(1) 研究概要
本研究は,平成14 年度から16 年度まで3 年間実施してきた「「世代とジェンダー」の視点からみた少子高齢社会に関する国際比較研究」プロジェクトを踏まえた上で,新たにパネル調査の実施や政策効果に関する研究を行う総合的研究を企図したものである。日本を含む国際比較可能なマクロ・ミクロ両データの分析に基づいて,結婚・同棲などを含む男女のパートナー関係,子育て関係などの先進国間の共通性と日本的特徴を把握し,これによって,日本における未婚化・少子化の要因分析と政策提言に資することを目的とする。(2) 研究方法・研究計画
本研究は,個人を単位とした調査の実施・分析(ミクロ・データ)と各国の法制度改革時期や行政統計データを含むマクロ・データ・ベースの構築という,大きな2 つの柱からなる。前者のミクロ・データについてはドイツのマックスプランク人口研究所が中心となり質問検討委員会が構成され,比較可能な共通のフレームで実査を行う。後者は,フランス国立人口研究所が中心となってデータベース委員会が構成され,マクロ・データに関する基本方針が決定される。これら2 つの委員会の方針に従って,各参加国は調査実施とマクロ・データの提供を行う。さらに,ミクロ班で設定されたテーマのもと,ミクロ・データ,マクロ・データを用いて多層的な国際比較研究を行う。19 年度は,具体的に以下の活動を行う(プロジェクト第3 年度目)。(3) 研究者の組織
(1) 研究目的
平成18 年6 月に公表された平成17 年の合計特殊出生率は1.26 と極めて低い水準を記録した。こうした少子化傾向の進展を背景として,本研究においては,今後の少子化対策を効率的に推進することに資するために,1)少子化対策要因の出生率におよぼす影響評価の研究,2)地域の少子化対策の効果に関する研究,ならびに3)少子化の見通しと少子化施策に関する有識者ならびに自治体政策担当者の調査という三つの柱から研究を実施してきている。(2) 研究計画
(3) 研究組織の構成
(1) 研究目的
少子高齢化が進み人口減少が始まった現在,社会経済施策立案に不可欠な将来推計人口の重要性はかつてない高まりを見せている。しかしながら,前例のない少子化,長寿化は人口動態の見通しをきわめて困難なものとしている。本研究では,こうした中で社会的な要請に応え得る科学的な将来推計の在り方を再検討し,手法および人口の実態の把握と見通しの策定(仮定設定)の両面から推計システムを再構築することを目的とする。(2) 研究計画
本研究においては,第一に,人口推計手法の枠組みとして従来から最も広く用いられているコーホート要因法の再検討を行い,新たな手法としての確率推計手法やシミュレーション技法等の有効性を検討する。第二に人口動態率(出生率,死亡率および移動率)の将来推計に関する先端的な手法について国際的な議論を踏まえ,推計手法および将来の動向に関する理論について,従来の方法・理論との比較,有効性と限界の検証等を行う。第三に人口状況の実態の測定と分析,出生,死亡,国際人口移動の見通し策定に関する科学的方法論について検討し,わが国ならびに諸外国の人口状況と動向の国際的,横断的把握,データ集積およびデータベース化を行い,上記において開発されたモデル,手法を適用することにより,人口動態率の今後の見通しに関する把握と提言を行う。(3) 研究組織の構成
(1) 研究目的
2000 年代に入って東アジアの高度経済国・地域は急激な出生率低下を経験し,2004 年の合計出生率は日本が1.29,韓国が1.16,台湾が1.18 となった。このうち韓国・台湾の出生率は,ヨーロッパでも匹敵する国が稀なほど極端に低い水準である。このような低出生率の重要な決定因として,男女労働者の働き方の影響を分析する。たとえば欧米に比べ長い労働時間は,男性の家事・育児参加を阻害し,伝統的性役割意識を保存する方向に作用しているものと思われる。日本の長期不況や韓国の経済危機は,多くの若年労働者の経済的自立を挫折させ,また家計の将来に対する不安感を増幅し,結婚・出産意欲を減退させたと推測される。出産・育児休暇,家族看護休暇,フレックスタイム制度等のファミリーフレンドリー施策の導入の遅れも,東アジアの出生率低下を加速させたと考えられる。良質な保育サービス供給の不足も,妻の就業と出産・育児の両立を阻害し,やはり少少子化をもたらしたと思われる。本研究は,こうした働き方に関する諸要因が東アジアの出生率低下に与えた影響を分析する。(2) 研究計画
