厚生労働科学研究費補助金



(政策科学推進研究事業)

10 社会保障と私的保障(企業・個人)の役割分担に関する実証研究(平成15 〜 17 年度)

・平成15 年度社会保障給付費の推計

(1) 研究目的

 本研究は,社会保障と私的保障の役割分担を明確にし,公私の役割分担を明確にした社会保障パッケージのあり方を以下の4 つの視点から考察することを目的としている。具体的な研究テーマは以下の通り。(1)公的年金の役割に関する研究,(2)企業からみた社会保障,(3)社会保障の枠組みに関する研究。

(2) 研究計画

 1 年目に当たる平成15 年度は,日本における企業負担の実態把握の手法について既存研究や調査統計等のサーベイを行ったうえで,企業の財務戦略と企業年金の関係,および企業年金の労働インセンティブについて考察した。また,年金の未加入問題についてパネル的データによる分析を行った。さらに,パートタイム労働者の実態把握を行い,厚生年金適用拡大の財政的影響についてシミュレーション分析を行った。
 2 年目に当たる平成16 年度は,大企業を対象とする福利厚生に関するアンケート調査を実施し,企業負担の実態と福利厚生制度の維持・廃止に関する姿勢や代行返上についての企業の意識を調査するとともに,各国の社会保障制度と企業福祉の関係について研究した。また,日本における住宅保障について,公的主体と私的主体(特に企業)の果たしてきた役割を考察した。国民年金の未加入問題については「国民生活基礎調査」に基づく分析を進めた。
 3 年目に当たる平成17 年度は,前年度の研究を継続するとともに,国民年金の未納・未加入行動が経済厚生に与える影響,企業が私的保障を提供する要因に関する分析,米国における民間介護保険市場の動向に関する調査を新たに行った。

(3) 研究会等の開催状況

平成18 年1 月31 日
「社会保障・私的保障(企業・個人)の役割分担に関する実証研究」ワークショップ

(4) 研究組織の構成

主任研究者
府川哲夫(社会保障基礎理論研究部長)
分担研究者
大石亜希子(社会保障基礎理論研究部第2 室長),山本克也(同部第4 室長),
菊地英明(同部研究員),佐藤 格(同部研究員)
研究協力者
酒井 正(企画部研究員),菊池 潤(客員研究員)

(5) 研究結果の公表

 本事業による研究成果の一部は『季刊社会保障研究』Vol. 39 No. 3,Vol. 40 No. 3,『海外社会保障研究』第153 号,および国立社会保障・人口問題研究所のディスカッションペーパーに発表した。また,本年度の研究成果として総括・分担研究報告書をとりまとめるとともに,3 年間の研究成果を総合研究報告書にとりまとめた。




11 医療等の供給体制の総合化・効率化等に関する研究(平成16 〜 18 年度)

(1) 研究目的

 本研究は,医療機関の機能分化と連携やプライマリ・ケアの導入など医療提供体制に関する重要課題について学際的・理論的検討と実証的分析等を行い,高齢社会における医療等の提供体制の総合化・効率化のビジョン(グランドデザイン)を明らかにするとともに,その実現に向けた政策手段の検討と政策提言を行うことを目的とする。本研究の実施により,@医療行政政策への貢献,A地域医療関係者の活動指針としての活用,B医療研究への寄与が期待できる。

(2) 研究計画

 本研究は3 年計画であり,大きな枠組みとして,@主に平成16 年度:医療等の供給体制の構造分析とグランドデザインに関する理念的検討,A主に平成17 年度:グランドデザインと現実の乖離とその原因等に関する実証的検討,B主に平成18 年度:グランドデザインを実現するための政策手段の検討と政策提言の3 つの「柱」に沿って個別具体的な研究テーマを設定し検討を行ってきた。本年度は,平成16 年度に設定した研究枠組みを再確認した上で,それに沿って各分担研究者および研究協力者が研究を発展させる形で進めた。また,その中間成果については,第2 回研究会で報告し討論を行った。また,医療供給の問題については現地調査等が重要であるため,平成16 年度に引き続き精力的に現地調査を行った。

(3) 研究会等の開催状況

第1 回研究会(平成17 年6 月24 日)
平成17 年度の研究の進め方,調査地域及び医療関係者の連携などについて検討した。
第2 回研究会(平成17 年11 月30 日)
平成17 年度分担研究者等の研究の進捗状況について,報告と討論を行った。

(4) 研究組織の構成

主任研究者
島崎謙治(政策研究調整官)
分担研究者
泉田信行(社会保障応用分析研究部第1 室長),
山本克也(社会保障基礎理論研究部第4 室長),米山正敏(企画部第1 室長),
尾澤 恵(社会保障応用分析研究部研究員),
郡司篤晃(聖学院大学大学院政治政策学研究科教授),
大和田潔(東京医科歯科大学臨床助教授),
松本勝明(国立保健医療科学院福祉サービス部長),
佐藤雅代(北海道大学公共政策大学院特任助教授)
研究協力者
本田達郎(企画部長),川越雅弘(社会保障応用分析研究部第4 室長),
葛西龍樹(福島県立医科大学医学部教授),
山田康介(北海道家庭医療学センター十勝更別サイト所長),
坂巻弘之(医療経済研究機構研究部長),箕輪良行(聖マリアンナ医科大学救急医学教授),
井部俊子(聖路加看護大学学長)

(5) 研究結果の公表

 本研究の成果は,平成17 年度総括・分担研究報告書としてとりまとめて厚生労働省に提出するとともに,関係団体および研究者に配布した。なお,各研究者はそれぞれの所属する学会および学術雑誌への投稿等を行い,積極的な成果の普及に努めている。




