わが国の出生率は1970年代後半以降置換水準を下回り、現在では先進国中でも低い部類に属す。それでも過去の人口増加の慣性により、人口増加が続いてきたが、その慣性も底をつきつつあり、日本は人口減少の時代を迎えようとしている。それに伴い急激な高齢化が進行しており、いわゆる団塊の世代が65歳に達する2010年代にはいっそう加速するだろう。男女関係の変化に伴い、晩婚化・未婚化が進み、離婚率も上昇を続けている。
これらの変化は、世帯の規模と構成、形成過程と解体過程に大きな影響を与えていると考えられる。増加する高齢者人口の家族関係と世帯構成の変化、ひとり親と子から成る世帯の増加、未婚のまま親と同居を続ける若・中年層の増加などは、学術的にも行政的にも重大な関心事である。「世帯動態調査」はこうした世帯変動の現状を把握し、また将来の動向を予測するための基礎データを得ることを目的としている。 本調査は5年ごとに行っており、平成16(2004)年7月1日に第5回目となる調査を実施した。質問項目は、前回(平成11(1999)年に実施)とほぼ同様で、現在の世帯規模・世帯構成に加え、過去5年間の世帯主経験、親元からの離家、配偶関係の変化等の世帯形成・解体行動について尋ねている。
本調査は、平成16(2004)年国民生活基礎調査の調査区1,048地区から無作為に抽出した300調査区のすべての世帯を対象としている。調査票の配布・回収は調査員が行い、調査票への記入は原則として世帯主に依頼した。
対象世帯数は15,972世帯であり、うち11,732世帯から調査票が回収された。この中から全くの未記入票や、重要な情報が欠けている調査票を無効票とし、最終的に10,711世帯を有効票として集計・分析の対象とした。従って回収率は73.5%、有効回収率は67.1%となる。
◇ 世帯の現状 ◇
前回と比較すると、平均世帯規模は2.9人から2.8人へと減少、単独世帯の割合は19.8%から20.0%、核家族の割合は62.5%から64.2%へとそれぞれ上昇し、この5年間に小家族化・核家族化が進んだ。
◇ 親族との居住関係 ◇
[子との居住関係][親との居住関係]
65歳以上の高齢者で子をもつ人の割合は92.7%(前回は92.6%。以下同じ)、18歳以上の子と同居している人の割合は48.1%(52.1%)で前回に比べ低下している。年齢別にみると、男子70-74歳、女子65-69歳で最も同居率が低く、高齢になるほど上昇するが、前回に比べほぼ全年齢層で同居率は低下している。
65歳以上の高齢者の息子との同居率は33.1%(38.0%)で前回に比べ低下し、娘との同居率は14.0%(13.2%)で、前回に比べると娘との同居率はやや増加している。
[その他の親族との関係]
20歳以上で、自分の親が少なくとも1人生存している人は64.4%である。
65歳以上でも、7〜8人に1人程度の13.8%は、親(配偶者の親を含む)が生存している。
20歳以上で、自分の親と同居している割合は男子30.2%、女子19.6%である。年齢別にみると、20-24歳では男女とも80%弱であるが、30-34歳では男子45.4%(39.0%)に対し、女子は33.1%(22.9%)と急減するが、この年齢では男女とも上昇している。
同居率は加齢とともに減少するが、65歳以上でも男子2.9%、女子0.8%が親と同居している。
配偶者の親と同居する割合は、男子4.4%(4.8%)、女子14.7%(16.3%)であり、妻が夫の親と同居する割合は前回よりわずかに低下している。
1960以降の出生年次では、平均きょうだい数は2.40-2.46人程度で推移している。
男子のうち長男の割合は、1960-64年以降の出生年次では65〜70%前後で推移している。また、女子のうち男きょうだいを含まない姉妹のみの女子は、1980-84年生まれでは45.3%まで増加している。
◇ 世帯の継続と発生 ◇
[現世帯主の世帯主歴][世帯員の転入・転出]
