1. 社会保障給付費の範囲は、ILO(国際労働機関)が国際比較上定めた社会保障の基準に基づいて決定されている。
ILOでは、社会保障の基準を次のように定めている。すなわち、以下の3基準を満たすすべての制度を社会保障制度と定義する。
(1)制度の目的が、治療的又は予防的医療を提供するもの、所得保障を行うもの、あるいは扶養家族に対して補足的給付を提供するものであること。
(2)制度が法律によって定められ、それによって特定の個人に権利が付与され、あるいは公的、準公的、若しくは独立の機関によって責任が課せられるものであること。
(3)制度が公的、準公的、若しくは独立の機関によって管理されていること。
ただし、業務災害補償は、その責任が直接事業主に課せられているので、上記Bを満たさないが、社会保障に含める。
上記の基準に従えば、社会保障制度として、社会保険制度(雇用保険や労働者災害補償保険を含む)、家族手当制度、公務員に対する特別制度、公衆衛生サービス、公的扶助、社会福祉制度、戦争犠牲者に対する給付などが含まれる。
社会保障給付費は、上記のILO基準に従い、国内の社会保障各制度の給付費について、毎年度の決算をもとに推計したものである。(18〜23頁 統計表 第7表「ILO基準による平成9年度社会保障費用」参照) ILOは1949年以来18回の社会保障費用調査を実施し、各国から提供された社会保障費データ (1993年度分まで)を、"The Cost of Social Security"として公開している。現在、基準の一部及び集計様式等を見直した第19次調査(1994〜1996年度分)が実施されているところである。(6頁 ◆参考 国際比較 備考欄」参照)