(1 )研究目的
本研究は,福祉国家システム像の再構築をめざして厚生経済学のパラダイムを再構成すること,そして,厚生経済学の新パラダイムの構想をもとに福祉国家を構成する主要なシステム・サブシステムの目的・機能を再検討することを目的とする。私的利益を追求する諸個人と彼らの相互連関的行為によってもたらされる均衡結果を分析するという既存の枠組みは,所与のシステムがもたらす効果や影響を分析するうえでは有効性であるとしても,システムのあり方を規範的に検討し,新しいシステム像を構想するには限界がある。本研究は近年の社会的選択理論や厚生経済学におけるめざましい理論的発展をもとに,新しい福祉国家システム像を規範的に構想する途を開くものである。(2 )研究実施状況
(3 )研究会の構成員
(4 )研究成果の公表
研究成果は,『季刊社会保障研究』(第38 巻第2 号)「特集:福祉国家の規範理論」にまとめた他,「社会保障改革の理念と構造」プロジェクトの成果とともに,単行本にまとめられる。(1 )研究目的
日本の出生率は1970 年代半ば以降,人口置換水準を下回って大きく低下し,1999 年には合計特殊出生率で1.34 を記録するに至った。すでに四半世紀続いた出生率の低下(少子化)は,21 世紀の日本を,従来の予想をはるかに上回る超高齢・人口減少社会に転換していく可能性を大きくしている。日本では,「1.57 ショック」以後,少子化の背景の分析が各方面で進められてきたが,政府や自治体ではこのような少子化傾向に歯止めをかける,あるいは逆転する方策(いわゆる少子化対策)が模索されつつある。本研究では,このような時代背景と政策的要請の下で,1970 年代以降,日本と同様の少子化傾向を経験している先進諸国の出生動向と経済社会の動向ならびに社会政策との関係をクロス・ナショナルに計量的に比較分析し(総括班担当),かつ主要国について各国別に分析すること(各分担研究班担当)を目的とした。(2 )研究実施状況
初年度(平成11 年度)(3 )研究会の構成員
(4 )研究会の開催状況
本研究によって収集したデータを分析し,適宜成果を発表していく予定である。具体的には,平成14 度中に国際シンポジウムを開催し,本研究を通して協力体制を築いてきた海外の専門家を招き,国際比較および各言語圏・地域に関する成果を発表すること,本研究を通して収集・分析した出生率や家族政策に関する多方面の情報を含むデータベースの公開を検討していくことを予定している。
(1 )研究目的
人口高齢化,経済の低成長等を背景に先進各国において社会保障の改革が進展している。それらの中には共通の政策もあれば,各国独自の対応も見られる。これらを今後のわが国の改革の参考にする際には,それぞれの国の既存制度や背景となる社会経済の状況を十分踏まえる必要がある。そのためには,当該国の研究機関との共同研究を実施することが最も有益な情報を得られる方法であると考えられる。(2 )研究実施状況
平成13 年度は,平成11 年度に立ち上げたネットワークから得られた15 カ国の改革を集積し,年金,医療,福祉の各分野における国際的な改革動向の比較分析を行った。
NCVC とスタンフォード大学病院との間の比較可能なデータ・ベースを用いて,急性心筋梗塞に 対するステント適応の効果について,日本の臨床的変遷,アウトカム,在院日数などを視点に比較 研究を行った。
「国民生活基礎調査」「所得再分配調査」を用いて,日本の所得分配,低所得者層の現状と動向 を国際比較を交えた分析を行った。平成13 年度は,LIS などを使った所得分配の国際比較研究 を拡充するとともに,社会保障・税制が所得分配に及ぼす影響の把握,世帯構造の変化が所得 分配に及ぼす影響(未婚成人や高齢者の同居など)の分析を行い,その成果をウェブ・ジャーナ ル“Journal of Population and Social Security”に掲載すべくまとめる作業を行った。
イギリス・アメリカ・ドイツの年金研究の専門家と研究交流を行い,日本の公的年金制度の客観的 な特徴づけを多角的に行った。
マイクロ・データを用いて,今日の社会保障の機能と私的トランスファーによる家族の生活保障機 能との関係の実証分析を行うべく,準備作業を行った。
(3 )研究会の構成員
(4 )研究成果の公表
平成13 年度研究報告書として公表した。また,共同研究3 についてはウェブ・ジャーナル“Journal of Population and Social Security” Vol. 1, No1 (2002 年8 月発行)の特集として掲載する。(1 )研究目的