12 人口減少に対応した国際人口移動政策と社会保障政策の連携に関する国際比較研究(平成16 〜 18 年度)

(1) 研究目的

 本研究は,先進諸国等における国際人口移動と移動者の社会的統合の実態・政策,それに伴って必要となる社会保障政策との連携に関する分析を行い,各国の実態・政策の比較検討を行うことにより,人口減少に直面するわが国における国際人口移動政策と社会保障政策の連携の可能性を検討することを目的とする。

(2) 研究計画

 本研究は,平成16 年度から3 年間にわたり,@先進諸国等における国際人口移動と移動者の社会的統合・社会保障制度利用(医療・労働保険,年金等)についての実態・政策に関する資料収集と分析,A先進諸国等における国際人口移動政策と社会保障政策の連携に関する資料収集と分析,B以上を踏まえた,わが国における国際人口移動と移動者の社会的統合・社会保障制度利用についての実態・政策,国際人口移動政策と社会保障政策との連携に関する比較分析と政策的含意導出の三者を目的として実施する。
 初年度の平成16 年度は一部の先進諸国等と国内における国際人口移動と移動者の社会的統合の実態・政策に関する資料収集,外国人労働者の社会保障制度加入を中心とする国際人口移動政策と社会保障政策の連携に関する資料収集,それらに基づく文献レビューを行うとともに,その結果を踏まえて国内における外国人IT労働者の小規模調査を実施した。また,マクロデータと既存ミクロデータの予備的分析も行った。また,国際比較においては,ドイツ・フランスを中心に,欧州の移民・外国人労働者政策と社会的統合政策,及び社会保障政策との連携状況について国際比較を行うとともに,EU 及び関係各国における社会的統合及び社会保障をめぐる最先端の議論を実地調査をもとに整理した。さらに,「外国人労働者の社会保険加入に関する研究会」を立ち上げた。
 第2 年度の平成17 年度は資料収集・分析・研究会を継続するとともに,同研究会の助言も踏まえ,静岡県磐田市においてブラジル人対象の「磐田市外国人市民実態調査(2005 年)」を実施した。同研究会では磐田市における行政関係者からのヒアリング,事業所,ブラジル人学校,国際交流子育て支援事業などの現地調査を実施し,中間報告をとりまとめた。また欧州における国際移動者の社会的統合と登録に関する文献研究を行った。さらに,実証分析では「磐田市外国人生活実態調査」(2004 年)等の詳細な分析を行い,分析結果を学会等で報告するとともに,実地調査の設計に利用した。

(3) 研究会等の開催状況

第1 回 2005 年5 月10 日
西村 淳「年金制度の国際化について(社会保障協定と外国人適用問題)」
第2 回 2005 年7 月20 日
「磐田市外国人実態調査項目案に関する話し合い」
第3 回 2005 年12 月19 日
岩村正彦「外国人労働者と公的医療・年金」
山川隆一「外国人労働者と労働法適用の問題点」
井口 泰「2005 年度欧州調査の結果の概要」
小島 宏「国際人口移動に関する学会報告と情報収集」
以上のほか,2005 年7 月12 日には磐田市で調査実施準備に関する協議を行い,9 月28 日には「外国人労働者の社会保険加入に関する研究会」を中心として磐田市で現地調査を行った。

(4) 研究組織の構成

主任研究者
千年よしみ(国際関係部第1 室長)
分担研究者
小島 宏(国際関係部長),勝又幸子(企画部第3 室長),
井口 泰(関西学院大学経済学部教授)
研究協力者
島崎謙治(政策研究調整官),
岩村正彦(東京大学法学部教授),山川隆一(慶應義塾大学大学院法務研究科教授),
西村 淳(医療経済研究機構研究主幹),竹ノ下弘久(静岡大学人文学部助教授),
西野史子(早稲田大学人間科学部助手),志甫 啓(関西学院大学大学院経済学研究科),
高橋陽子(早稲田大学人間科学部助手)

(5) 研究結果の公表

 本年度の研究成果は平成17 年度総括研究報告書として取りまとめた。また,研究成果の一部はThe Japanese Journal of Population,Vol. 4, No. 1(2006 年3 月刊)の特集として刊行したほか,各研究者が学会・学術雑誌等で発表した。さらに,磐田市調査報告書『磐田市外国人市民実態調査報告書2005 年』を別途,印刷製本し,磐田市を中心とする関係箇所・関係者に配布し,平成18 年度第1 四半期にポルトガル語版を作成し,調査回答者等に配布した。




13 日本の社会保障制度における社会的包摂(ソーシャル・インクルージョン)効果の研究(平成16 〜 18 年度)

(1) 研究目的

 本研究は,我が国において「社会的排除と包摂(ソーシャル・インクルージョン)」概念を確立し,社会保障制度の企画立案に係る政策評価指標として活用する可能性を探ることを目的としている。研究では(1)諸外国の経験を資料・文献・データから複眼的に捉えて整理するとともに,(2)我が国の社会保障制度の機能を「社会的包摂」の観点から評価し,政策提言を行うものである。具体的には以下の作業を行う。
  1. 日本における社会的排除指標の作成

     欧米における既存研究を参考としながら「社会的包摂−排除」の概念を明らかにし,日本の実状に合った社会的排除の指標を作成する。また,作成された指標を基に,質問紙を設計し,大規模調査を行い。社会的排除と所得・世帯属性・個人属性・ライフヒストリーなどとの関連を分析する。