本研究では,働き方に関する諸要因が出生率に与える影響を,文献研究および専門家インタビュー,マクロ・データ分析,マイクロ・データ分析の各段階を踏んで分析を進める。そのような分析を通じて,労働時間や勤務形態のフレキシビリティー,家庭内分業の実態,若年労働者の経済的自立度の将来の見通し,企業のファミリーフレンドリー施策の導入努力,地域の保育サービス供給の量といった諸側面が,どのように結婚率・出生率に影響するかを定量的に調べることを目的とする。それぞれの側面における改善がどの程度の出生促進効果を持つかの見極めを通じて,政策の優先順位等に関わる政策提言が得られる。現在まであまりはかばかしい成果が得られていない日本の出生促進策を考える上でも,日本より急激に出生率が低下している韓国・台湾との比較研究は不可欠である。(3) 研究組織の構成
(1) 研究目的
社会保障制度をとりまく環境は過去40 年間で大きく変化した。今日では,少子高齢化や雇用構造の変化が進む中で社会保障制度の持続可能性を高めることが緊急の課題となっている。家族の生活保障機能は年々低下し,国際競争にさらされている企業は生き残りのためにコスト削減に努め,職域福祉の役割も変化せざるを得ない。こうした状況の中で社会保障制度の再構築に必要なのは現行制度の単なるスリム化ではなく,合理化である。本研究は,@制度横断的に社会保障の機能を分析し,家族形態や就労形態の変化に対応した社会保障の機能を考察するとともに,Aシミュレーション分析を通じて,政策の選択肢が社会保障の機能に与える影響を評価することを目的としている。(2) 研究計画
2 年目である平成19 年度は,介護保険制度の機能についての定量的な評価分析や,現物給付と現金給付のバランスに関する分析,高齢期のリスクを確率的に記述するモデルを用いたシミュレーション分析や,女性の健康状態とライフサイクル及び就労行動を基盤とした所得・貯蓄等の女性を取り巻く経済的状況の変遷との因果関係を実証的に検証する。加えて,有識者に対してヒアリングを行い,シミュレーションモデルを作成する。(3) 研究組織の構成
(4) 研究成果の公表
本年度の研究成果として,総括・分担研究報告書をとりまとめる予定である。
(1) 研究目的
本研究は,多様な構造を持つ現在の日本の貧困・低所得の実態を時系列に把握し,その増加の要因分析を行うとともに,低所得者のニーズとそれに対する社会保障のあり方について給付と負担の両面から考察するものである。貧困の定義には,従来の所得・消費を始めとする一次元・一時点の指標に基づいたもののみならず,資産の状況や社会的包摂・相対的剥奪など多次元の事象を考慮し,また,それらのダイナミックな動きを観察することにより貧困の動態的分析を行う。そのために,パネル・データの活用及び構築も視野にいれる。(2) 研究計画
本研究は3 カ年計画で行われる。研究では,以下にあげる3 つのトピックごとに研究チームを立ち上げ,独自の分析を進めるとともに,制度横断的な検討を行うため,合同の研究会を行う。日本における低所得者の把握(貧困率など)は,既存の大規模調査(厚生労働省「国民生活基礎調査」,「所得再分配調査」,総務省「全国消費実態調査」など)が用いられることが多い。これらは,全国規模でサンプル数も多いことから利点もあるものの,低所得者の生活実態を把握するには不十分である。その理由は,低所得者がそもそもサンプルから除外されている可能性があること,所得・消費などの項目は詳細に調べているものの,物品的剥奪や社会的排除など,生活実態に関する項目が少ないことである。そのため,低所得者に関しては独自の調査を行うことが望ましい。主任研究者は過去の厚生科研費の研究にて,小規模のデータの構築を行ってきた。これらデータの分析から知見の蓄積はあるものの,調査の問題点なども明らかになってきている。本研究では,既存の調査の利点・欠点を洗い出し,また,厚生労働省の縦断調査や既存社会調査(社会保障研究所「掛川調査」など)の再分析も視野に含めながら,必要であれば独自の調査を行う。そして,低所得層として,どのような属性の人々が浮かび上がるのか,また,彼らがどのように現在社会保障制度と接点をもっているのかを明らかにする。研究の1 年目は,既存研究のレビュー,2年目,3 年目は調査の実施と分析を行う。