本研究プロジェクトは,近年に続く長期的な出生率低下を背景として,「少子化」の要因を実証的な研究から解明し,政策的な含意を引き出すことを第一の目的とし,さらに,「少子化」の今後の見通しに関して知見を見いだすことを第二の目的として実施するもので,平成11 年度から始まった標題研究の最終年次の研究プロジェクトである。(2 )研究実施状況
結婚・出生行動の社会経済モデル研究では,結婚や出生行動を経済社会要因から説明するためのモデル開発を行った。
結婚と出生行動に影響を及ぼす社会経済的変数の関係を「連立方程式体系」として表現し,経済社会モデルによる結婚・出生の将来予測を試みた。さらに,結婚・出生行動にかかわる様々な要因に関して,いくつかのシナリオ,1 )高成長ケースと2 )低成長ケースを加え,検討した。
社会経済モデルから予測された今後の合計特殊出生率の推移は,国立社会保障・人口問題研究所の平成14 年1 月推計の仮定値と比較し,おおむね将来動向については整合性がみられた。ただし,経済成長率の動きによっては,出生率の動きにいくつかの相違点も明らかとなった。すなわち,経済成長率が今後上昇した場合,晩婚化傾向が一層進み,出生率は相当低い水準となることが示唆され,女性就業と出生率のトレードオフの関係が,高い経済成長により強く表れることになる。一方,低成長下では,出生率の上昇がみられた。
女子就業と結婚ならびに出生力の関係の研究については,1 )保育サービスの拡大を目指すのであれば,今後は幼稚園も保育士を雇用し,0 〜2 歳児の保育にあたることの有効性があること。2 )女性の就業・育児の両立に対し,高齢者の果たす役割が非常に大きいこと。3 )夫のサービス残業が妻の就業を抑制するという関係が見られた。4 )所得格差が拡大していくと,年収の低い世帯にとって,育児の負担はますます重くなる。年収の低い世帯に対しては,現在より手厚い児童手当を支給することが必要である。5 )育児資源の利用可能性が職種により異なることが明らかになった。6 )職種別に育児サポートの利用促進のサポートや育児サポートの効果測定の必要が明らかになった。
女性の出産と就業継続の両立支援策については,7 )出産と女性の継続就業に負の相関の関係があることが分かった。また,8 )勤め先で育児休業制度が規定された場合,出産確率を高めることができ,女性の継続就業をも促進していることが分かった。女性の就業行動と出生行動の間にあるトレードオフ問題を解決するためには,企業と社会における労働時間の短縮やファミリーフレンドリーな雇用管理政策の更なる充実が必要だと思われる。
過去に例をみない出生率低下のもと,今後の出生率の見通しが極めて困難な状況にある。そのような認識から,少子化問題に詳しい専門家を対象として,少子化の見通しや望ましい施策を探り,人口の将来予測や少子化に関わる施策の方向付けの参考資料とすることを目的として実施した。
専門分野の種別にみた,今後25 年間の変化(社会経済状況,性・生殖に関する状況,家族規範に関する状況,家族形成に関する状況)の見通しは,専門分野によって将来の結婚・出生予測が異なることが明らかにされた。
合計(特殊)出生率の見通しに関して,「専門家予測シナリオ」として将来人口推計を行い,社人研による平成14 年1 月推計と比較を行った。その結果,1 )社人研の推計結果とほぼ同じ数値を得た。専門家調査の予測のほうが若干低めの出生率のため,総人口も2050 年の時点で若干少なくなっている。また,2 )平均初婚年齢と生涯未婚率については,専門家の予測は平均初婚年齢について社人研仮定値よりも晩婚化するとの予測であった。3 )平均寿命については,社人研予測よりも伸びが低いと予測されているという結論を得た。
日本の少子化に関し政策的観点から,概ね1990 年以降の結婚・出生変動に関する文献情報を収集し,体系的に整理した。この間,法令の施行・改正,政府内における計画・方針等の策定,審議会答申,提言等の動きがあった。論文,著書,報告書等に関しては,1990 年〜2002 年3 月の間に刊行されたものについて文献リストを作成し,過去1 年間の重要文献を抜粋し文献解題をおこなった。近年における少子化研究の特徴として,主題の多様化とともに,少子化対策との関連についての関心の高まりが挙げられる。政策評価に資する情報データベースの整備と既存研究の総合的レビュー手法の発展が今後の課題といえよう。
(3 )研究会の構成員
(4 )研究成果の公表
平成11 年度,12 年度,ならびに13 年度の研究成果と平成11 〜13 年度総合研究報告は,厚生科学研究報告書として公表した。(1 )研究目的
