.5%という数字だけをみると,将来に向けてもこの鎮静化傾向が続く可能性が読みとれる.

    2. 大都市圏と非大都市圏に分けて移動パターンをみると,過去5年の実績に比べて今後の5年間の移動予定では,大都市圏への移動は小さく,大都市圏から非大都市圏に向かう移動は大きい.



    本調査の報告書で公表している巻末表データが、エクセルファイルでダウンロードできます。
    (2003年3月24日掲載開始)




    問い合わせ (03)3595-2984(研究所代表)

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