現行の社会保障制度には,様々な低所得者措置が盛り込まれている。しかし,国民年金を例にとると,減免制度が用意されているにもかかわらず未納問題は依然として深刻である。近年の減免制度の改正についても,どれほどの効果があったのか実証研究はまだなされていない。本研究では,このような問題をトピック的にいくつか選出し,それらの分析を行う。研究の1 年目は,研究メンバーの選定(主要メンバーは分担研究者)と研究会の立ち上げ,トピックの選出,現状の実態の共有を行う。2 年目以降は,それぞれのメンバーによって分析が行われる。
日本の低所得者に対する社会保障制度の中でも,もっとも研究が進んでいるのが生活保護制度である。また,児童扶養手当を始め,母子世帯に対する施策にも多くの質的分析がなされている。しかし,現在,もっとも改革が推し進められているのもこの2 制度である。本研究では,改革が進む中で,当事者がどのように変わっていくか,インタビュー調査などの手法をもって検討するものである。例えば,母子世帯の母親は,2002 年の児童扶養手当の改革を受けて,どのように生活が変化したのか,具体例をあげて検討することとする。
(3) 研究組織の構成
(4) 研究結果の公表予定
本研究の成果は,報告書として厚生労働省に提出するとともに,関係団体および研究者に配布,および,学会,学術雑誌への投稿等などにて普及を努めるものとする。
(1) 研究目的
持続可能な社会保障制度を構築するためには,社会経済の変化に応じて絶えず社会保障の給付と負担の在り方を検討していく必要がある。2008 年から始まる高齢者医療制度の財源の1/2 は公費となること,2009 年までに基礎年金の国庫負担を1/2 に引き上げることが予定されており,社会保障財政における税負担の割合が高まる可能性がある今日,社会保障の給付と負担の在り方を社会保険料と税に着目して検討することは,緊急の課題である。(2) 研究計画
本研究では,研究目的で示した問題意識のもとに,所得・消費・資産の実態把握のために「所得再分配調査」「国民生活基礎調査」等の使用申請に基づく再集計を行い,人々のライフサイクルに着目した実証分析を行う。(3) 研究組織の構成
(4) 研究成果の公表
本年度の研究成果として,総括・分担研究報告書をとりまとめるとともに,社人研ディスカッションペーパー,学術雑誌等への投稿およびワークショップ等により成果の普及に努める。
(1) 研究の目的
医療・介護制度を持続可能なものとするためには,適正な資源配分を確保する必要がある。近年の介護保険,健康保険,医療,の各法の改正により医療・介護提供体制改革の端緒が開かれた。しかし,改革を実効的にするには,その成果について継続的に実証的検証を行い,その結果をその後の改革に活かす「PDCA サイクル」を確立する必要がある。(2) 研究計画
研究にあたっては,医療・介護関連諸制度の改革が進捗していることもあり,それらの改革に対して研究成果が提供できるように研究を進めていく。分析の対象となる主たる課題は次のとおりである。
1)平成17 年10 月および平成18 年10 月に実施された介護施設給付と療養病床入院患者の負担引き上げ等の効果の分析
2)急性期病等の平均在院日数規定要因と影響の大きさに関する分析
3)脳卒中治療における医療・介護連携の効果の分析
1)医療連携実施状況の実態把握
2)医療連携実施機関等の平均在院日数の変化に関する分析
3)療養病床再編による患者の医療・介護受給パターンの変容に関する分析
4)医療・介護のサービス利用パターンに関する実態調査・分析
5)医療・介護サービス提供の地理的範囲・提供内容範囲に関する実態調査・分析
これらの分析課題の分析内容にあわせてデータを準備・作成していく。具体的には,『国民健康保険の実態』(国民健康保険中央会)及び介護関連データ(『介護サービス施設・事業所調査』の再集計データ含む)などの既存統計,『病院報告』,『医療施設調査』,『患者調査』,『介護サービス施設・事業所調査』などの既存統計の個票データ,保険者や医療機関に作成を依頼する個票データ,ヒアリング調査などを,疫学的研究の倫理指針や個人情報保護にかかる法令を遵守して,入手し使用する。
(3) 研究組織の構成
(1) 研究目的
