(1) 研究目的
本研究は,@医療等の供給体制の全体ビジョンと政策課題を明らかにし,A地域包括ケアの推進など医療等の総合化・効率化の実現を図るための政策手段につき検討を行い,B理論と実証に裏づけられた具体的な政策提言を行うことを目的とする。(2) 研究計画
本研究は3 年計画であり,1 年目である平成16 年度は,医療等の供給体制に係るグランドデザインを検討するとともに,プライマリ・ケアをめぐる問題など主要な個別課題の理論的・実証的検討に着手した。2 年目である平成17 年度は,地域包括ケアや家庭医の実践などで先駆的な取組みを行っている地域の実態調査等を行うとともに,医療の質と効率性の向上や政策誘導手法等に関する理論的・実証的研究を行った。最終年である平成18 年度は,個別課題の検討を深化させたほか,医師と患者の関係など平成16・17 年度に行うことができなかった論点につき研究を進めるとともに,3 年間の研究を再構成し,各論点につき理想と現状のギャップを埋める具体的な方策と政策提言等をとりまとめた。(3) 研究実施状況
・研究会(4) 研究組織の構成
(5) 研究成果の公表
本研究の成果は,『平成16 〜 18 年度総合研究報告書(平成18 年度総括・分担研究報告を含む)』としてとりまとめたほか,以下の刊行物を発表した。
・刊行物
(1) 研究目的
本研究は,先進諸国等における国際人口移動と移動者の社会的統合の実態・政策,それに伴って必要となる社会保障政策との連携に関する分析を行い,各国の実態・政策を比較検討し,まもなく人口減少に直面するわが国における国際人口移動政策と社会保障政策の連携の可能性を検討し,政策的含意を導出することを目的とする。(2) 研究計画
平成16 年度から3 年間にわたり,@先進諸国等における国際人口移動と移動者の社会的統合・社会保障制度利用(医療・労働保険,年金等)についての実態・政策に関する資料収集と分析,A先進諸国等における国際人口移動政策と社会保障政策の連携に関する資料収集と分析,B以上を踏まえた,わが国における国際人口移動と移動者の社会的統合・社会保障制度利用についての実態・政策,国際人口移動政策と社会保障政策との連携に関する比較分析と政策的含意導出の三つを目的として実施する。(3) 研究実施状況
・研究会(4) 研究組織の構成
(5) 研究成果の公表
本年度の研究成果は,平成18 年度総括研究報告書としてとりまとめたほか,以下のものがある。
・論文発表
(1) 研究目的
本研究は,我が国において「社会的排除と包摂(ソーシャル・インクルージョン)」概念を確立し,社会保障制度の企画立案に係る政策評価指標として活用する可能性を探ることを目的としている。研究では(1)諸外国の経験を資料・文献・データから複眼的に捉えて整理するとともに,(2)我が国の社会保障制度の機能を「社会的包摂」の観点から評価し,政策提言を行うものである。具体的には以下の作業を行った。欧米における既存研究を参考としながら「社会的包摂−排除」の概念を明らかにし,日本の実状に合った社会的排除の指標を作成する。また,作成された指標を基に,質問紙を設計し,大規模調査を行い,社会的排除と所得・世帯属性・個人属性・ライフヒストリーなどとの関連を分析する。
既存の大規模統計調査を用いて,社会から排除されていると思われる人々(貧困者,失業者,不安定就労者,障害者など)の状況を定量的に分析する。分析では経済状況を中心に分析するとともに,上記@で作成された社会的排除指標に沿った分析も行う。同時に,公的年金や公的医療保険,生活保護,児童扶養手当等の社会保障制度がこれらの人々に与えている効果(経済的効果だけでなくこれらの人々の主観的満足度等を含む)を計測する。
近年蓄積が進んでいる,排除されていると考えられる者(母子世帯・ホームレス等)の社会的包摂の過程を理論・実証の両面から再検討する。
(2) 研究計画・実施状況
平成18 年度は,@平成17 年度,平成18 年度に行われた『社会生活に関する実態調査』の分析,A『所得再分配調査』などを用いた貧困・所得格差の研究,および,B『母子世帯の生活の変化調査』の実施と分析が行われた。(3) 研究会等の開催状況