本研究の目的は,縦覧可能なレセプトデータおよびその他の官庁統計(医療施設調査や地理的データ)を用いて国民健康保険の被保険者の包括的な受診状況を把握し,それが被保検者の属性,地域要因にどのように依存しているかを統計的に明らかにすることである。より具体的には@年間を通じた国保被保険者の医療受給パターンの解明,A医療機関ごとのレセプトの再集計により,医療機関別・被保険者の年齢別の医療費や入院期間などを推計する,B二次医療圏毎に再集計することにより,医療圏の地理的条件等を踏まえた被保険者の外来受診,入院パターンの把握等があげられる。(2 )研究実施状況
ほぼ毎月1 回研究会を開催し,次の研究課題に関し国民健康保険業務データを用いた分析について委員が報告した。(3 )研究会の構成員
(4 )研究会の開催状況
月に一度程度研究会を開催した。(5 )研究成果の公表
厚生科学研究費補助金政策科学推進研究事業報告書として公表した他,『季刊社会保障研究』第38 巻第1 号において特集として論文を発表した。(1 )研究目的
本研究の主たる目的は,多様な社会保障政策のうち少子化に対応することのできる政策手段を明らかにし,その政策手段がどれだけ出生力の回復などの効果を発揮しうるかを数量的に把握するために,社会保障政策が育児コストを通じて出生行動と消費・貯蓄行動に及ぼす影響を実証分析することである。少子・高齢化が進行する一方,経済成長率が低い水準を推移し,将来の国民生活が豊かになれるかどうかについては不確実性が増しつつある。成長率の低下には,生産年齢人口の減少や国民経済における総消費の伸び悩みが影響しており,これらは少子化と関係している側面もある。ただし,少子化に対応する社会保障政策は出生行動を制度的に促す政策を意味しない。あくまで,出生行動は男女の自己選択に基づくものであり,強制的な政策介入は避けなければならない。したがって,出生行動に影響する育児コストという経済要因に効果を持ちうる社会保障政策を実証分析によって見出すことは,男女の自己選択を尊重しながら少子化に対する社会保障政策の実現につながることが期待される。この研究では,こうした面にも配慮して,海外の子育て支援策や育児と就業の両立支援の状況など,育児コストに拘わる諸政策の実態について国際比較を行うことを,研究のもう一つの目的とする。(2 )研究実施状況
「国民生活基礎調査」の使用申請の承認を経て,育児コストに関連する再集計を行い,調査報告書の付属統計表としてとりまとめた。また,女性の結婚,出産,育児に伴う離転職と子育て支援策との関係について「女性の就労と育児に関する調査」を実施した。研究会等による実証分析の結果,保育所政策の充実により育児コストが低下するために,女性の就業率が上昇する可能性が見られる反面,就業期間や就業形態が多様化しているため,勤続年数に基づく退職一時金額は,女性では平均50 万円程度であることがわかった。したがって,育児コストを低下させる子育て支援策と,女性の引退後の所得保障に影響する貯蓄手段を補完する女性の年金制度の充実や企業年金の普及を図る施策との連携が必要であるという結果が示唆された。また,国際比較の観点から,加日社会保障政策研究円卓会議・大阪会議(平成13 年6 月23 〜24 日)において,育児コストに関わる諸問題及び消費・貯蓄行動と引退後の所得保障に関わる問題に関する論文報告を行い,カナダ側の研究とこれらを合わせた研究成果を『海外社会保障研究』において公表した。(3 )研究会の構成員
(4 )研究成果の公表
(1 )研究目的
本研究の目的は,日本の所得格差について,ミクロデータを用いて1980 年代からの趨勢や現状を把握しながら,その評価・検討を行うことにある。具体的には,「所得再分配調査」や「国民生活基礎調査」を用いて実証分析を行うとともに,OECD 等の国際データを活用しながら,我が国の所得格差の推移と現状,社会保障による再分配効果の推移を明らかにする。さらに,欧米諸国との比較や所得格差を論ずる際の理論的視点についても言及する。大規模な全国データに基づいた厳密な実証研究を行うことで,日本の所得格差の現状について多角的な観点から分析するとともに,世帯や世帯を構成する世帯員の経済状態や就業雇用状況の動向についても分析する。(2 )研究実施状況
初年度(平成12 年度)においては,所得格差に関する国内外の既存研究の整理・検討や文献収集を行うとともに,「所得再分配調査」及び「国民生活基礎調査」のデータクリーニングとデータ分析を行なった。次年度(13年度)においては,「国民生活基礎調査」所得票や「所得再分配調査」を用いて各自の分担テーマについてさらなる分析を進め,報告書に取りまとめた。分析テーマの担当は次に示すとおりである。(3 )研究成果の公表