  2. 社会保障制度による,社会的包摂効果の計測

     既存の大規模統計調査を用いて,社会から排除されていると思われる人々(貧困者,失業者,不安定就労者,障害者など)の状況を定量的に分析する。分析では経済状況を中心に分析するとともに,上記@で作成された社会的排除指標に沿った分析も行う。同時に,公的年金や公的医療保険,生活保護,児童扶養手当等の社会保障制度がこれらの人々に与えている効果(経済的効果だけでなくこれらの人々の主観的満足度等を含む)を計測する。

  3. 被排除者をめぐる既存の定性調査結果の再検討

     近年蓄積が進んでいる,排除されていると考えられる者(失業者・ホームレス等)を対象にした,生活史の定性調査結果を理論・実証の両面から再検討する。

(2) 研究計画

 平成16・17 年度は,平成14 年『社会生活調査』を用いて社会的排除指標およびそれに関連する相対的剥奪指標を構築し,社会的排除のリスクが高いグループの分析,所得との関連等の分析を行った。さらに,欧米における既存の貧困・社会的排除に関する社会調査のサーベイとその概念の整理,『社会生活調査』の問題点を明らかにした上で,調査票を設計し,K 市を対象とする大規模調査を行った。平成18 年度は調査の詳細な分析を行い,その結果をワークショップの開催などによって公表し,学識研究者,実務担当者などとの意見交換を行う。

(3) 研究会等の開催状況

第1 回 平成17 年9 月9 日
西村幸満「スポット市場における技能と訓練の長期的分析―理念,普遍性,変化の分離による試み」
第2 回 平成17 年12 月26 日
稲田七海「離島の介護」
第3 回 平成18 年1 月24 日
安江鈴子(新宿ホームレス支援機構)「東京都における路上生活者支援と地域生活移行支援事業」
『社会生活に関する実態調査』実施状況
平成17 年9 〜 10 月 調査方針の決定,調査地の選定
平成17 年11 月 A 市との折衝
平成17 年12 月〜平成18 年1 月 調査票の設計
平成18 年1 月 対象者の抽出
平成18 年3 月 調査実施

(4) 研究組織の構成

主任研究者
阿部 彩(国際関係部第2 室長)
分担研究者
大石亜希子(社会保障基礎理論研究部第2 室長),
西村幸満(社会保障応用分析研究部第2 室長),菊地英明(社会保障基礎理論研究部研究員),
後藤玲子(立命館大学大学院先端総合学術研究科教授)
研究協力者
稲田七海(客員研究員)

(5) 研究結果の公表

  1. 論文発表
  2. 学会発表等





14 我が国の所得・資産格差の実証分析と社会保障の給付と負担の在り方に関する研究(平成16 〜 17 年度)

(1) 研究目的

 本研究は,「所得再分配調査」等を用いた実証分析に基づき,我が国の所得格差・資産格差の実態を明らかにし,さらにOECD 諸国等,諸外国の状況についても比較分析を行った上で,制度改革による所得再分配効果と家計ベースでみた負担と給付を視点に,持続的成長と所得・資産格差是正との調和を可能とする社会保障の在り方やその条件について考察・研究することを目的とする。

(2) 研究計画・実施状況

 平成16 年度は,所得格差の実態把握と再分配効果の計測,及び家計ベースでみた社会保障負担の在り方の分析を行うために,「所得再分配調査」等の使用申請を行い,再集計作業を行った。国際比較については,平成16 年度,カナダ日本社会保障政策研究円卓会議を活用した税財源による年金・医療及び家族手当・控除制度のもとでの再分配効果と我が国との比較研究を行った。また,OECD における所得格差の国際比較研究と医療・介護の実態に関する比較研究と情報交換等を行った。
 平成17 年度は,「所得再分配調査」の再集計を引き続き行うとともに,その結果に基づいて,男女別・世帯構造別・コホート別・就業形態別等,給付と負担の在り方に関わる区分を考慮した所得格差の要因に関する分析と再分配効果に関する実証分析を行った。また,所得格差の変動を時系列的に見るために,カーネル密度推定を用いて所得分布の変化を計測した。
 所得格差と社会保障の給付と負担に関する研究として,先進諸国の年金改革の動向を把握しつつ実証分析を行った。持続可能な年金財政を実現するための負担と給付の在り方については,今日どの国においても,世代ごとの負担と給付の関係が過度に相違しないようにする世代間の公平性と,同一世代内の所得格差の是正を図る世代内の公平性とが配慮されている。したがって,先進諸国における給付と負担の在り方をめぐる年金改革の動向,経済成長との関係,所得再分配機能について分析した。所得格差と医療の給付と負担については,負担能力に応じた自己負担が拡大した我が国と,税財源による国民医療制度を維持しているカナダとの比較を行うため,マクマスター大学経営大学院のジム・ティエッセン教授からヒアリングを行った。
 さらに,所得格差の要因には所得変動が個人個人で異なることもあるため,低所得が一時的か恒常的かを含めた生活実態を把握するため調査会社に業務委託を行い,転職,離職,引退などによる所得変動の実態と所得格差及び再分配政策に対する人々の意識をアンケート調査し,所得変動の影響を受けやすい非正規就業者や低所得者層に対する所得再分配の在り方を検討するためのエビデンスを収集した。
 一方,資産格差についてもルクセンブルク資産研究の動向を踏まえた国際比較を行った。
 また,OECD の所得格差国際比較研究については,外国研究者招聘事業を活用して,OECD 雇用労働社会局のマルコ・ミラデルコーレ上席研究官を招聘し,所得格差指標の感度分析によっても我が国の所得格差が北欧・西欧より高くアメリカより若干低い位置にあることを確認するなどの研究協力を進めた。

