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国立社会保障・人口問題研究所

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 9 わが国の長寿化の要因と社会・経済に与える影響に関する人口学的研究(平成23〜25年度)

(1) 研究目的
 わが国の平均寿命は20世紀後半に著しい伸長を遂げ,2008年には,男性79.29年,女性86.05年と,現在, 世界有数の長寿国として国際的に見てもトップクラスの水準を誇っている。そして,「日本の将来推計人口(平 成18年12月推計)」によれば,平均寿命は2055年には男性83.67年,女性90.34年(死亡中位仮定)に達す ると推計されており,今後も長寿のフロントランナーとして走り続けるものと見込まれる。
 このような,世界にも類を見ない長寿化のメカニズムと背景,また,これらが日本社会に与える影響を的確 に捉えるためには,死亡データベースの構築とそれに基づいた人口学的分析を中心としつつ,社会・経済面 や医学・生物学的視点などに基づく学際的アプローチが不可欠である。また,寿命に大きく影響を与え,生 存のクオリティの大きな要素である健康に関してもあわせて分析を行う必要がある。しかしながら,長寿化 の要因・影響に関し,人口学的分析を核としながら,関連分野との連携を図って総合的な知見を得る研究の 蓄積は未だに多くないのが現状である。
 そこで,本事業は,海外の先進的な死亡データベースの事例を情報収集し,わが国の生命表を人口分析の 目的から総合的に再編成した「日本版死亡データベース(Japanese Mortality Database,以下JMD)」を構築し, 長寿化について健康を含めた多角的かつ学際的なアプローチに基づく総合的な分析を行うとともに,長寿化 が社会・経済に与える影響についても考察を行う。そして,これらを通じて,豊かな経験と知識を持つ健康 な高齢者の社会参加に基づいて経済の成長を目指す,新たな「知識集積型長寿社会モデル」提示のために必 要な基礎的研究を蓄積する。
 本研究は,わが国の長寿・健康に関するこれまでにない総合的な知見の集積をもたらさすと同時に,各方 面の施策立案への応用にも資するものである。

(2) 研究計画
 本事業では3つのパートに分けて研究が進められる予定であり,パート内の詳細項目について重点的に取 り組む年次とあわせて研究方法及び研究計画を示すと以下の通りとなる。
@ 日本版死亡データベース(JMD)の構築
・ データベース企画(H23)
・ データベース開発(H23〜H25)
・ データベース公開準備・公開(H25)
A 人口学方法論からの分析
・ 長寿化に関する人口学的分析(H23〜H24)
・ 健康生命表分析・健康状態変化のモデリング(H23〜H25)
・ 高齢者人口推計の感度分析など死亡が人口変動に及ぼす影響評価分析(H24〜H25)
B 学際的アプローチによる実体分析
・ 医学・生物学的視点から見た長寿化分析(H23〜H24)
・ 社会・経済面からの長寿化・健康分析(H23〜H25)
・ 長寿化が社会・経済に及ぼす影響(H24〜H25)
 (ただし,年次は重点的に取り組む年次を示したものであり,実際の研究事業では全項目が並行的に行われ る予定である。)

(3) 研究組織の構成
担当部長 佐藤 龍三郎(国際関係部長)
所内担当 橋重郷(副所長),白石紀子(情報調査分析部第3室長),
     別府志海(同部主任研究官),野口晴子(社会保障基礎理論研究部第2室長),
     泉田信行(社会保障応用分析研究部第1室長),石井 太(人口動向研究部第3室長)
所外委員 河野稠果(麗澤大学名誉教授),
     鈴木隆雄(国立長寿医療研究センター研究所所長),
     堀内四郎(ニューヨーク市立大学教授),
     ジョン・ウィルモス(カリフォルニア大学バークレー校准教授)

(4) 研究成果の公表予定
 プロジェクト報告書(所内研究報告)