各分担テーマに沿って分析を行い,報告書として取りまとめた。今後,学術雑誌への掲載を試みることとしている。(4 )研究会の構成員
(1 )研究目的
本研究の目的は地理情報システム(Geographic Information Systems: GIS )を用いて,わが国における人口動態とその変動の規定要因を解明することにある。具体的な研究課題としては以下の3 点を設定した。 @緯度経度系による人口データをメートル単位によるものに変換するための手法の開発を行う。A上記によって変換された1km ×1km の修正メッシュデータを用いて,土地高度,傾斜などの自然的土地条件と人口分布との関連性について検討する。B都市圏程度の地域的範囲において,特に少子化,高齢化などの現象に注目しながら,人口動態の地域差とそれをもたらす諸要因について考察する。平成13 年度においては,研究初年度において得られた研究成果及び残された課題をふまえ,上述のテーマに関する分析作業を継続した。(2 )研究実施状況
本研究の平成13 年度における研究成果は以下のようにまとめられる。(3 )研究会の構成員
(4 )研究成果の公表
研究会の開催状況は,平成13 年度前半においてはおおむね隔月で,後半においては1 ヶ月に1 回研究会を開催した。研究成果は,「人口分析におけるGIS の可能性」東京大学空間情報科学センターDiscussion Paper Series, No. 48, 1-15 など個別論文の公表とともに,報告書を刊行予定である。(1 )研究目的
医療費の適正な支出を管理することは医療保険制度の健全な運営にとって必要欠くべからざる項目であり,現状の医療費支出の状況を的確に把握する必要がある。医療費の実態を把握する方法のひとつとして大量のレセプトデータ等を用いて包括的に患者の受診行動や医療費受給構造を把握する方法が考えられる。このタイプの研究では各医療機関の診療内容の詳細についての情報はほとんど得られない。しかし,個別の医療機関の行っている診療行為についての情報を得た上で,その医療機関の医療費が医療機関全体の中でどの程度の水準にあるかを知ることは重要な政策課題である。(2 )研究実施状況
医療・介護にかかる需要・供給両サイドの個票データを用いた分析を行った。ほぼ毎月1 回研究会を開催し,委員が個別の分析について報告を行った。主たる研究課題は下記のとおりである。(3 )研究会の構成員
(4 )研究会の開催状況
統計データを用いた分析については必要に応じて研究会を開催し,相互の進捗状況を確認した。12 月から2月にかけては外国人研究者3 名を招へいし,それぞれ5 日間連続で研究会を開催した。(5 )研究成果の公表
厚生科学研究費補助金政策科学推進研究事業報告書として公表。(1 )研究目的
政府は平成11 年度,12 年度と2 年連続して児童手当を拡充した。児童手当をはじめとする,こどものいる世帯に対する所得移転および保育サービスなどでは,社会保障分野において高齢者対策と並ぶ重要課題である。これは少子化問題をかかえる先進諸国の多くと共通する問題意識であり,NBER ,Brookings Institution, UNICEF 等各研究機関においてもこどもの社会保障をテーマとする研究プロジェクトが立ち上がっている。(2 )研究実施状況
平成13 年度は,まず,保育事業の需要の分析として,4 歳未満の児童を持つ母親からなるフォーカス・グループ・ディスカッション(FGD )を計5 回全研究者が協力して実施した。FGD から,保育園に求めるものが,世帯の所得・属性によって大きく左右されること(質vs.価格),保育園に預ける意志と動機などにも大きな違いがみられることなどが分かった。また,平成13 年度後期には,既存のデータを整理・入力し,世帯における保育費のWillingness to Pay の分析を行った。さらに,保育士市場の需要・供給分析を行った。最新保育政策についてもヒヤリングとサーベイを実施した。社会保障給付費の観点から,OECD Social Expenditure Database における「家族」機能給付の各国比較を試みこどもに関係する社会保障支出の各国の特徴を考察している。「国民生活基礎調査」,「所得再分配調査」等を用いて保育手段の選択と世帯属性(所得など)の関係の分析を行った。また,米国のCurrent Population Survey1994, 1995, 1996, 1997, 1998, 1999 年のデータを用い,ネイティブと移民両グループのこどものいる世帯における貧困率,公的扶助の受給程度を計算し比較を試みた。「国民生活基礎調査」「所得再分配調査」などのマイクロ・データを用いてこどものいる世帯の低所得率,不平等度などを計算し,国際比較を行った。また,アメリカにおける児童政策(TANF, EITC, Child Tax Credit など)を分析し,日本への応用度を検討した。(3 )研究会の構成員