(3) 研究会等の開催状況

第1 回 2005 年6 月30 日
ジム・ティエッセン(マクマスター大学経営大学院教授)
「医療給付の評価における所得格差要因の位置づけ」
第2 回 2005 年7 月4 日
ジム・ティエッセン(マクマスター大学経営大学院教授)
「所得格差への対応を考慮した地域医療の給付と負担の在り方」
第3 回 2005 年12 月7 日
マルコ・ミラデルコーレ(OECD 雇用労働社会局上席研究官)
「女性の働き方と所得格差―子どものいる世帯の貧困率を視点に―」

(4) 研究組織の構成

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主任研究者
金子能宏(社会保障応用分析研究部長)
分担研究者
小島克久(社会保障応用分析研究部第3 室長),
山本克也(社会保障基礎理論研究部第4 室長),
橘木俊詔(京都大学経済学部教授),山田篤裕(慶應義塾大学経済学部助教授),
森田陽子(名古屋市立大学経済学部助教授),宮里尚三(日本大学経済学部専任講師),
チャールズ・ユウジ・ホリオカ(大阪大学社会経済研究所教授),
跡田直澄(慶應義塾大学商学部教授),澤田康幸(東京大学経済学部助教授),
前川聡子(関西大学経済学部助教授),高木真吾(北海道大学経済学部助教授),
吉田有里(甲南女子大学人間科学部講師),高山憲之(一橋大学経済研究所教授),
有田冨美子(東洋英和女学院大学教授),小川 宏(神奈川大学経済学部助教授),
大山昌子(東京経済大学経済学部助教授),水落正明(お社の水女子大学COE 研究員),
吉田 浩(東北大学経済学部助教授)
研究協力者
稲田七海(客員研究員),
國崎 稔(愛知学院大学経済学部助教授)

(5) 研究結果の公表

 本年度の研究成果は平成17 年度総括研究報告書及び平成16・17 年度総合報告書として取りまとめた。また,研究成果の一部は,橘木俊詔編著『リスク社会を生きる』(岩波書店),清家篤・山田篤裕著『高齢者就業の経済分析』(日本経済新聞社)の中で引用活用されたほか,各研究者が学会・学術雑誌等で発表した。さらに,平成17 年度政策科学推進研究事業公開シンポジウムにおいて研究成果の概要を報告し,成果の普及に努めた。




15 税制と社会保障に関する研究(平成17 〜 18 年度)

(1) 研究目的

 平成19 年度を目処に税制の抜本的改革が予定されている中,平成17 年度税制改正の答申にあるように,経済社会の構造変化を踏まえて税・社会保障負担のあり方を検討する必要性がある。したがって,本研究は,消費税等の税と社会保険料の転嫁・帰着,国民負担率と経済活動の関係,税と保険料の役割分担,家族政策における手当と税制の関係等に関する実証分析と制度分析を行い,これらの成果を合わせて税制と社会保障の望ましい在り方について研究することを目的とする。

(2) 研究計画・実施状況

 1 年目の平成17 年度は,各種統計データ・文献収集,転嫁と帰着に関する文献研究,各方面(社会保障制度,経済,財政(国家財政及び地方財政)等)の専門家からヒアリングを行うとともに,これらの成果に制度論的分析を加えた論点に基づき,計量分析を用いて制度改正を行った場合の影響分析等を行った。とくに社会保障財源として消費税を利用することについて議論が進んでいるなかで,税の転嫁と帰着に関する時系列分析の応用と,企業に対するアンケート調査を活用して,計量分析を進めた。 また,制度分析においては,消費に課税する付加価値税の税率がより高いEU 諸国の動向やOECD による財政動向分析も活用して,国際的な社会保障と税制との動きをフォローした分析を行った。
 消費税の転嫁に関する実証分析では,(1)本間・滋野・福重(1995)による先行研究の枠組みによる実証分析によっても,1997 年の消費税引き上げは,消費者物価指数の変化において転嫁していること,(2)先行研究と同様の推定式を用いた場合,消費税導入では3% の消費税率に対して,1% ポイントの影響だったのに対して,97 年の場合には,2% の引き上げに対して1% ポイント以上の影響であり,転嫁の程度は97 年の方が大きかったという結果が得られた。ただし,物価総合指数からの個別消費財(第i 品目)の乖離を算出すると,その分布にはゆがみがあり,相対価格が一様に変化するわけではなく,各財の間で価格伸縮性に相違があることに留意して,価格伸縮性の指標として渡辺・細野・横手(2003)が提示した指標を用いて,これを説明変数に加えた場合の価格転嫁に関する実証分析を行った。その結果,消費税導入時点と97 年の消費税率引き上げともに価格転嫁が生じていることを示す結果などが得られた。
 また,制度分析では,社会保障法学的観点からの分析と国際比較研究を実施した。前者の分析については,社会保険料および事業主負担の規範的性格について整理や類型化は可能であるが,その帰着・転嫁まで考えると,その影響は非常に複雑である。また,消費税との相違もそれほどではない可能性がある。したがって,制度分析においても実証分析の成果を参照し,理論的構築と考察を深めることの必要性が確かめられた。
 2 年目の平成18 年度は,以上のような1 年目の結果を踏まえ,企業アンケート調査のフォローアップと所得・消費・資産等の課税ベースの選択と保険料との関係及びその帰着(分配面への影響等)を見るための実証分析,並びに制度論的分析を進める。そして,これらの成果を反映させたモデル分析等による推計を活用しつつ,税制と社会保障の主要な論点について今後のグランドデザインの構築を行う。
 なお,研究に漏れがないかどうか等について,以下の主要な論点を中心に,宮島洋教授(早稲田大学)や小西砂千夫教授(関西学院大学)などの所外の有識者からアドバイスを受けながら,研究を行う。

