一般会計プロジェクト



1 社会保障調査・研究事業

・平成15 年度社会保障給付費の推計

(1) 推計の方法

 本研究所では,毎年我が国の社会保障給付費を推計公表している。社会保障給付費とは,ILO(国際労働機関)が定めた基準に基づき,社会保障や社会福祉等の社会保障制度を通じて,1 年間に国民に給付される金銭またはサービスの合計額である。社会保障給付費は,国全体の社会保障の規模をあらわす数値として,社会保障制度の評価や見直しの際の基本資料となるほか,社会保障の国際比較の基礎データとして活用されている。
「平成15 年度社会保障給付費」は平成17 年9 月20 日に公表した。

(2) 推計結果の概要及び公表

  1. 平成15 年度社会保障給費の概要
    1. 平成15 年度の社会保障給付費は84 兆2,668 億円であり,対前年度増加額は7,002 億円,伸び率は0.8%である。
    2. 社会保障給付費の対国民所得比は,平成14 年度を0.22%ポイント下回る22.86%となった。これは,国民所得の対前年度伸び率がマイナスからプラスに転じたことなどによる。
    3. 国民1 人当たりの社会保障給付費は66 万300 円で,対前年度伸び率は0.7%である。
    4. 社会保障給付費を「医療」,「年金」,「福祉その他」に分類して部門別にみると,「医療」が26 兆6,154 億円で総額に占める割合は31.6%,「年金」が44 兆7,845 億円で総額に占める割合は53.1%,「福祉その他」が12 兆8,669 億円で15.3%である。
    5. 「医療」の対前年度伸び率は1.3%で微増である。これは,平成15 年度にサラリーマン本人の負担割合及び家族の入院に係る負担割合を2 割から3 割に引き上げる改正があったことと,老人定率1 割負担の徹底が実施され,受診を抑制する制度改正が行われたことによる。
    6. 「年金」の対前年度伸び率は0.9%である。
    7. 生活保護,児童手当,失業給付,社会福祉費等からなる「福祉その他」の対前年度伸び率は,△ 0.4% であり,平成2 年度以降13 年ぶりに減少した。
  2. 平成15 年度社会保障費財源の概要
    1. 平成15 年度の社会保障収入総額は101 兆2,526 億円で,対前年度伸び率は14.8%である。
      注)収入総額には,社会保障給付費の財源に加えて,管理費及び給付以外の財源も含まれる。
    2. 大項目では「社会保険料」が54 兆6,302 億円で,収入総額の54.0%を占める。次に「税」が27 兆7,853 億円で,収入総額の27.4%を占める。
    3. 収入総額の伸びを見ると,「資産収入」の対前年度伸び率が844.1%と増加が大きくなっている。これは,公的年金制度の基金の運用益が多かったからであり,具体例としては,平成15 年度は,国内株式(TOPIX 配当込み)の投資収益率が51.13%と年度の収益率としてはバブル崩壊後最も高いものとなったこと等があげられる。「税」については増加しているが,「社会保険料」については対前年度比較で減少している。
以上の「平成15 年度社会保障給付費」は,本研究所のホームページ(http://www.ipss.go.jp/)で公表資料と同じものが掲載され,PDF ファイルでも提供されている。「平成15 年度社会保障給付費」英語版“The Cost of Social Security in Japan FY2003” も英語ホームページ(http://www.ipss.go.jp/index-e.html)より同様に入手できる。また,『季刊社会保障研究』(Vol. 41 No. 3)において,「平成15 年度社会保障費―解説と分析―」を公表した。

(3) 研究組織の構成

担当部長
本田達郎(企画部長)
所内担当
勝又幸子(企画部第3 室長),米山正敏(同部第1 室長),
佐藤雅代(同部第3 室研究員,〜平成17 年7 月)
研究協力者
西岡 隆(厚生労働省政策統括官付政策評価官室補佐,〜平成17 年8 月),
佐藤裕亮(同,平成17 年9 月〜),庄司浩章(同室調査総務係)

・社会保障給付費の国際比較研究

 動向「日本のOECD 基準による社会支出2002(平成14)年度更新について―平成15 年度社会保障給付費公表,独自推計の背景と方法―」『海外社会保障研究』(第153 号)にて,平成15 年度社会保障給付費の公表資料において国際比較参考資料として掲載したOECD 基準と日本の独自推計の相違についての背景と推計方法を公表した。