(4 )研究成果の公表
平成13 年3 月末に当該年度の報告書を作成し公表した。分担研究者はそれぞれの報告内容について各所属学会で発表を行っている。(1 )研究目的
社会保障有識者会議の報告書において「社会保障制度の暗黙の前提になっていた男性労働者中心の家計は崩れつつあり,新しいタイプの社会的リスクが登場している」と指摘されているように,家族形態の変化や就労形態の変化は,伝統的な世帯像を前提とした公的年金の負担と給付の両面についてさまざまな議論を生んでいる。さらに人生80 年時代を迎え,高齢期の所得保障を就労と社会保障のミックスにおいてどう達成するかが問われている。これらの変化に公的年金制度としてどのように対応し,制度を維持・発展させていくかは重要な問題である。(2 )研究実施状況
初年度である平成13 年度は,公的年金に関する先行研究サーベイを行い,既存研究をサーベイし,今後の研究課題を明らかにするために研究会を組織し,座談会形式で論評を行った。その成果は国立社会保障・人口問題研究所の機関誌『季刊社会保障研究』の特集号として14 年3 月末に刊行された。また以下に述べる4 つの研究課題について分析を進めた。(3 )研究会の構成員
(4 )研究成果の公表
本年度の研究成果のうち,既存研究サーベイは『季刊社会保障研究』(第37 巻第4 号)の特集として平成14 年3 月末に刊行され,関係各方面に配布した。「公的年金が労働供給に及ぼす影響と所得保障のあり方に関する研究」については,本年度の研究成果を平成14 年5 月末に予定されているNBER (全米経済研究所)の国際ワークショップで報告し,同様のアプローチで研究を進めている各国との国際比較および意見交換を行う予定である。「ライフスタイルと年金に関するアンケート調査」については,平成14 年度にさらに分析を深め,調査分析結果の報告会を行政関係者を交えて開催する。(1 )研究目的
OECD では,「実質社会支出」(Net Social Expenditures )の研究を進めており,その重要性は平成12 年に報告書をまとめた「社会保障構造の在り方について考える有識者会議」においても指摘された。社会保障費の国際比較では,給付のみならず税制や民間への権限の委譲等など,総合的な「移転」をみる必要がある。(2 )研究実施状況
初年度(平成13 年度)はOECD 「Net Social Expenditure 第2 編」の翻訳を行い純社会支出の概念の理解を深めた。マイクロシュミレーションモデルの活用について,スウェーデンとカナダについて分担研究者が調査した結果を報告書にまとめた。なお,周辺部分の社会支出については住宅について研究協力者のサーベイを報告書にまとめた。平成14 年3 月にはOECD の担当研究者を招聘し,主任研究者分担研究者を交えて公開講座を開催し,純社会支出の考え方と日本の社会支出の規模について検討した。(3 )研究会の構成員
(4 )研究成果の公表
平成13 年度の研究については中間報告としてとりまとめ,関係機関へ配付した。(1 )研究目的
近年,日本においては「自助」を強調した社会保険制度の見直しが本格的に進められている。その中で,社会保障システム全体における公的扶助システムの位置づけと役割,社会保険制度や公共政策との連携のあり方等に関して再検討する必要性はきわめて高い。本研究は,公的扶助システムの機能と被扶助者や低所得者の生活や行動実態,社会保障システム全体における位置づけと役割に関して,理論的,実証的に分析することを目的とする。(2 )研究実施状況
平成13 年度は,1 月までに計5 回研究会を開催し,岩田正美(社会学),小沢修司(社会福祉学),柴田謙治(社会学),前田雅子(社会福祉法),西村淳(厚生労働省),阿部彩(国際関係部)など多彩な研究者・実務者からのヒアリングを行った。これら研究会には,厚生労働省の行政官も出席し,研究と実務の両サイドからの活発な議論が行われた。またこれと併行して,研究課題の4 つのサブ・テーマに関する予備的な調査・研究が行われた。(3 )研究会の構成員
(4 )研究成果の公表
平成13 年度「総括研究報告書」を出した。収録されている研究報告は次の通りである。