・平成12年度社会保障給付費の推計
(1 )推計の方法
本研究所では,毎年我が国の社会保障給付費を推計公表している。社会保障給付費とは,ILO (国際労働機関)が定めた基準に基づき,社会保障や社会福祉等の社会保障制度を通じて,1 年間に国民に給付される金銭またはサービスの合計額である。社会保障給付費は,国全体の社会保障の規模をあらわす数値として,社会保障制度の評価や見直しの際の基本資料となるほか,社会保障の国際比較の基礎データとして活用されている。
「平成12 年度社会保障給付費」は平成14 年12 月13 日に公表した。
(2 )推計結果の概要
@平成12 年度社会保障給付費の概要
以上の「平成12 年度社会保障給付費」については,本研究所のホームページ(https://www.ipss.go.jp/index.html )で公表資料と同じものが掲載され,PDF ファイルでも提供されている。「平成12 年度社会保障給付費」英語版“The Cost of Social Security in Japan FY2000 ”も英語ホームページ(https://www.ipss.go.jp/English/cost00/main.htm )より同様に入手できる。また,『季刊社会保障研究』(第38 巻第4 号)において,「平成12 年度社会保障費?解説と分析?」を担当者(勝又幸子・宮里尚三・佐藤雅代)で執筆した。
また,月刊「厚生」2 月号誌上において,「平成12 年度社会保障給付費について」を担当者(中嶋潤・勝又幸子・宮里尚三・佐藤雅代)連名で執筆した。
平成12 年度社会保障給付費のデータを基に,2000 年度までのデータをOECD 基準に当てはめて再計算した結果をOECD に提出した。
(3 )担当者・社会保障給付費の国際比較研究
動向「国際機関における社会保障費用の国際比較整備の現状‐ILO,OECD,EUROSTAT の動向から‐」として『海外社会保障研究』(第142 号)に勝又が問い合わせの多い国際比較データについての解説をまとめて掲載した。国際比較データではデータの入手が比較的困難なEUROSTAT のデータについて,2002 年12 月26 日より,『ユーロスタット2001 「社会保護支出統計」部分翻訳版』,として研究所ホームページに掲載し利用者に配慮した。
・平成14 年版社会保障統計年報の編纂と刊行
社会保障研究資料第2 号として社会保障統計年報 平成14 年版を編纂し刊行した。平成13 年1 月の省庁再編によりそれまで同資料を編纂・刊行していきた社会保障制度審議会事務局が廃止となったため国立社会保障・人口問題研究所が編集を引き継いだ。本資料は平成15 年3 月に同平成12 ・13 年版が本研究所によって刊行されたが,社会保障調査・研究事業の成果として位置づけられ研究資料番号(社会保障研究資料第2 号ISSN1348-0537 )を付与したのは平成14 年版からであり,今後継続的に本資料の編纂と刊行を行い,社会保障研究の基礎資料として役立てる。
国立社会保障・人口問題研究所は,国が行う社会保障制度の中・長期計画ならびに各種施策立案の基礎資料として,@全国人口に関する将来人口推計,A都道府県別将来人口推計,ならびにB世帯に関する将来世帯数推計(全国・都道府県)を定期的に実施し,公表してきている。
・全国人口推計
全国推計の結果は,すでに平成14 年1 月に公表を行い終了したが,平成14 年度においては,引き続き推計後の人口指標のモニタリングを行い,推計結果の評価検討を継続して行った。
(1 )研究概要推計に関連する人口指標を作成し,推計仮定値ならびに推計結果を人口学的手法により評価した。
(2 )担当者・都道府県別人口推計
(1 )研究概要
最新の国勢調査結果をふまえた「日本の将来推計人口(平成14 年1 月推計)」が公表され,この新全国人口推計に基づいて新たに都道府県別人口の将来推計を行い,平成14 年3 月に公表した。これを受けて,平成14 年度は報告書を刊行し,推計の作業過程における成果を学会等で報告した。同時に,推計後のモニタリングを行い,推計の評価を継続して行った。
