V 推計の方法と仮定
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5.国際人口移動率(数)の仮定

(1) 近年における国際人口移動の動向

 国際人口移動の動向は、国際化の進展や社会経済情勢の変化、また出入国管理制度や関連規制等によって大きな影響を受ける。また、内外における社会経済事象や災害の発生は国際人口移動に大きな変動をもたらすことがある。近年では同時多発テロ(2001年)、新型肺炎の発生(2002〜3年)、リーマンショック(2008 年)などがこれにあたる。さらには、平成23(2011)年3月に発生した東日本大震災はわが国における外国人の出入国に大きな変動をもたらした。


(2) 国際人口移動の仮定設定

国際人口移動数・率の実績値の動向をみると、日本人と外国人では異なった推移傾向を示している。また人口学的にみると日本人の移動は人口の年齢構造による影響を受けるが、外国人の場合にはわが国の人口規模あるいは年齢構造との関係は限定的である。そのため、本推計においては国際人口移動の仮定は日本人と外国人に分け、日本人については入国超過率、外国人については入国超過数を基礎として仮定値の設定を行った。

  1) 日本人の国際人口移動


日本人の国際人口移動の実績については、概ね出国超過の傾向がみられ、男女別にみた入国超過率(純移動率)の年齢パターンは比較的安定していることから、本推計においては近年の平均的な男女・年齢別入国超過率が継続するものとした。

具体的には、平成16(2004)〜21(2009)年(前年10月→当該年9月)の間における日本人の入国超過率について、男女・年齢(各歳)別に平均値を求め(ただし、年齢ごとに最大値、最小値を除く4か年の値を用いた)、これらから偶然変動を除くための平滑化を行い、平成23(2011)年以降における日本人の入国超過率とした(図V-5-1)。

なお、 東日本大震災による日本人の国際人口移動への影響については、年単位で見た場合には明瞭な変動が確認されないことから、将来推計においてはその効果を見込まないものとした。

            図V-5-1 日本人の性、年齢別入国超過率

                       (1) 男  性

                       
                       (2) 女  性


  2) 外国人の国際人口移動


 外国人の国際人口移動の実績をみると、不規則な上下動を繰り返しつつも、概ね入国超過数が増加する傾向が続いてきた。ただし、直近の年次においてはリーマンショックや東日本大震災に起因する大規模な出国超過が生じるなど、外国人の出入国傾向は短期間に大きな変動を示している。

そこで、外国人の国際人口移動が顕在化した昭和45(1970)年から平成22(2010)年までの外国人入国超過数(男女合計)の実績値のうち、社会経済事象・災害等の影響により一時的に大きく変動したとみなされる年次のデータを除いたうえで、趨勢を将来に投影することによって平成42(2030)年までの長期的な仮定を設定した37)

ただし、直近においては、世界同時不況(リーマンショック)ならびに東日本大震災(2011年3月以降) の影響による月別変動を参考に、短期的に出国超過の効果を平成24(2012)年まで見込んだうえで、平成25(2013)年以降は再び長期的趨勢に復帰するものとした(図V-5-2)。





 入国超過数における男女構成については、昭和45(1970)年から平成22(2010)年までの外国人入国超過数のうち男性の割合が35〜65%の範囲の年次(41年次中32年次)について平均値(47.3%)を算出し、これを外国人入国超過数(男女合計)に適用することにより求めた
図V-5-338)



 さらに、それらの年齢別構成については、入国超過数の男女・年齢別割合の実績が得られる昭和61(1986)〜平成22(2010)年について、男女・年齢別に平均値を求め、これを平滑化して用いた(図V-5-439)

          図V-5-4 男女別外国人入国超過数の年齢別割合




 ただし、長期的には外国人の国際人口移動の規模をわが国の人口規模と連動させる必要があるため、人口推計の過程において平成42(2030)年の性、年齢別入国超過率(ただし日本人・外国人を合わせた総人口を分母とする)を求め、平成43(2031)年以降はその率が一定となるものとして推計を行った。

  3) 国籍異動について


 本推計では出生ならびに国際人口移動の仮定において日本人と外国人を別に扱うことにより精密な総人口の推計を行うため、国籍異動を考慮している40)。すなわち、国籍異動による日本人の純増について、国内の外国人人口を分母として男女・年齢別に率を求め、この平成16(2004)年〜平成22(2010)年(前年10月→当該年9月)の7年間の平均値を平滑化することによって、国籍異動の仮定値とした(図V-5-5)。

       図V-5-5 性、年齢別国籍異動による日本人の純増率

                      (1)男  性

                      (2)女  性


37) 除外した年次は、1971年、1993〜96年、1999〜2000年、2004年、2007年、2009〜10年である。
38) 除外した年次は、1971年、1977年、1982年、1988年、1994〜95年、2002年、2009〜10年である。
39) 除外した年次は、1993〜96年、1999〜2001年、2004年、2007年、2009〜10年である。
40) 近年における国籍異動による日本人の純増数(2004〜10年の平均値)は、年間15,487人である。

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