(3) 研究会等の開催状況

第1 回 2005 年6 月5 日
宮島 洋
「転嫁と帰着の分析枠組みに対する視点と展望」
第2 回 2005 年10 月14 日
小西砂千夫
「政治経済学的要素を考慮した場合の転嫁と帰着の分析視点」
第3 回 2005 年11 月8 日
村上忠行(全労済常務理事)
「日本経済の動向と事業主負担の意義と実態」
第4 回 2006 年1 月6 日
神津里季生(新日本製鉄労働組合連合会会長)
「事業主負担が労使関係に及ぼす影響」
第5 回 2006 年2 月24 日
「平成17 年度の研究成果の概要」に関するワークショップ

(4) 研究組織の構成

主任研究者
金子能宏(社会保障応用分析研究部長)
分担研究者
島崎謙治(政策研究調整官), 本田達郎(企画部長),米山正敏(同部第1 室長),
山本克也(社会保障基礎理論研究部第4 室長),
小島克久(社会保障応用分析研究部第3 室長),尾澤 恵(同部研究員),
酒井 正(企画部研究員),
漆原克文(川崎医療福祉大学医療福祉学部教授),
加藤久和(明治大学政治経済学部教授),佐藤雅代(北海道大学公共政策大学院特任助教授),
宮里尚三(日本大学経済学部専任講師)
研究協力者
宮島 洋(早稲田大学法科大学院教授),小西砂千夫(関西学院大学経済学部教授),
山重慎二(一橋大学大学院経済学研究科助教授),
横山由紀子(兵庫県立大学経営学部専任講師)

(5) 研究結果の公表

 本年度の研究成果は平成17 年度総括研究報告書として取りまとめた。また,研究成果の一部は,国立社会保障・人口問題研究所ディスカッションペーパーとして公表したほか,各研究者が学会・学術雑誌等で発表した。




16 国際比較パネル調査による少子社会の要因と政策的対応に関する総合的研究(平成17 〜 19 年度)

(1) 研究概要

 本研究は,平成14 年度から16 年度まで3 年間実施してきた「「世代とジェンダー」の視点からみた少子高齢社会に関する国際比較研究」プロジェクトをふまえた上で,新たにパネル調査の実施や政策効果に関する研究を行う総合的研究を企図したものである。日本を含む国際比較可能なマクロ・ミクロ両データの分析に基づいて,結婚・同棲などを含む男女のパートナー関係,子育て関係などの先進国間の共通性と日本的特徴を把握し,これによって,日本における未婚化・少子化の要因分析と政策提言に資することを目的とする。

(2) 研究方法・実施状況

 日本では少子化の急速な進行にともない,年金や医療といった社会保障制度の根幹が揺るぎつつあり,少子化の背景を明らかにし,実効性のある少子化対策を行うことが重要な政策課題となっている。少子化は程度の差こそあれ先進諸国で共通して見られる現象であり,各国とも少子化対策を実施しており,他の先進国との比較は日本の少子化対策を考える上で有益である。また,日本をはじめとする先進諸国における少子化は家族の変化(世代関係・ジェンダー関係)と密接に関連しており,社会経済に加え家族のあり方の変化という視点からも,少子化問題を考える必要がある。
 本プロジェクトでは,先進諸国の少子化の要因と政策的対応を国際比較するために,「結婚と家族に関する国際比較研究会」を組織し,国連ヨーロッパ経済委員会(UNECE)人口部が企画・実施している国際研究プロジェクト「世代とジェンダー・プロジェクト(GGP)」に参加している。本プロジェクトは,国連人口部が企画したこの国際共同プロジェクトの中核部分であるパネル調査(「世代とジェンダーに関するパネル調査(GGS)」)を日本でも実施し,そこから得られる少子化のミクロ的側面に関するパネル・データと雇用・労働政策や家族・子育て支援政策といった少子化のマクロ的側面に関するコンテキスト・データを連結させて因果関係を分析する新手法によって,未婚化や晩婚化といったパートナー形成(ジェンダー関係)と少子化(次世代育成・世代関係)の日本的特徴を明らかにし,これと諸政策との関連を他の先進国との比較を通じて検討する。この方法により,先進国との比較という広い視野から,日本における未婚化・少子分析と少子化対策についての政策提言を行うことを目標とする。
 本研究は,個人を単位とした調査の実施・分析(ミクロ・データ)と各国の法制度の改革時期や行政統計データを含むマクロ・データ・ベースの構築という,大きな2 つの柱からなる。前者のミクロ・データについてはドイツのマックスプランク人口研究所が中心となり質問検討委員会が構成され,比較可能な共通のフレームで実査を行う。後者は,フランス国立人口研究所が中心となってデータ・ベース委員会が構成され,マクロ・データに関する基本方針が決定される。これら2 つの委員会の方針に従って,各参加国は調査実施とマクロデータの提供を行う。さらに,ミクロ班で設定されたテーマのもと,ミクロ・データ,マクロ・データを用いて多層的な国際比較研究を行う。17 年度は,おもに以下の活動を行った(初年度)。
 第1 に,国連ヨーロッパ経済委員会が10 月にトルコのイスタンブールで開催したGGP の国際会議に出席した。この会議では,過去1 年間の日本のGGP 研究プロジェクトの進捗状況と今後の研究予定について報告を行った。さらに,会議では第2 回目のパネル調査の調査票,調査実施プロセスなどについて参加各国と議論した。加えて,GGP の重要な要素の一つであるコンテキスト・データについても,収集する変数の種類や期間について, 日本の状況を説明しながら意見交換を行った。
 第2 に,日本で行う第2 回目のパネル調査のための予備調査を行った。この調査に際しては,まず,平成16 年度に実施した第1 回目のパネル調査(「結婚と家族に関する国際比較調査」)の調査票の質問項目一つ一つを再吟味した。その後,質問項目をパネル調査に適した形に修正し,予備調査用の調査票を新に作成し,予備調査を実施した。予備調査実施後は,調査回答者と調査員に対して,ヒアリング調査を行った。調査回答者に対するヒアリング調査では,予備調査の調査票の一つ一つの質問項目に対して,質問文の分かり易さや回答のしづらさを調査回答者に尋ね,第2 回目のパネル調査の調査票の作成に際しての改善点や修正点を明らかにすることができた。他方,調査員に対するヒアリングでは,調査票の回収状況を尋ねることで,調査地点の地域性の違いや回答者の年齢や性別による回収状況の違いを把握することができ,これによって,第2 回目の本調査の回収率を向上させるための示唆を得ることができた。
 第3 に,日本のコンテキスト・データの収集とデータ・ベースの構築を行った。コンテキスト・データは人口,賃金,雇用,年金,医療,育児支援,住宅,福祉政策など個人の結婚や出産した広範囲にわたる指標を国際比較可能な形で収集することを目標としている。本年度は人口,賃金,雇用などのデータについて,1970 年代以降を中心に,全国と地域レベルの時系列データを収集し,データ・ベースの整備を進めた。また,本データを利用して一次的な分析を行った。
 第4 に,第1 回のパネル調査の概要をまとめたニューズレターを作成し,調査協力者に送付した。これは調査協力者に調査結果をフィード・バックし,本研究プロジェクトへの理解をより深めてもらうとともに,第2 回パネル調査への協力をスムーズにすることを目的にしている。
 第5 に,日本とヨーロッパ諸国のミクロ・データを用い国際比較分析を行った。本年度は主に未婚化,仕事と家庭の両立について,日本と他先進諸国にどのような違いが見られ,そこからどのような政策的インプリケーションが導き出せるかを検討した。これらの分析の成果は,「人口問題研究」等に公表した。