また,都道府県別人口推計のフォローアップとして,地方自治体からの要請も多い市区町村別人口の将来推計について,その手法や作業量など,市区町村別将来人口推計の公表の可能性を探る作業を行った。
・世帯推計(全国推計・都道府県推計)
(1 )研究概要
平成14 年度は,全国および都道府県別世帯数の前回推計結果の評価作業を継続して行い,2000 年国勢調査,全国人口推計(平成14 年1 月推計),都道府県別人口推計(平成14 年3 月推計)等基礎データの収集・整理・確認等の作業を進めた。
また,結婚の将来推計,2000 年基準人口(世帯内地位別)の作成を終え,第4 回世帯動態調査の個票データを利用し,世帯内地位間推移確率を作成中である(全国世帯推計)。
国立社会保障・人口問題研究所は,昭和15 年に日本における夫婦の子どもの生み方に関する最初の大規模な全国調査『出産力調査』を実施し,戦時中の中断をはさんで,昭和27 年に第2 次調査を行った。その後は5 年ごとに調査を行い,平成9 年の第11 回調査に引き続き,平成14 年に第12 回の出生動向基本調査を行った。
今回の調査の目的は,最近変化しつつある夫婦の子どもの生み方に関する実態を明らかにし,その関連要因を究明することである。前回調査データの分析から明らかにされた昭和35 年以降コーホートの出生行動の変化が,一時的なものなのか,あるいはこの傾向は続くのかを把握する。
さらに,独身者の結婚・出産に関する考え方およびその規定要因をより詳細に把握し,日本の出生率低下の主要因である晩婚化・非婚化の背景を明らかにすることによって,最近の出生率低下の要因を解明し,今後の少子化対策に資するとともに,将来人口の予測と広く各種行政の施策立案の基礎資料を得る。
本調査は,全国の妻の年齢50 歳未満の夫婦と,18 歳以上50 歳未満の独身の男女を対象にしたサンプル調査である。平成14 年国民生活基礎調査で設定された調査地区から600 調査地区を無作為抽出し,その地区内に居住する妻の年齢50 歳未満の夫婦と18 歳以上50 歳未満の独身の男女を調査の客体とした。
(4 )調査の方法国立社会保障・人口問題研究所が厚生労働省大臣官房統計情報部,都道府県,保健所を設置する市・特別区および保健所の協力を得て実施された。調査は厚生労働省統計情報部が平成14 年に実施した国民生活基礎調査に併行して,配票自計・密封回収方式によって行った。
(5 )調査期日平成14 年6 月25 日(ただし,平成14 年6 月1 日現在の事実による)
(6 )調査事項「夫婦調査」
「独身者調査」
本調査の夫婦調査は,全国の妻の年齢50 歳未満の夫婦を対象とした標本調査であり(回答者は妻),平成14 年6 月1 日現在の事実について調べたものである。調査対象地域は,平成14 年「国民生活基礎調査」(厚生労働省大臣官房統計情報部実施)の調査地区1,048 カ所(平成12 年国勢調査区から層化無作為抽出)の中から,系統抽出法によって選ばれた600 地区である。したがって,そこに居住する全ての50 歳未満の有配偶女子が本調査の客体である。調査方法は配票自計,密封回収方式によった。その結果,調査票配布数(調査客体数)9,021 票に対して,回収数は8,382 票であり,回収率は92.9 %であった。
独身者調査も夫婦調査と同一の調査地区に居住する年齢18 歳以上50 歳未満の独身者を対象として実施し,調査票配布数は12,866 票,うち有効票数は9,686 票(有効回収率75.3 %)であった。調査結果は,平成15 年度に公表する。
本調査は,少子化の主たる原因としての晩婚化と関連して,親と共に生活する成人した未婚者である世帯内単身者の実態を捉えることを主たる目的とする。本調査は世帯票と個人票から構成され,前者は世帯内単身者が属する世帯の経済的状況を把握し,後者は世帯内単身者自身の経済的社会的状況を把握する。