平成18 年度は,平成17 年度に行われた『社会生活に関する実態調査』(配布数1,600,回収数486)および平成18 年4 月に行われた補完調査(配布数400,回収数98)の分析を行った。分析の結果は,平成18年12 月に行われたワークショップにて報告され,有識者を交えた意見交換がなされた。有識者による意見・コメントを反映した上で,各分担研究者がさらなる分析・修正を加え,平成19 年3 月に最終原稿が確定された。
平成18 年4 〜 5 月 『社会生活に関する実態調査(補完調査)』の実施
平成18 年6 〜 11 月 各分担研究者による分析
平成18 年12 月8 日,11 日 ワークショップ
厚生労働省「所得再分配調査」の個票を使用し,ジニ係数や貧困率などの指標を使用した所得格差・貧困の現状と推移,上昇の要因分析,社会保障制度がこれらに及ぼす影響を分析した。また,ヨーロッパ連合(EU)の社会的排除指標の定義を用いて,日本における社会的排除のレベルをEU 主要国と比較した。
本年度は,被排除者の典型例として母子世帯を研究の対象とし,母子世帯の母親に対する調査票による定量的調査を行った。母子世帯への直接のコンタクトは難しいため,当事者団体8 団体から協力を得て,約2 千通の調査票が配布され,470 通が回収された。この結果は,2 回にわたる報告会によって当事者団体,当事者,自治体関係者,および厚生労働省担当課などにフィードバックされた。
平成18 年4 〜 6 月 母子世帯の当事者団体へのコンタクト,協力依頼
平成18 年8 月下旬〜 9 月 「母子世帯の生活の変化調査」実施
平成18 年11 月27 日 第一回報告会(東京)
平成18 年12 月1 日 第二回報告会(大阪)
(4) 研究組織の構成
(5) 研究結果の公表
研究結果の一部は,平成19 年6 月に『季刊社会保障研究』Vol. 43 No. 1 に公表された。また,他の研究成果の一部については,厚生労働省,関係団体などに配布されている。
(1) 研究目的
平成19 年度を目処に税制の抜本的改革が予定されている中,平成17 年度税制改正の答申にあるように,経済社会の構造変化を踏まえて税・社会保障負担のあり方を検討する必要性がある。したがって,本研究は,消費税等の税と社会保険料の転嫁・帰着,国民負担率と経済活動の関係,税と保険料の役割分担,家族政策における手当と税制の関係等に関する実証分析と制度分析を行い,これらの成果を合わせて税制と社会保障の望ましい在り方について研究することを目的とする。(2) 研究計画
平成18 年度は,マクロ的な視点から,社会保障財源と経済成長率との関係,基礎年金と完全比例年金の比較,市町村合併による福祉費用等への影響を分析し,「賃金構造基本調査」の公表データを利用して賃金・雇用に対する帰着の実証分析を行った。とくに,消費税と社会保険料それぞれの変化に対する転嫁と帰着については,中小企業に対するアンケート調査を実施した。また,社会保障における税財源の必要性と効果を分析するために,高齢者福祉と障害者福祉の税財源の費用便益分析と国民負担率と日本経済との関連性に関する考察を行った。さらに,高齢者福祉と障害者福祉における税財源の活用の根拠を費用便益分析により検討した。(3) 研究実施状況
・研究会等(4) 研究組織の構成
(5) 研究成果の公表
・刊行物
(1) 研究目的
本研究は,平成14 年度から16 年度まで3 年間実施してきた「「世代とジェンダー」の視点からみた少子高齢社会に関する国際比較研究」プロジェクトを踏まえた上で,新たにパネル調査の実施や政策効果に関する研究を行う総合的研究を企図したものである。日本を含む国際比較可能なマクロ・ミクロ両データの分析に基づいて,結婚・同棲などを含む男女のパートナー関係,子育て関係などの先進国間の共通性と日本的特徴を把握し,これによって,日本における未婚化・少子化の要因分析と政策提言に資することを目的とする。
(2) 研究方法・実施状況