本研究は,@全国データに基づくケアマネジメントの現状分析(介護保険制度改正前との比較を含む),Aパネル・データ(生活機能/介護/医療/健診に関する包括的データ)に基づく介護予防の総合的効果評価,B効果的な介護予防サービスの在り方の検証,C介護予防の実効性を高めるための地域包括支援センターの在り方の検証,を通じて,今後の地域包括ケアシステムの在り方に関する提言を行うことを目的とする。(2) 研究計画
制度改正3 年後の見直しの議論に資するためには,平成19 年度には検証結果をまとめておく必要があるため,本研究は2 年計画とした。初年度である平成18 年度は,1)全国認定・給付データによる要介護度の自然歴の地域差分析,2)モデル地区の包括的パネル・データに基づく高齢者の生活機能や疾病構造などの実態解明,3)運動機能測定を通じた高齢者の歩行パターンや転倒リスク要因の解明,4)摂食機能に応じた食形態の開発と提供効果評価,5)ケアプランの個別事例検討による現在のケアマネジメントの課題の解明,6)住民を巻き込んだ多職種協働のモデル試行による最適な意思決定プロセスの在り方の検証,7)兵庫県但馬地区やカナダオンタリオ州トロント市などの地域ケアの先行事例の検証などを実施した。(3) 研究組織の構成
(4) 研究成果の公表
本研究の成果は,報告書としてとりまとめて厚生労働省に提出するとともに,関係団体および研究者に配布する。なお,本研究の成果の一部は,『海外社会保障研究』第162 号〈特集:地域包括ケアシステムをめぐる国際的動向〉において公表する予定である。
(1) 研究の目的
本調査の目的は,社会福祉基礎構造改革の理念である,障害者がその障害の種類や程度,また年齢や世帯状況,地域の違いにかかわらず,個人が尊厳をもって地域社会で安心した生活がおくれるようになるために必要な施策へとつなぐ基礎データを得ることである。そのために,独自の調査を実施して,既存の調査では得ることの出来ない障害者の生活実態を明らかにするとともに,それを基礎データとして,障害者の自立支援にはなにが重要であるかを,総合的学際的に研究する。生活者としての障害者を明らかにするという意味は,障害者の定義を手帳保持者などの狭い範囲に限定することなく広く捉えることと,障害者の暮らしの実態に着目して,障害者を個人だけでなく世帯の一員として捉えること,そして,経済的な自立と身体的な自立を,通院やサービス利用の実態と生活時間から観察しようとするものである。このような障害者をミクロで観察する社会調査はいままで希少で,それも自治体などの地域的区分の中を無作為に調査する試みは初めてと言って過言でない。平成17 年度18 年度に2 度の実地調査「障害者生活実態調査」を実施したが,最終年にあたる当該年度は,調査結果のさらなる分析と,結果を基礎とした議論を研究の柱としていく。学際的な研究にまで広げた,障害者の所得保障と自立支援のあり方を検討する。(2) 研究計画
本調査研究は全体を3 カ年計画で行う計画である。初年度と次年度に調査を実施しそれぞれの調査の分析を進める。また,最終年度に調査分析結果からの考察に併せて,学際的な,障害者自立支援について考察し,3 年間の研究成果を総合的にまとめることとする。(3) 研究組織の構成
(1) 研究目的
厚生労働省は国民生活に関する諸施策の策定に必要な情報収集のために,政府統計初のパネル調査(21 世紀出生児縦断調査,成年者縦断調査,中高年者縦断調査)を実施し,従来の横断調査とは異なる因果関係に着目した要因の把握を目指している。しかし,パネル調査はデータ管理法や分析方法において横断調査とは異なる。本研究の目的は,パネル型データの有効で実際的な管理法と統計分析手法とを融合したシステムを検討・開発し,21 世紀縦断調査に適用することによって,年々蓄積されるデータを適切に管理し,また有効な分析結果を導くことである。(2) 研究計画
本研究は平成18,19 年度の2 ヶ年で行うものとし,主として初年度(平成18 年度)は,調査事例および分析法のサーベイを進め,情報ベースとして閲覧システムを整備し,標本設計ならびに統計的分析手法に関する検討を進め,さらに標本の脱落・復活や移動等のデータの特性に関する検討を進める。また,出生児調査,成年者調査の主要な事項(出生児の成長,結婚・出生の意識・意欲と行動,家事育児・就業,健康リスク,地域)について,先行研究レビューを行い統計的分析の基礎となるデータ・変数等の整備を行い,基礎的分析を行った。(3) 研究組織の構成