全国の世帯主を対象とし,平成12 年国民生活基礎調査で設定された調査地区内より無作為抽出した300 調査地区すべての世帯(約15,000 世帯)のうち,18 歳以上の未婚親族と同居する世帯およびその18 歳以上の未婚世帯員を調査の客体とする。本調査は,国立社会保障・人口問題研究所が厚生労働省大臣官房統計情報部,都道府県,保健所を設置する市・特別区および保健所の協力を得て平成12 年6 月1 日に実施した。調査票の配布・
回収は調査員が行い,調査票への記入は世帯主およびその世帯に同居する18 歳以上の未婚者の自計方式によった。
調査票配布数は世帯票で3,552 票,個人票で4,604 票であった。そのうち世帯票の回収率は3,203 票,個人票は4,334 票であり,白票や極めて記入状況の悪い票を削除した有効回答率は世帯票で88.8 %,個人票で92.5 %であった。分析においては,世帯票,個人票ともに有効であり,かつ学生の未婚者を除く世帯(2,667 ケース,以降該当世帯とする)と個人(3,422 ケース,以降該当個人とする)を対象とした。
分析の結果,該当世帯の持ち家率は8 割と一般に比べると高かったが,経済状況は本調査と同時に実施された「平成12 年国民生活基礎調査」の結果と比べて豊かな層のみに偏っているわけではなかった。それどころか,世帯人員数を除して世帯員一人あたり所得は,どの世帯主年齢層をとっても該当世帯の方が低い値であった。該当個人についてみてみると,そのほとんどは20 歳代,30 歳代前半に集中しており,晩婚化の傾向にあるいま、親との同居が今後どの程度継続するかどうかは,未定の段階にあるものが多い。学歴分布をみてみると約3 分の1 が短大・大卒以上であるが,平均からみて大きく高学歴層に偏っていなかった。該当個人の7 割以上はフルタイムの仕事に就いて,いくらかの貯蓄を有していた。さらに,該当個人全体の約7 割は家計にいくらかの繰り入れをしていた。親と同居することが該当個人にとって一方的な利益になるというよりも,成人した未婚子と同居することが家計に貢献している側面も認められた。
平成13 年度に報告書を刊行した。また,平成14 年度にはその概要を英訳し,当研究所ホームページからダウンロード可能な形で提供した。
(4 )担当者
単独世帯や夫婦世帯の増加,女性の社会進出による共働き家庭の増加など,わが国の世帯・家族は,その姿とともに機能も大きく変化している。家庭機能の変化は,家庭内における子育て,老親扶養・介護などのあり方に大きな影響を及ぼすだけでなく,社会全般に多大な影響を与える。家族変動の影響を大きく受ける子育てや高齢者の扶養・介護などの社会サービス政策の重要性が高まっているなかで,わが国の家族の構造や機能の変化,それに伴う子育てや高齢者の扶養・介護の実態,およびその変化と要因などを正確に把握することが重要な課題となっている。
国立社会保障・人口問題研究所では,「社会保障・人口問題基本調査」のひとつとして,これまで平成5 (1993 )年,平成10 年(1998 )年の2 度にわたって「全国家庭動向調査」を実施してきた。本調査は,全国規模のサンプルで本格的に家庭動向を把握したわが国における最初の調査であり,他の公式統計では捉えることのできない「出産・子育て」,「高齢者の扶養・介護」など家庭機能の実態やその変化要因などを明らかにするもので,調査結果は広く各種の行政施策立案の基礎資料として活用されている。平成15 年度は「第3 回全国家庭動向調査」の実施年にあたり,平成14 年度は,その予算要求および企画を行った。なお,社会保障・人口問題基本調査は,これまで都道府県に対して試験研究費による協力依頼方式で実施されてきたが,地方分権推進の観点から,平成15 年度実施の本調査より,都道府県への事務委任方式に変更することとした。予算要求においてはその調整作業を行った。
自殺率が増加する中で,中高年男性の自殺率が特に高まっていることが指摘されている。中高年男性は,企業の担い手としてまた世帯主としてわが国の経済活動と人口の再生産にとって重要な貢献をしてきたにもかかわらず,その自殺率が増加していることは,これらの活動に少なからぬ損失を生じさせている可能性がある。これまで,経済活動や人口再生産の担い手である勤労者(とくに中高年の男女労働者)が自殺した場合の逸失利益を明確にして自殺の社会・経済への影響を明確にすることは,殆どなされてこなかった。