日本では少子化の急速な進行にともない,年金や医療といった社会保障制度の根幹が揺るぎつつあり,少子化の背景を明らかにし,実効性のある少子化対策を行うことが重要な政策課題となっている。少子化は程度の差こそあれ先進諸国で共通して見られる現象であり,各国とも少子化対策を実施しており,他の先進国との比較は日本の少子化対策を考える上で有益である。また,日本をはじめとする先進諸国における少子化は家族の変化(世代関係・ジェンダー関係)と密接に関連しており,社会経済に加え家族のあり方の変化という視点からも,少子化問題を考える必要がある。現在,先進諸国の少子化の要因と政策的対応を国際比較するために,「結婚と家族に関する国際比較研究会」を組織し,国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)人口部が企画・実施している国際研究プロジェクト「世代とジェンダー・プロジェクト(GGP)」に参加している。本プロジェクトは,国連人口部が企画したこの国際共同プロジェクトの中核部分であるパネル調査(「世代とジェンダーに関するパネル調査(GGS)」)を日本でも実施し,そこから得られる少子化のミクロ的側面に関するパネル・データと雇用・労働政策や家族・子育て支援政策といった少子化のマクロ的側面に関するコンテキスト・データを連結させて因果関係を分析する新手法によって,未婚化や晩婚化といったパートナー形成(ジェンダー関係)と少子化(次世代育成・世代関係)の日本的特徴を明らかにし,これと諸政策との関連を他の先進国との比較を通じて検討する。この方法により,先進国との比較という広い視野から,日本における未婚化・少子分析と少子化対策についての政策提言を行うことを目標とする。(3) 研究者の組織
(1) 研究目的
我が国の近年の出生率低下が,晩婚化・未婚化だけでなく,1960 年代以降に生まれた世代の夫婦出生力低下によっても引き起こされていることが明らかになった。この出生率低下に現れた夫婦の生む子ども数の減少は,今後の日本人口の減少とその経済・社会保障分野に対して極めて強い影響を及ぼすことが懸念されている。(2) 研究計画
本研究事業では,少子化関連施策の効果を人口学,社会学,経済学などの見地から評価研究を行い,今後の少子化対策のあり方について施策提言をすることを目的として以下の3 つのテーマから研究を実施した。
マクロ計量経済モデルにより,少子化対策要因ならびに家族・労働政策要因である,保育需要に対する施策の拡大,女性就業の制約条件の改善による育児コストの低減等の施策を通じ出生率にどのような効果を及ぼすかを測定評価する。
平成17 年度は,基本モデルを開発し,政策効果測定の手法を確立する。あわせて,女性就業にともなう機会費用の発生や税収におよぼす影響等の評価結果を提示する。平成18 年度においては,政策効果の測定とともに影響の評価に発展させる。
自治体において取り組まれる少子化対策や地域の様々な環境条件との組み合わせで,自治体単位の出生率がどのように変化し,地域的差異を生じているのかを分析し,少子化対策の効果を評価してそのあり方を提言する。
平成17 年度の研究では,1990 年から2000 年の地域出生率の分析を主眼に行ったが,平成18 年度においては2005 年国勢調査の結果を受け,施策展開後の自治体の出生率の規定要因を検証した。
有識者の少子化対策に対する評価ならびに少子化の見通しに関する意見をデルファイ調査によって把握し,少子化対策改善のための基礎資料を得た。このデータは,将来人口推計(平成18 年12 月推計)に寄与するための基礎資料として活用する。
平成17 年度は,調査票設計と第一回調査を実施・分析し,平成18 年度に第二回調査を実施した。
(3) 研究実施状況
以下に掲げる研究課題別に研究会を開催し,平成18 年度研究成果をとりまとめた。
1)女性の就業形態を軸としたモデルに基づく少子化対策効果の分析
2)有配偶女子労働力率の変化と結婚・出産の機会費用:マクロデータによる試算
1)Birth control と妻の結婚後・出産後の就業行動の関連