(3) 研究組織の構成

主任研究者
西岡八郎(人口構造研究部部長)
分担研究者
福田亘孝(人口構造研究部第1 室長),
津谷典子(慶應義塾大学経済学部教授)
研究協力者
赤地麻由子(元人口構造研究部研究員),
岩間暁子(和光大学人間関係学部助教授),
田渕六郎(名古屋大学大学院環境学研究科助教授),
吉田千鶴(関東学院大学経済学部講師),星 敦士(甲南大学文学部講師),
菅 桂太(慶應義塾大学大学院生)





17 少子化関連施策の効果と出生率の見通しに関する研究(平成17 〜 19 年度)

(1) 研究目的

 我が国の近年の出生率低下には,2 つの特徴,すなわち1)晩婚化・未婚化による出生率低下と,2)夫婦出生力低下がある。とくに夫婦の生む子ども数の減少傾向は,今後の日本人口の動向と,そのもとにおける経済・社会保障システムに極めて強い影響を及ぼすものと懸念されている。政府は,2002 年9 月に「少子化対策プラスワン」を公表し,少子化対策をより一層強化することを明らかにした。その後,2003 年に「次世代育成支援対策推進法」や「少子化社会対策基本法」が立法化され,2004 年には「少子化対策大綱」が閣議決定され,従来の「子育て支援」政策から「出生率上昇」政策へとより積極的に少子化問題への取り組みを始めてきている。一方で,こうした少子化対策については,その政策の効果を評価し,より一層効果的な施策展開を行うことが強く求められている。

(2) 研究計画

 本研究は,次の3 つのテーマに沿って研究を実施する。
  1. 少子化対策要因の出生率におよぼす影響評価に関する研究

     マクロ計量経済モデルによる少子化対策要因ならびに家族・労働政策要因のシミュレーション研究により,保育キャパシティ(保育需要に対する施策拡大),出産育児の機会費用(女性就業の制約改善による育児コストの低減)等の施策要因が合計特殊出生率の動向にどのような効果を及ぼすかを測定評価する。

  2. 地方自治体の少子化対策に関する効果研究

     自治体において取り組まれる少子化対策(少子化対策の行動計画)が,具体的に自治体単位の出生率にどのような変化をもたらしているのかを分析する。各自治体における少子化対策以外の施策や,自治体の置かれている様々な環境条件との組み合わせも考慮して自治体における少子化対策の効果を評価し,そのあり方について施策提言する。

  3. 少子化の見通しならびに少子化対策に関する有識者デルファイ調査

     近年,人口学・経済学・社会学等様々な研究領域において,少子化の見通しや少子化対策に対する考え方について議論が展開されつつある。本調査では,それら専門家の少子化対策に対する評価,ならびに少子化の見通しに関する意見をデルファイ法による調査で把握,分析し,少子化対策改善のための基礎資料を得る。また,今後実施される将来人口推計の議論展開に寄与するための基礎資料として活用する。

