1.結婚という選択
− 若者たちの結婚離れを探る −





(1) 結婚の意欲



  • 結婚する意思をもつ未婚者は9割弱で推移
     いずれは結婚しようと考える未婚者の割合は、いぜんとして高い水準にある(男性86.3%、女性89.4%)。しかし「一生結婚するつもりはない」とする未婚者はわずかに増え、男性9.4%、女性6.8%となった。態度不詳が減り、独身志向を表す未婚者が増えた形となっている。



  • 結婚年齢にこだわる未婚者が過半数を回復
     結婚する意思のある未婚男女のうち、ある程度の年齢までに結婚しようと考える人は1990年代を通して減少し、「理想の結婚相手が見つかるまでは結婚しなくてもかまわない」と考える割合を一旦下回ったが、2000年代に入ると傾向が反転し、今回調査では男女ともに過半数を回復している。



  • 結婚に対する先延ばし意識が薄らぐ
     一年以内に結婚する意欲のある未婚者の割合※は、1990年代において男女とも20歳代後半を中心に減少した後、2000年代ではしだいに下げ止まりの傾向を見せていたが、今回調査ではわずかながら増加した。また「まだ結婚するつもりはない」とする未婚者の割合も微減しており、結婚を先延ばししようとする意識は薄らいでいる。



  • 就業状況によって異なる男性の結婚意欲
     一年以内に結婚する意欲のある未婚者の割合を就業状況別にみると、男性では大きな差が見られ、自営・家族従業等、正規職員で高く、パート・アルバイト、無職・家事などで低い傾向がみられる。女性では学生を除くと、そのような差は見られない。




(2)結婚の利点・独身の利点



  • 「結婚に利点あり」女性でやや増える、「独身の利点」は男女とも8割台で安定
     結婚することに利点があると感じている未婚男性はわずかずつ減少する傾向にあり、前回調査でやや増えたが今回再び減少して62.4%となった。女性では7割前後を推移してきたが、前回調査からやや増えており、今回は75.1%となっている。一方、独身生活に利点があると考えている未婚者は男女とも高い割合を維持しており、今回調査では男性は81.0%、女性は87.6%となっている。



  • 男性では就業状況で結婚の利点感に差、男女とも正規職員が最も結婚の利点を感じている
     結婚の利点の感じ方は就業の状況によって異なる。とりわけ男性ではその違いが大きく、正規職員や自営・家族従業として働いている人では結婚に利点を感じる割合が高い。これに比べてパート・アルバイトや無職・家事の男性では、この利点を感じる割合は大きく下回っている。女性でも近年は同様の違いが見られるが、男性の場合に比べると差は小さい。



  • 結婚の利点、「自分の子どもや家族をもてる」が増加傾向、女性では「経済的に余裕がもてる」も増加
     結婚することの具体的な利点としては、男女とも「自分の子どもや家族をもてる」を挙げる人が前回調査から顕著に増えており、男性では「精神的な安らぎの場が得られる」を抜いてはじめてトップの項目となった。「親や周囲の期待に応えられる」は、1990年代の減少傾向から一転して増加傾向を示しており、今回男女とも3位の項目となっている。逆に「現在愛情を感じている人と暮らせる」は減少した。「経済的に余裕がもてる」は、女性のみで増加傾向にある。



  • 独身生活の最大の魅力は「行動や生き方が自由」であること
     独身生活の利点は、男女ともに「行動や生き方が自由」を挙げる人が圧倒的に多い。それ以外では「金銭的に裕福」「家族扶養の責任がなく気楽」「広い友人関係を保ちやすい」が比較的多い。これらの傾向は調査開始以来ほとんど変わっておらず、結婚すると行動や生き方、金銭、友人関係などが束縛されるという未婚者の感じ方は根強い。ただし女性では、友人関係への束縛感は緩んでいるといえる。



  • 結婚後、生活リズム・余暇・お金の自由が保てるかが気がかり
     結婚することを考えたとき、気になることをたずねた。男女ともに「生活リズムや生活スタイルを保てるか」「余暇や遊びの時間を取れるか」「お金を自由に使えるか」が上位を占めた。これらは、とくに独身生活の利点として「行動や生き方の自由」を意識する未婚者の間で高い割合となっている。女性では「仕事(学業)の時間を取れるか」を心配する未婚者が3割前後いる。




(3)結婚へのハードル



  • 結婚に障害となるもの「結婚資金」が増加
     結婚意思のある未婚者に、一年以内に結婚するとしたら何か障害となることがあるかをたずねたところ、男女とも「結婚資金」を挙げた人が最も多く(男性43.5%、女性41.5%)、今回これまでで最も高い割合となった。女性では「親の承諾」「親との同居や扶養」を結婚の障害と考える人が減っている。



(4)なぜ結婚しないのか?



  • 結婚をする積極的理由の欠如や、25歳を過ぎると適当な相手がいないことが制約
     未婚者に独身でいる理由をたずねたところ、若い年齢層(18〜24歳)では「(結婚するには)まだ若すぎる」「必要性を感じない」「仕事(学業)にうちこみたい」など、結婚するための積極的な動機がないこと(“結婚しない理由”)が多く挙げられている。一方、25〜34歳の年齢層になると、「適当な相手にめぐり会わない」を中心に、結婚の条件が整わないこと(“結婚できない理由”)へ重心が移る。しかし、この年齢層でも「必要性を感じない」「自由さや気楽さを失いたくない」と考える未婚者は多い。その他、「結婚資金が足りない」や「異性とうまくつきあえない」などは今回増加が見られる。




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