2)不妊治療支援についての一考察:家族属性の視点から
3)コーホート分析による3 効果の推定について
4)結婚・出産タイミングの規定要因分析
5)育児休業制度が女性労働者雇用に与える影響の分析
1)都道府県別にみた出生率変化の要因分析
2)若い夫婦における出生意欲の変化の要因分析,少子化に関する6 自治体調査の比較を通して
3)保育負担感と保育ニーズの研究
(1) 研究目的
少子高齢化が進み人口減少が始まった現在,社会経済施策立案に不可欠な将来推計人口の重要性はかつてない高まりを見せている。しかしながら,前例のない少子化,長寿化は人口動態の見通しをきわめて困難なものとしている。本研究では,こうした中で社会的な要請に応え得る科学的な将来推計の在り方を再検討し,手法および人口の実態の把握と見通しの策定(仮定設定)の両面から将来人口推計について総合的に研究することを目的とする。(2) 研究計画
本研究においては,第一に人口推計手法の枠組みとして従来から最も広く用いられているコーホート要因法の再検討を行い,新たな手法としての確率推計手法やシミュレーション技法等の有効性を検討する。第二に人口動態率(出生率,死亡率および移動率)の将来推計に関する先端的な手法について国際的な議論を踏まえ,推計手法および将来の動向に関する理論について,従来の方法・理論との比較,有効性と限界の検証等を行う。第三に人口状況の実態の測定と分析,出生,死亡,国際人口移動の見通し策定に関する科学的方法論について検討し,わが国ならびに諸外国の人口状況と動向の国際的,横断的把握,データ集積およびデータベース化を行い,上記において開発されたモデル,手法を適用することにより,人口動態率の今後の見通しに関する把握と提言を行う。(3) 研究実施状況
本研究においては,第一に公的将来推計人口策定の理論・モデル・手法の枠組みの再検討を行った。すなわち,コーホート要因法の再検討をおこない,これに代わる,あるいはこれを補全する新たな手法としてとくに確率推計手法の有効性を検討した。本研究では,こうした手法を詳細に検討し,わが国公的推計への適用可能性を検証し,有効性の確認された方法について,適用の際の技術的課題について検討し,実際の導入・開発作業を行った。具体的には,推計の枠組みについて,わが国の出生における女性の国籍別の行動の違い等の構造的影響について評価を行い,これを反映する枠組みを開発して応用が成された。(4) 研究組織の構成
(1) 研究目的
2000 年代に入って東アジアの高度経済国・地域は急激な出生率低下を経験し,2004 年の合計出生率は日本が1.29,韓国が1.16,台湾が1.18 となった。このうち韓国・台湾の出生率は,ヨーロッパでも匹敵する国が稀なほど極端に低い水準である。このような低出生率の重要な決定因として,男女労働者の働き方の影響を分析する。たとえば欧米に比べ長い労働時間は,男性の家事・育児参加を阻害し,伝統的性役割意識を保存する方向に作用しているものと思われる。日本の長期不況や韓国の経済危機は,多くの若年労働者の経済的自立を挫折させ,また家計の将来に対する不安感を増幅し,結婚・出産意欲を減退させたと推測される。出産・育児休暇,家族看護休暇,フレックスタイム制度等のファミリーフレンドリー施策の導入の遅れも,東アジアの出生率低下を加速させたと考えられる。良質な保育サービス供給の不足も,妻の就業と出産・育児の両立を阻害し,やはり少子化をもたらしたと思われる。本研究は,こうした働き方に関する諸要因が東アジアの出生率低下に与えた影響を分析する。(2) 研究計画・実施状況
本研究では,働き方に関する諸要因が出生率に与える影響を,文献研究および専門家インタビュー,マクロ・データ分析,マイクロ・データ分析の各段階を踏んで分析を進める。そのような分析を通じて,労働時間や勤務形態のフレキシビリティー,家庭内分業の実態,若年労働者の経済的自立度の将来の見通し,企業のファミリーフレンドリー施策の導入努力,地域の保育サービス供給の量といった諸側面が,どのように結婚率・出生率に影響するかを定量的に調べることを目的とする。それぞれの側面における改善がどの程度の出生促進効果を持つかの見極めを通じて,政策の優先順位等に関わる政策提言が得られる。現在まであまりはかばかしい成果が得られていない日本の出生促進策を考える上でも,日本より急激に出生率が低下している韓国・台湾との比較研究は不可欠である。