・平成17 年版社会保障統計年報の編纂と刊行

 社会保障研究資料第5 号として社会保障統計年報平成17 年版を編纂し刊行した。本年報は,平成13 年1 月の省庁再編によりそれまで同資料を編纂・刊行していた社会保障制度審議会事務局が廃止となったため国立社会保障・人口問題研究所が編纂を引き継ぎ,平成14 年3 月にはじめて研究所編が刊行されたが,社会保障調査・研究事業の成果として位置づけられ研究資料番号を付与したのは平成14 年版からであり,今後も継続的に本資料の編纂と刊行を行い,社会保障研究の基礎資料として役立てていく。なお,社会保障統計年報の主要な統計情報については,研究所ホームページにおいてデジタルデータを随時公開し利用者の便利に配慮している。また,紙面に掲載できない時系列データについても,社人研内部データベースへデジタルデータとして収載している。




2 将来人口推計新システムの開発事業

 国立社会保障・人口問題研究所は,@全国人口に関する将来人口推計,A地域将来人口推計,ならびにB全国及び都道府県の家族類型別将来世帯推計を定期的に実施している。これらは各種社会保障制度の中・長期計画をはじめとする国または地方自治体における各種施策の立案の基礎資料として欠くことができない。これらの推計を実施するには,人口動態ならびに世帯動態に関するデータの収集と分析,モデルの研究開発,さらに推計システムの構築が必要である。本事業では,これらを段階的に開発,改善を行ってきた。平成17 年度は,これまでの各種推計の評価改善を行い,次回推計の準備研究を進めた。

・全国人口推計

(1) 研究概要

 平成17 年度においては,前年度に引き続き平成14 年1 月に公表した将来推計人口に関するモニタリング研究を行い,推計結果の評価検討を継続して行った。推計に関連する人口指標を作成し,推計仮定値ならびに推計結果を人口学的手法により評価を行うとともに,内外の人口推計の手法に関する研究情報を収集し,推計手法の評価改善を行った。また同時に,人口動態統計や国際人口移動統計などの人口推計のために必要な基礎データを収集した。

(2) 研究組織の構成

担当部長
高橋重郷(人口動向研究部長,〜平成17 年6 月)/
金子隆一(人口動向研究部長,平成17 年7 月〜)
所内担当
石井 太(企画部第4 室長),三田房美(同部主任研究官),石川 晃(情報調査分析部第2 室長),
池ノ上正子(人口動向研究部・情報調査分析部第1 室長),
岩澤美帆(人口動向研究部・社会保障応用分析研究部主任研究官),
守泉理恵(人口動向研究部研究員)
所外委員
加藤久和(明治大学政治経済学部助教授)

・地域人口推計(都道府県別人口推計,市区町村別将来人口推計)

(1) 研究概要

 本年度は平成の市町村大合併への対応を含め新たな推計手法の可能性を検討した。特に,推計手法については,人口規模の小さい自治体が多いことや市町村別に人口動態資料が得られないことなどの制約を受け,年齢別純移動率や女性子ども比の仮定値設定に際して隣接自治体の情報を組み込むなどの操作を行ったが,その妥当性の評価について検討を進めた。また,市区町村レベルの人口動態関係のデータ整備を行った。同時に,平成の大合併でほぼ3,200 から1,800 に再編された自治体の過去から現在までのデータの組み替え作業を進めた。

(2) 研究組織の構成

担当部長
西岡八郎(人口構造研究部長)
所内担当
小池司朗(人口構造研究部主任研究官),山内昌和(同部研究員)
所外委員
江崎雄治(専修大学助教授)

・世帯推計(都道府県別世帯推計)

 本年度は都道府県別世帯推計を公表した。日本の将来推計人口(2002 年1 月推計),都道府県別の将来推計人口(2002 年3 月推計),日本の世帯数の将来推計(全国・2003 年10 月推計)の公表をうけ,平成12 年国勢調査を基準世帯数とした都道府県別世帯数の将来推計を2005 年8 月に公表し,報告書を刊行した。推計方法ならびに結果の概要は以下の通りである。

(1) 推計方法の概要

 推計手法は世帯主率法を用いた。世帯主率法とは,世帯数は世帯主数に等しいことを利用して,人口に世帯主率(人口に占める世帯主数の割合)を乗じることによって世帯主数,すなわち世帯数を求める手法である。同法で将来の世帯数を算出するには,将来の年齢階級別・家族類型別の世帯主率ならびに将来人口の仮定を必要とする。このうち,前者の世帯主率については過去の趨勢を勘案して独自に仮定値を設定し,後者の将来人口については2002 年3 月に公表された都道府県別将来推計人口を利用した。なお,推計期間は,2000(平成12)年〜 2025(平成37)年まで5 年ごとの25 年間とし,世帯主の年齢5 歳階級別・家族類型(「単独世帯(世帯主:男)」「単独世帯(世帯主:女)」「夫婦のみの世帯」「夫婦と子から成る世帯」「ひとり親と子から成る世帯(世帯主:男)」「ひとり親と子から成る世帯(世帯主:女)」「その他の一般世帯」の7 区分)別に将来の世帯数を算出した。

