4.夫婦の役割関係



 家事や育児のサポート資源が比較的乏しい妻にとっては、夫のパートナーシップはより重要な意味をもつ。夫の家事や育児への参加は、費やす時間とともに、夫婦間の分担の程度という家庭内役割の性別分業のあり方を問う問題でもある。今日でも、日本の夫婦間では伝統的な性別役割分業に基づいた家事や育児分担が続いている。ここでは最も重要な人的資源であることが期待される夫の家庭役割の分担程度と夫の家事や育児参加の実態を妻がどう認識しているかを確認する。



1. 妻の家事時間と夫妻の家事分担度

  • 夫の帰宅時間が8時前だと妻の家事時間は減少
     妻の一日に行う家事時間がどの程度か、妻の自己申告による絶対的な時間量について尋ねている。平日の場合、妻の年齢別にみると、1日に6時間を超える割合が高いのは30代20代の順であり、それぞれ3割弱が、ついで60代40代50代となっている。平均家事時間もこの順になっており、30代と50代では60分以上の開きとなっている。新たな子どもの誕生による家族の拡大・成長によって派生する種種の家事時間が、30代,20代で多いことと符合する。休日の場合は、多少平日とは年齢別の家事量に差異がみられる。1日に6時間を超える割合が最も高いのは、平日と同様30代の妻でほぼ3割であるが、続いて40代で、20代と50代が拮抗し2割強程度である。1日平均の家事時間もこの年代順に並んでおり、20代と30代の妻ではほぼ50分の差がある。平日と休日では20,60代で家事量が軽減されるのに対し、逆に、40,50代の妻で増加している。パートなどで働く妻が多いこの世代で、平日分の家事をカバーしていることが考えられる。20代で日曜日に短縮されるのは、夫の家事協力の度合いとも関係があるかもしれない。
図6 妻の年齢別にみた家事時間(平日、休日)
妻の年齢別にみた家事時間(平日、休日)


     妻の従業上の地位別にみると、その差は年齢以上に明らかで、フルタイムで働く女性の平均家事時間はパートや自営の妻に比べるとほぼ1時間、専業主婦に比べると150分以上短い。しかし、平日に4時間以上家事を行うものも3割近くいる。その分を休日にまとめて行う様子が平均で平日より100分以上増加することに表れている。
図7 妻の従業上の地位別にみた家事時間(平日)
妻の従業上の地位別にみた家事時間(平日)


     つぎに、親との居住関係別にみると、休日の家事時間では同居の方が高くなる。しかし、時間の制約がある平日でみると、同居の方が家事時間は短く、さらに自分の親と同居している妻の場合で夫の親との同居よりも家事量は少ない。
図8 親との同別居別にみた家事時間(平日)
親との同別居別にみた家事時間(平日)


     また、夫の帰宅時間による差をみると、8時前に夫が帰宅する場合では、8時以降の帰宅に比べると平均で30分近く妻の家事時間は短くなっている。夫の帰宅時間によって妻の負担が軽減されている可能性がある。
図9 夫の帰宅時間別にみた家事時間(平日)
夫の帰宅時間別にみた家事時間(平日)


  • 共働きでも、3割弱の夫は家事分担をしない
     夫妻の家事分担度は、家事の時間量よりも家庭での性別役割分業の程度を知る指標となる。今回の調査では妻が家事全体のうちどの程度を担っているか設問している。まず年齢別にみると、妻集中型ともいえる家事の80%以上を妻が担っている家族は、いずれの年齢層も8割を超え、妻40歳代の家族ではほぼ9割がこれにあたる。妻集中型のうち、妻が100%行い夫が全く家事を分担しない家庭が、50代ではほぼ4割に達し60代や40代でもほぼこれに近い。30代20代ではその割合は低くなるものの、20代でも4世帯に1世帯は、妻任せの家事分担となっている。ただ、60代では、夫傾倒型(夫が60%以上)ともいえる妻より夫の分担度が高い家庭が6.3%、ほぼ平等に行う分担型(40-60%)の4.2%を加え、夫が比較的家事参加している割合がどの年齢層よりも高いことは注目される。
図10 妻の年齢別にみた妻の家事分担割合
妻の年齢別にみた妻の家事分担割合


     つぎに、妻の従業上の地位別にみた場合、やはり、いずれの場合も妻への集中型(80%以上)が高くなっており、このタイプがフルタイム労働で8割弱(77.6%)、専業主婦では9割を占めている。100%妻が家事を行う家庭は、専業主婦ではほぼ4割、常雇で3割弱(27.6%)となっている。また、常勤で働く妻の家庭でも、わりと夫が家事参加をしている分担型、夫傾倒型を合わせても、わずか1割程度であり、夫の家事への協力が得にくい状況が読みとれる。
図11 妻の従業上の地位別にみた妻の家事分担割合
妻の従業上の地位別にみた妻の家事分担割合



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