本研究は,こうした働き方に関する諸要因が東アジアの出生率低下に与えた影響を,文献研究および専門家インタビュー,マクロ・データ分析,マイクロ・データ分析の各段階を踏んで分析する。第1 年目の平成18年度は文献研究および専門家インタビューを中心に実施し,韓国については同年に発表された政府の「低出産・高齢化対策基本計画」(セロマジ・プラン)について分析し,また翻訳を研究報告書に含めた。
(3) 研究組織の構成
(4) 研究結果の公表
本年度の研究成果は,平成18 年度総括研究報告書として取りまとめた。各研究者が発表した成果は以下の 通りである。
Suzuki, Toru, “On the Difference between TFR and Parity Progression Measure of Fertility,” The Japanese Journal of Population, Vol. 5, No. 1, pp. 12-18, 2007.
Suzuki, Toru, “Causes of Lowest-Low Fertility and Ineffectiveness of Governmental Interventions in Japan and Korea,” Paper prepared for International Seminar at Korea Institute for Health and Social Affairs, 2006.
鈴木 透「出生力の指標理論」第79 回日本社会学会大会,立命館大学,2006 年10 月28 日
Kojima, Hiroshi, “Recent Developments in Family and International Migration Policies in Japan: Population Policy Implication for the Republic of Korea,” Paper prepared for International Seminar at Korea Institute for Health and Social Affairs, 2006.
伊藤正一「中国の人口移動― 1990 年代後半を中心に」,大阪学院大学『経済論集』第20 巻第1・2 号,2006 年6 月
(1) 研究目的
社会保障制度をとりまく環境は過去40 年間で大きく変化した。今日では,少子高齢化や雇用構造の変化が進む中で社会保障制度の持続可能性を高めることが緊急の課題となっている。家族の生活保障機能は年々低下し,国際競争にさらされている企業は生き残りのためにコスト削減に努め,職域福祉の役割も変化せざるを得ない。こうした状況の中で社会保障制度の再構築に必要なのは現行制度の単なるスリム化ではなく,合理化である。本研究は,@制度横断的に社会保障の機能を分析し,家族形態や就労形態の変化に対応した社会保障の機能を考察するとともに,Aシミュレーション分析を通じて,政策の選択肢が社会保障の機能に与える影響を評価することを目的としている。(2) 研究計画
1 年目である平成18 年度は,(1)社会保障の機能に関する研究として,先進各国との比較を通じて,社会保障の各種機能について,個別制度ごとに検討を行うと同時に,制度横断的な検討を行った。また,介護保険導入前後の介護を理由とする離職の動向や,有配偶女性の就業とそれによる所得が家計所得の分配に与える影響についての統計分析を行った。また,(2)社会保障の機能に関するシミュレーション分析として,給付算定方法の違いが再分配所得に与える影響,年金支給開始年齢の引上げが労働供給や厚生に与える影響,介護リスクに対して介護保険と基礎年金が果たしている機能,非正規雇用の拡大が所得格差に与える影響といったことに関するシミュレーション分析を行った。そして,この制度の持続条件・安定条件を割り出すための項目とその選択肢の案を作成・改善した。(3) 研究実施状況