しかし,自殺防止対策を効果的に実施するためには,自殺防止対策の費用と便益の関係を明らかにする必要がある。また,このような分析を行うには,中高年労働者の自殺率の上昇が景気後退に伴う失業率の上昇に関係しているマクロ的な側面と,個々の労働者に対して職場における能力主義の浸透(賃金体系や人事考課の変化)が職場のストレス要因となっているというミクロ的な側面それぞれに留意する必要がある。したがって,本研究の目的は,このような問題意識のもとに,厚生・労働政策との関連に留意しながら,労働者の職場におけるストレスがその治療成果や自殺に及ぼす影響を世帯構造や個人属性に配慮しながら分析する調査研究を実施するとともに,自殺のマクロ経済的な損失,及び雇用政策による職場環境の向上と医療政策による治療成果の向上が自殺を減少させることによる社会・経済への影響を分析することである。
自殺による死亡率は,経済環境の変化もあって近年増加しており,医療政策や精神保健政策に加えて,経済問題との関連にも関連した分析が求められている。リストラなどに伴う従業員のストレスにも配慮しながら自殺予防が可能になるためには,企業の理解を高める必要があり,そのためには,自殺の経済的損失や国民経済に及ぼす影響を測ることが重要な課題である。本研究は,このような問題意識のもとに,次のような研究を行う。
これらの研究の内,平成14 年度は,@については,公表統計に基づく実証分析を行い,Bで用いるマクロ経済モデルにおける自殺関連変数の特定化を行った。Aについては,一世代の家族を対象とする場合の推計を行った。Bについては,自殺率が中高年男性に多いことに留意して,労働力を中高年労働者とそれよりも若い労働者に分けた生産関数をもつ供給型マクロ経済モデルを推定して,これも利用して自殺によって失われるGDP の大きさを推計した。Cについては,自殺防止対策と関連する医療費の変化を推計するためのデータベースの設計・開発を昨年度に引き続き行った。
(3 )研究会の構成員研究成果は,厚生労働省社会援護局障害保健福祉部の第5 回「自殺防止対策有識者懇談会」(平成14 年8 月)において報告し,同懇談会報告書「自殺予防に向けての提言」資料編(平成14 年12 月)に採録され一般に公開された。また,マクロ経済的な推計結果については,内閣府経済社会総合研究所の経済社会総合研究所セミナーにおいて報告を行った。さらに,自殺予防策の海外動向をわが国の現状と比較し今後の課題を検討するために,国立社会保障・人口問題研究所において一般公開の社会保障セミナー「海外の自殺防止対策の動向と日本への」を開催した(平成15 年3 月)。
少子高齢化の進展や経済環境の変化とともに,社会保障制度が有するセーフティ・ネットの役割やこれが経済活動に及ぼす効果に対する関心が高まっている。本事業は,社会保障制度の財政動向,所得再分配効果,社会保障改革が経済に及ぼす影響,あるいは世代間の公平性の試算など,今後,社会保障制度の運営とともに注目される諸課題を定量的に明らかにすることを目的としている。
以上の目的を遂行するため,マクロ計量経済モデルや世代重複モデルなどを開発するとともに,政策的な効果が明らかになるようなシミュレーションを実施する。
本事業は3 年計画に沿って運営されている。初年度には分析ツールの拡充を図り,2 年目に新人口推計に沿ったシミュレーションを行い,最終年度には社会保障改革を視野に入れたさまざまな効果分析を行うこととしている。
本年度は3 年計画の2 年度目にあたり,主要なモデルを完成させるとともに,最終年度に実施する将来展望,政策シミュレーションのための準備を行った。具体的には,公的年金改革の経済厚生分析,供給型マクロ計量経済モデルによる医療費の予測,年金・医療財政の将来展望(予備推計),保険料率引き上げとパートタイマーの第2 号被保険者への移行に関する分析,厚生年金の財源選択が世代内格差と世代間格差に及ぼす影響などについて分析を行った。
報告書を作成するとともに,日本経済学会,日本財政学会等で報告を行った。