(3) 研究実施状況

 以下に掲げる研究課題別に研究会を開催し,平成17 年度研究報告書を取りまとめた。
  1. マクロ・モデルによる少子化対策要因の出生率に及ぼす影響について
    1. 女性の就業形態の変化を考慮した出生率モデルのシミュレーション分析
    2. 結婚・出産の機会費用とその経済的損失の推計
  2. 社会経済分析による少子化対策要因の出生率に及ぼす影響に関する研究
    1. 大都市圏のキャリアカップルにおける育児期のwork-family interface について
    2. 失業や非正規就業が結婚・出生行動に与える影響について
    3. 有配偶者における出生力および無子割合変化の分析
    4. コーホート分析の方法の検討
    5. 女性の就業と結婚・出産に関する研究
  3. 地方自治体の少子化対策に関する効果研究
  4. 少子化の見通しならびに少子化対策に関する有識者デルファイ調査の実施

(4) 研究組織の構成

主任研究者
高橋重郷(副所長)
分担研究者
佐々井 司(人口動向研究部第1 室長),安藏伸治(明治大学政治経済学部教授)
研究協力者
大石亜希子(社会保障基礎理論研究部第2 室長),別府志海(情報調査分析部研究員),
守泉理恵(人口動向研究部研究員),
大淵 寛(中央大学経済学部教授),和田光平(中央大学経済学部助教授),
加藤久和(明治大学政治経済学部助教授),仙田幸子(千葉経済大学経済学部助教授),
永瀬伸子(お茶の水女子大学生活科学部助教授),
渡邉吉利(エイジング総合研究センター主任研究員),君島菜菜(同研究員),
新谷由里子(武蔵野大学非常勤講師),福田節也(明治大学政治経済学部助手)





18 将来人口推計の手法と仮定に関する総合的研究(平成17 〜 19 年度)

(1) 研究目的

 世界でもトップクラスの少子高齢化が進み,恒常的人口減少が始まろうとする現在のわが国において,社会経済の制度設計,施策立案に不可欠な将来推計人口の重要性はかつてない高まりを見せている。しかしながら,同時に前例のない少子化,長寿化は人口動態の見通しをきわめて困難なものとしている。本研究では,こうした中で社会的な要請に応え得る科学的な将来推計の在り方を再検討し,手法および人口の実態の把握と見通しの策定(仮定設定)の両面から推計システムを再構築することを目的とする。本事業は,公的将来推計人口策定における精度向上と説明責任の遂行に資することを一つの目的とするが,その前提となる科学的理論・手法に対する学術的,技術的検討が主眼であることから,公的推計の策定作業とは異なり,特定の組織の枠を越えた国内外の研究協力体制をつくることで関連諸分野の学術的知見の集積を行うこととする。

(2) 研究計画

 本研究においては,第1 に,人口推計手法の枠組みとして従来から最も広く用いられている1)コーホート要因法の再検討を行い,新たな手法としての2)確率推計手法,3)計量経済学的手法,4)シミュレーション技法等の有効性を検討した。第2 に人口動態率(出生率,死亡率および移動率)の将来推計に関する先端的な手法について国際的な議論を踏まえ,推計手法および将来の動向に関する理論について,従来の方法・理論との比較,有効性と限界の検証等を行った。第3 に人口状況の実態の測定と分析,出生,死亡,国際人口移動の見通し策定に関する科学的方法論について検討し,わが国ならびに諸外国の人口状況と動向の国際的,横断的把握,データ集積およびデータベース化を行い,上記において開発されたモデル,手法を適用することにより,人口動態率の今後の見通しに関する把握と提言を行った。以上の研究は並行して行い,主として第1 年次においては各研究分野における,文献,ソフトウェア等の収集,検討,ならびに基礎的な理論,モデル,手法等の技術的特徴,有効性,公的推計システムへの適用可能性,課題等についての検討を行い,第2 年次においては,それらのわが国への応用,実データの分析,システム開発を行い,さらに第3 年次においてはそれらソフトウェアの整備,シミュレーション分析,システムの評価等を行う。

(3) 研究組織の構成

主任研究者
金子隆一(人口動向研究部長)
分担研究者
石井 太(企画部第4 室長),
岩澤美帆(人口動向研究部・社会保障応用分析研究部主任研究官)
研究協力者
石川 晃(情報調査分析部第2 室長),三田房美(企画部主任研究官),
守泉理恵(人口動向研究部研究員),
国友直人(東京大学経済学部教授),稲葉 寿(東京大学理学部助教授),
堀内四郎(ロックフェラー大学準教授),
大崎敬子(国連アジア太平洋経済社会委員会委員),
エヴァ・フラシャック(ワルシャワ経済大学教授),
スリパッド・タルジャパルカ(スタンフォード大学教授)





(障害保健福祉総合研究事業)

19 障害者の所得保障と自立支援施策に関する調査研究(平成17 〜 19 年度)

平成17年度総括研究報告書PDF版全文はここから圧縮ファイル(ZIP)でダウンロードしていただけます。

(1) 研究の目的

 本調査の目的は,社会福祉基礎構造改革の理念である,障害者がその障害の種類や程度,また年齢や世帯状況,地域の違いにかかわらず,個人が人として尊厳をもって地域社会で安心した生活がおくれるようになるために必要な支援はなにか,その支援を続けるためにはどのような制度が必要なのかを検討するための基礎データを得ることである。そして,得られたデータを活用し,経済学や社会学等の多分野の研究者と障害者福祉に関する学際的研究の基盤を構築したい。