現世帯のうち5年前から存在していた「継続世帯」は91.6%(90.5%)、残る8.4%(9.5%)は新たに発生した世帯である。継続世帯は、世帯主が5年前と同一である世帯87.2%(85.4%)と世帯主が交代した世帯4.4%(5.1%)に分けられる。
過去5年間に世帯主が交代した世帯(449世帯、全世帯の4.2%)では、親から世帯主を継承した世帯が40.4%(45.5%)、配偶者から世帯主を引き継いだ世帯が52.2%(44.9%)を占める。
交代時の前世帯主の状態は、同居37.2%、死亡62.8%で、男子の場合、同居が58.5%と多く、女子では79.1%と死亡が多い。
[世帯規模の変化]
継続世帯のうち過去5年間に世帯員の転入があった世帯は19.1%(18.0%)、転出があった世帯は26.1%(26.7%)となっており、全体としては世帯規模が縮小傾向にあることを示唆する。
[家族類型の変化]
継続世帯のうち過去5年間に世帯員が増加した世帯は13.9%(13.7%)、減少した世帯は22.5%(22.0%)であり、平均世帯規模は2.90人から2.78人へ減少した。
継続世帯について5年前との変化をみると、親と子の世帯から夫婦のみの世帯への移行がもっとも多い。
◇ 世帯の形成と拡大 ◇
[親世帯からの離家][結婚]
最初の離家年齢は、男子では1950-54年生まれの20.1歳を底として離家の遅れが進んだが、1960年以降の出生年次では停滞している。女子では1945-49年生まれの21.0歳を底として、それ以降の出生年次では離家の遅れが続いている。
結婚前に離家するか否かについては男女差があり、男子では70%前後が結婚前の離家である。これに対し、女子では半数以上が結婚まで親元にとどまっている。しかし、1970-74年生まれでは40%強まで低下している。高学歴化によって、進学離家、就職離家が拮抗しているが、進学離家の割合は、とくに男子で頭打ちの傾向にある。
[子の出生]
男女とも多くの年齢で未婚割合が上昇し、晩婚化・未婚化が進んでいる。ただし30歳未満の男子と20-24歳の女子では、未婚割合が低下した。
男女とも多くの年齢で同居子がいる割合が低下し、晩産化・少産化が進んでいる。ただし20-34歳の男子と30歳未満の女子では、同居子がいる割合が上昇した。
◇ 世帯の解体と縮小 ◇
[配偶者との死別・離別][子の離家とエンプティ・ネスト]
5年前の配偶関係が有配偶であった者のうち、65歳以上では男子3.1%(3.4%)、女子13.3%(16.7%)が死別へと変化した。夫婦のみの世帯で一方が死亡した場合、約9割は単独世帯に移行している。
5年前に有配偶であった者のうち、離別を経験した男子では夫婦のみの世帯や夫婦と子の世帯から単独世帯への移行が多く15.4%、9.0%(16.9%、12.4%)、女子では夫婦と子の世帯から女親と子の世帯への移行が全体の42.2%(37.5%)を占める。
[高齢者の健康状態と同居相手]
継続世帯では、5年間に夫婦と子の世帯から夫婦のみの世帯へ移行した世帯は12.7%(9.8%)であった。エンプティ・ネスト(空の巣)へ移行する割合は60代世帯主で25%(20%)を超える。
子をもつ人のうち、すべての子と別れて暮らしているエンプティ・ネスト期の人は29.3%(24.5%)である。この5年間にこの状態に移行した人は9.7%(7.5%)であり、年齢別には男子では60-64歳の16.4%(前回は55-59歳で15.1%)、女子では55-59歳の16.2%(14.3%)がもっとも多い。
要介護の高齢者の属する世帯は、単独世帯、夫婦のみ世帯は少なく、その他の世帯が多い。
子と同居している高齢者について、介護の要・不要別に、同居子に離家経験のある者(再同居)の割合をみると、とくに女子では、要介護高齢者のほうが、介護を必要としない高齢者よりも再同居(離家経験者)の割合が11.9ポイント高い。