・研究会等(4) 研究組織の構成
(5) 研究成果の公表
本事業の研究成果の一部は『海外社会保障研究』第157 号に発表した。また,本年度の研究成果として,総 括・分担研究報告書をとりまとめた。
(1) 研究目的
本研究は,@全国データに基づくケアマネジメントの現状分析(介護保険制度改正前との比較を含む),Aパネル・データ(生活機能/介護/医療/健診に関する包括的データ)に基づく介護予防の総合的効果評価,B効果的な介護予防サービスの在り方の検証,C介護予防の実効性を高めるための地域包括支援センターの在り方の検証,を通じて,今後の地域包括ケアシステムの在り方に関する提言を行うことを目的とする。(2) 研究計画
制度改正3 年後の見直しの議論に資するためには,平成19 年度には検証結果をまとめておく必要があるため,本研究は2 年計画とした。初年度である平成18 年度は,1)全国認定・給付データによる要介護度の自然歴の地域差分析,2)モデル地区の包括的パネル・データに基づく高齢者の生活機能や疾病構造などの実態解明,3)運動機能測定を通じた高齢者の歩行パターンや転倒リスク要因の解明,4)摂食機能に応じた食形態の開発と提供効果評価,5)ケアプランの個別事例検討による現在のケアマネジメントの課題の解明,6)住民を巻き込んだ多職種協働のモデル試行による最適な意思決定プロセスの在り方の検証,7)兵庫県但馬地区やカナダオンタリオ州トロント市などの地域ケアの先行事例の検証などを実施した。(3) 研究実施状況
平成18 年度は,まず,主任・分担研究者間で,研究方法・内容に関する合意形成を行った上で,それに沿う形で,各分担研究者および研究協力者が,主任研究者と相談しながら研究を進める形とした。また,本年度の研究成果を総括研究会にて報告し,総合討論を行った(平成19 年2 月13 日)。なお,本研究では,データベース構築(全国およびモデル地区)および分析業務が重要な位置づけとなっていることから,データ提供元である厚生労働省や松江市介護保険課と頻繁に打合せを実施した。また,制度改正への示唆を検討するため,モデルとなる地区の活動状況のヒアリング(カナダトロント市ほか)も併せて実施した。(4) 研究組織の構成
(5) 研究成果の公表
本研究の成果は,報告書としてとりまとめて厚生労働省に提出するとともに,関係団体および研究者に配布した。なお,平成18 年度の研究成果は以下の通りである。
・刊行物
(1)川越雅弘「介護予防元年を振り返って」『公衆衛生情報みやぎ』No.362,pp.3-4(2006)
(2)備酒伸彦,山本大誠,川越雅弘「中高年者と大学生の抱く高齢者像―生涯学習に参加する中高年者と文系大学生を対象とした調査―」『神戸学院総合リハビリテーション研究』Vol.2 No.1,pp.83-90(2007)
(3) 川越雅弘「介護予防効果評価システムの開発」『総合リハビリテーション』Vol.34 No.11,pp.1027-1033(2006)
(4)川越雅弘「多様な機能・役割が期待される地域ケアセンター―カナダ・トロント市における視察から―」『週刊社会保障』No.2395,pp.60-61(2006)
(1)納富祥子,黒田留美子,川越雅弘他「適切な食形態の選択が高齢者の栄養状態等に及ぼす影響について(第1 報)」第12 回日本摂食・嚥下リハビリテーション学会学術大会,236,2006
平成18年度総括研究報告書PDF版全文はここから圧縮ファイル(ZIP)でダウンロードしていただけます。
(1) 研究の目的本調査の目的は,社会福祉基礎構造改革の理念である,障害者がその障害の種類や程度,また年齢や世帯状況,地域の違いにかかわらず,個人が人として尊厳をもって地域社会で安心した生活がおくれるようになるために必要な支援はなにか,その支援を続けるためにはどのような制度が必要なのかを検討するための基礎データを得ることである。そして,得られたデータを活用し,経済学や社会学等の多分野の研究者と障害者福祉に関する学際的研究の基盤を構築したい。