社会保障について,2000 年には年金改革,社会福祉基礎構造改革がなされ,介護保険の実施もはじまったが,これらについて更なる改革を求める意見も強く,医療保険改革も喫緊の課題として残されている。現行の社会保障制度はこれまでのさまざまな改革の積み重ねで出来上がったものであり,それぞれの次元での政策判断がどのような議論の積み重ねとどのような時代背景の下でなされてきたかを整理分析することは,今後の社会保障制度改革について政策決定を行う上で不可欠である。本研究は,高度経済成長が低成長に移行し,社会保障改革も単純な制度の拡充から財政制約への対応に重点が移行した1980 年代以降を中心に,制度改革に関する文書資料を収集し改革の流れを追うとともに社会経済との関連を分析し,今後の社会保障制度改革の政策決定のための基礎資料を得ようとするものである。
(2 )研究計画初年度は,社会保障制度の諸改革に関する各種先行研究,並びに政府各省庁の資料,関係審議会の答申・勧告・建議等の文書資料の収集を行う。次年度は,前年度の資料の整理・検討並びに研究者及び政策担当者からの補完的なヒアリングを実施する。最終年度は,前2 年度で収集,整理・検討した文献・資料等を基に,社会保障制度改革について分析・検討し,報告書を作成する。あわせて,収集・整理した資料のうち重要なものを社会保障資料集として取りまとめる。
(3 )研究会の構成員初年度の研究実施状況は,当初の計画通り,1980 年以降の社会保障制度の諸改革に関する文書資料の収集整理を継続的に行った。文書資料の整理に当たって,個別の先行研究,政府各省庁,関係審議会ごとに整理されているものを,年金改正関連(85 年,89 年,94 年),国民健康保険改正関連(88 年),医療改正関連(91 年),老人保健法改正関連(91 年),共済年金・農業者年金関連,企業年金改正関連(94 年)などの分類を作成し,再分類を行った。そして,再分類された文書資料はその政策決定までのプロセスにそって整理され画像処理をおこない保存をおこなっている。再分類に当たっては各研究者による整理がおこなわれ意見の統一を図るよう検討が行われている。
わが国の低出生力の要因について,従来経済学的モデルに基づく研究が多くなされてきたが,本研究は出生力の近接要因(結婚年齢,避妊,人工妊娠中絶,妊孕力など)ならびに個々のカップルの出生意図と出生調節行動,換言すれば,子どもの供給側に着目する研究である。すなわち供給過剰(意図しない妊娠/出産)あるいは供給過少(希望子ども数の未達成)がどのようなメカニズムでおこるのか,という点の解明に力点を置く。同時に,出生力の供給側に影響を与えうる政策,たとえば,直接的な出産・育児支援策,リプロダクティブ・ヘルス/ライツ関連政策,ジェンダ−政策,教育・マスメディアの影響などに着目する。本研究はこのような広い意味の生態学的観点に立ち,医学生物学,人類学,歴史(女性史,科学史)など関連領域の最新の知識を踏まえて,わが国の出生力に関連する諸政策および情報が個々の男女の出生調節行動を介して出生力に及ぼす影響について,人口統計,政策の両面からアプローチし,新知見を得ようとするものである。
(2 )研究班の構成員
第1 年度においては,先行研究について文献レビューを行い,分析枠組みを固める。同時に,外部専門家を含めたセミナーなどを通して,所内外の関連分野の研究者が交流する場を持つ。とりわけ,産婦人科医など現場の専門家から実際の状況を聞き,最新情報の収集に努める。また女性史研究家などにも参加を求め,ジェンダ−・セクシュアリティ・リプロダクションをめぐる近現代史における日本の文化的状況の変容にも注目する。
第2 年度においては,文献研究ならびにセミナー等を継続するとともに,人口動態統計ならびに出生動向基本調査などを用いた統計的研究を加え,作業仮説を検証する。
第3 年度においては,以上を総括して総合的なモデルを構築しその妥当性について検討する。最終報告書を作成する。
リプロダクション情報・政策研究会を下記(報告者,報告題目)の通り,2002 年度において7 回開催した。
学会,雑誌等で関連した発表をおこなった。