(2) 研究計画

 障害者生活実態調査において障害者の生活実態を収入・消費面と生活時間面から明らかにし,健常者との共通点と相違点を分析する。地域格差の大きい居宅支援サービスの理由と実態を解明するため,異なるサービス実態の地域を選択し,障害の種類や世帯状況の違いも考慮した調査設計を行う。
 調査は障害者の生活実態を正確に把握するために,インタビュー調査を中心に設計する。
 なお,本調査で得られたオリジナルデータを中核として,経済学・社会学等多分野の研究者を招いて,障害者福祉研究に学際的基盤の構築をめざす。特に財政的視点を踏まえて,持続可能な社会保障財政につながる障害者福祉政策の方向性を探る経済学的アプローチも試みる。また,知的障害の定義や障害程度区分,障害者の給付内容の国際比較や年金・税制等他制度との関係についても,さまざまな専門家による学際的研究をおこなう。

(3) 研究会等の開催状況

 2 回の研究会を開催した。
平成17 年7 月29 日
土屋 葉
「障害(碍)者の生活保障実態調査2003 年」の概要と今回調査への示唆
平成17 年11 月25 日
佐藤久夫(日本社会事業大学教授)
「諸外国の法律や実態調査における障害の定義:知的障害に焦点を当てつつ」
実地調査「第1 回 障害者の生活実態調査」を実施した。
時期 平成17 年11 〜 12 月

(4) 研究組織の構成

主任研究者
勝又幸子(企画部第3 室長)
分担研究者
本田達郎(企画部長),遠山真世(立教大学コミュニティ福祉学部助手),
圓山里子(特定非営利活動法人自立生活センター新潟調査研究員)
研究協力者
金子能宏(社会保障応用分析研究部長),
土屋 葉(日本学術振興会特別研究員),三澤 了(DPI 日本会議議長),
栃本一三郎(上智大学総合人間科学部社会福祉学科教授),
福島 智(東京大学先端科学技術研究センター助教授)

(5) 研究結果の公表

 平成18 年3 月に平成17 年度総括・分担研究報告書を取りまとめた。また,平成18 年10 月に東京で開催される,日本社会福祉学会において,自主企画シンポジウムを予定している。各参加研究者が個人名での学会等への報告を予定している。




(統計情報高度利用総合研究事業)

20 パネル調査(縦断調査)のデータマネジメント方策及び分析に関する総合的システムの開発研究(平成16 〜 17 年度)

(1) 研究目的

 本研究は,厚生労働省の実施する2 つのパネル調査(21 世紀出生児縦断調査,成年者縦断調査)における統計データの有効で実際的なマネジメント方策ならびに分析法を検討し,これを実現するシステムを開発することによって,今後継続して蓄積されて行くデータに対処し,次世代の健全育成ならびに少子化傾向をはじめとする国民生活の動態とそのメカニズムの解明に寄与し,諸施策の策定に資することを目的とする。
 厚生労働省は国が講ずべき次世代の健全育成ならびに少子化傾向に対する施策のために,子どもの発育状況や出産・子育て状況の把握ならびに諸施策の効果の測定を主な目的とした2 つのパネル調査(21 世紀出生児縦断調査,成年者縦断調査)を開始したが,これらはわが国の政府統計における初めての大規模なパネル調査であり,データ管理法ならびに分析法について必ずしも十分な蓄積が利用できるわけではない。本研究では,今後継続して蓄積されるこれら縦断調査データの有効で実際的なマネジメント方策ならびに分析法を検討し,これに資するシステムを提言し,一部開発を行う。
 そのために本研究では,先行してパネル調査を実施している諸外国におけるデータマネジメント・分析手法の調査・検討を行い,これらの縦断調査に対する有効性を検討するとともに,すでに実施された両調査のデータに対する各種変数の統計的分析のためのデータマネジメント法,分析法の検討・開発を行った。1 年度目においてはすでに諸外国における先行事業や経験の調査からデータマネジメント,分析法の検討がなされ,基礎的および試験的システムの構築が開始されている。これらの専門的検討結果から得られるデータマネジメント方策及び分析に関する総合的システムは,今後蓄積されて行く縦断調査のデータに対処し,少子化をはじめとする国民生活の動態とそのメカニズムの解明に寄与することが期待され,これらの成果は21 世紀前半わが国の最重要課題とも言える次世代の量的,質的健全育成に対して,わが国が講ずべき諸施策に対し重要な指針を与えるものである。

(2) 研究計画

 研究初年度において,諸外国における先行事業や分析事例の文献調査を行い,データマネジメント,分析法の検討と試験的システムの構築,ならびにデータの不詳・欠損・脱落への対処をはじめとする実態の把握と分析法の検討が行われた。2 年度目にあたる平成17 年度には,これらの研究分析を継続・発展させるとともに,最終年度であることから縦断調査に対する実用的なデータマネジメントシステムの具体的提言をまとめた。

(3) 研究組織の構成

主任研究者
金子隆一(人口動向研究部長)
研究協力者
小山泰代(人口構造研究部第3 室長),釜野さおり(人口動向研究部第2 室長),
三田房美(企画部主任研究官),
岩澤美帆(人口動向研究部・社会保障応用分析研究部主任研究官),
阿藤 誠(早稲田大学人間科学学術院特任教授),津谷典子(慶應義塾大学経済学部教授),
中田 正(日興ファイナンシャルインテリジェンス年金研究所副理事長),
北島和久(厚生労働省統計情報部社会統計課縦断調査室長補佐),
後藤敬一郎(同室長補佐),山下りつ子(同専門官),
福田節也(明治大学大学院政治経済学研究科助手),
西野淑美(日本女子大学人間社会学部社会福祉学科助手),
鎌田健司(明治大学大学院政治経済学研究科),
相馬直子(東京大学大学院総合文化研究科),
元森絵里子(東京大学大学院総合文化研究科)



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