(2) 研究計画・実施状況
前年度に実施した障害者生活実態調査に改良を加えた調査票を使い静岡県富士市において第2 回障害者生活実態調査を実施した。実地調査においては,障害者の生活実態を収入・消費面と生活時間面から明らかにした。
調査は障害者の生活実態を正確に把握するために,インタビュー調査を中心に行われた。調査結果の概要と家計・雇用・生活時間に関する分析は各分担研究者によってまとめられた。
障害者自立支援法施行後の障害者の経済状況に関する調査は,平成18 年4 月に施行された障害者自立支援法の影響を知るために,日本障害者協会に委託して行った。
その他の研究報告については,次のとおり。障害福祉施策に関する原理的考察では,自立支援法の審議過程を定率負担の導入に至った状況から考察した。知的障害者の定義に関する国際的状況では,米国,ドイツ,フランス,イギリス及びスウェーデンにおいては,共通して,知的障害を法律上単独で定義した例はなかったと結論づけた。しかし,法律以外で,知的障害に着目した定義が置かれている例は存在している。
(3) 研究会等の開催状況
・研究会・実地調査
静岡県富士市において,「第2 回 障害者生活実態調査」実施 平成18 年8 月〜 11 月(4) 研究組織の構成
(5) 研究結果の公表
・刊行物
・学会発表
(1) 研究目的
厚生労働省は国民生活に関する諸施策の策定に必要な情報収集のために,政府統計初のパネル調査(21 世紀出生児縦断調査,成年者縦断調査,中高年者縦断調査)を実施し,従来の横断調査とは異なる因果関係に着目した要因の把握を目指している。しかし,パネル調査はデータ管理法や分析方法において横断調査とは異なる。本研究の目的は,パネル型データの有効で実際的な管理法と統計分析手法とを融合したシステムを検討・開発し,21 世紀縦断調査に適用することによって,年々蓄積されるデータを適切に管理し,また有効な分析結果を導くことである。
(2) 研究計画
本研究は平成18,19 年度の2 ヶ年で行うものとし,主として初年度(平成18 年度)は,調査事例および分析法のサーベイを進め,情報ベースとして閲覧システムを整備し,標本設計ならびに統計的分析手法に関する検討を進め,さらに標本の脱落・復活や移動等のデータの特性に関する検討を進める。また,出生児調査,成年者調査の主要な事項(出生児の成長,結婚・出生の意識・意欲と行動,家事育児・就業,健康リスク,地域)について,先行研究レビューを行い統計的分析の基礎となるデータ・変数等の整備を行い,基礎的分析を行った。第2 年度(平成19 年度)はシステムの検証と確立ならびにシステムを用いた主要事項に関する本格的な統計分析を行う予定である。
(3) 研究実施状況
初年度の研究成果として,欧米中心に調査情報収集を進め,公開用閲覧システムを整備した。また,標本設計,イベントヒストリー手法の基礎ならびにマイクロシミュレーション法を検討し,後者は基礎システムを開発した。その他,得られた知見として,データの基礎特性については,脱落の特徴(父母が低年齢,低所得など)が明らかとなり,また復活が比較的多く重要であること,多数回融合データでは回答者・保育者が母親でないケースが想定外に多いこと,出生児の成長は横断調査結果と合致し,標本特性に問題がないことなどがわかった。分析事例では,第1 子出生遅延と婚前妊娠や就業などとの関係,出生意欲による出生予測の可能性,夫の家事・育児時間が長いことが次の出生を促し,育児の経済的負担では実態と意識で齟齬があり,低所得層で負担感が高いわけではなく,専業主婦,非正規就業,正規雇用の母親では負担感の内容が異なること,再就労は都市で少ないこと,低所得と出生年齢や喫煙の関係などがわかった。これら一連の成果は重要なテーマの基礎を網羅しているため,次年度の統合的応用分析が期待される。自治体のヒアリングにおいても,縦断調査の詳細な分析結果については,次世代育成支援見直し等への示唆を得ることへの期待が高い。(4) 研究組織の構成