(2) 推計結果の概要

  1. 一般世帯総数と平均世帯人員

     全国の一般世帯総数は2015 年にピークを迎えるが,都道府県別にはそれよりも早く,2010 →2015 年には24 道府県で減少する。2015 → 2020 年には34 道府県,2020 → 2025 年には宮城・滋賀・沖縄を除く44 都道府県で減少する。2000 年と2025 年の世帯数を比較すると,15 道府県で減少する。
     平均世帯人員は,2025 年にかけて全ての都道府県で減少する。2000 年の2.21 人(東京)〜 3.25 人(山形)から,2020 年には全ての都道府県で3 人未満となり,2025 年には1.98 人(東京)〜 2.91 人(山形)となる。

  2. 家族類型別世帯数および割合

     2000 → 2025 年に,単独世帯(世帯主:男,女),ひとり親と子から成る世帯(世帯主:男)は全ての都道府県で増加する。夫婦のみの世帯は41 都道府県,ひとり親と子から成る世帯(世帯主:女)は42 都道府県で増加する。
     2000 → 2025 年では,単独世帯(世帯主:男,女),夫婦のみの世帯,ひとり親と子から成る世帯(世帯主:男)の割合は全ての都道府県,ひとり親と子から成る世帯(世帯主:女)の割合は青森・高知を除く45 都道府県で上昇する。逆に,夫婦と子から成る世帯,その他の一般世帯の割合は全ての都道府県で低下する。
     最大の割合を占める家族類型は,2000 年では38 府県で夫婦と子から成る世帯であったが,2025 年には全ての都道府県で単独世帯となる。

  3. 高齢世帯(世帯主が65 歳以上の世帯)総数

     高齢世帯は2000 → 2025 年に全ての都道府県で増加し,埼玉・千葉では倍増する。
     高齢世帯が一般世帯に占める割合も2000 → 2025 年には全ての都道府県で上昇し,2020 年以降に全ての都道府県で30%以上となり,秋田など20 県では40%以上となる。
     世帯主が75 歳以上の世帯も2000 → 2025 年に全ての都道府県で増加し,高齢世帯に占める割合も全ての都道府県で上昇する。2025 年には全ての都道府県で45%以上となり,このうち東京では60%を超える。

  4. 家族類型別高齢世帯のうちの単独世帯(男女を合わせたもの)と夫婦のみの世帯

     単独世帯の場合,2000 → 2025 年に全ての都道府県で上昇する。2000 年に10%以上の値を示すのは鹿児島と高知の2 県であるが,2025 年には滋賀を除く46 都道府県で10%以上となる。
     夫婦のみの世帯の場合,2000 → 2025 年に全ての都道府県で上昇する。2000 年に10%以上の値を示すのは,鹿児島など14 道県で,その数は次第に増加し,2025 年には東京・沖縄を除く45 道府県となる。
     高齢の単独世帯と夫婦のみの世帯の合計が総世帯数に占める割合は,2000 → 2025 年に全ての都道府県で上昇する。2000 年に20%以上は鹿児島など7 県であったが,2025 年には全ての都道府県で20%以上となる。このうち鹿児島の34.7%をはじめとして8 道県で30%以上を占める。

(3) 研究組織の構成

担当部長
西岡八郎(人口構造研究部長)
所内担当
小山泰代(人口構造研究部第3 室長),鈴木 透(国際関係部第3 室長),
山内昌和(人口構造研究部研究員)





3 第13 回出生動向基本調査(実施)

(1) 調査目的

 出生動向基本調査は,他の公的統計では把握することのできない結婚ならびに夫婦の出生力に関する実態と背景を定時的に調査・計測し,関連諸施策ならびに将来人口推計に必要な基礎資料を提供することを目的としている。第13 回目にあたる今回調査は,国勢調査と同一年に実施することにより,比較性の高い統計を得ること,また将来推計人口の策定作業に対して最新の動向に関する情報を提供することを目的として,従来の周期による時期を2 年早めて2005(平成17)年に実施することとした。
 第13 回出生動向基本調査は,現在進行する出生率低下(少子化)が主として若い世代の結婚の動向(晩婚化,未婚化および非婚化)と,結婚した夫婦における出生力低下の両面から生じていることを踏まえ,結婚過程のタイミングと頻度,結婚意欲とその要因,ならびに夫婦の各段階における出生子ども数,出生意欲とその要因を中心に,その実態と需要面(意欲)ならびに供給面(社会経済環境,出生抑制,健康)にわたる背景を探ることとした。

(2) 調査の方法と調査対象

  1. 調査事項  本調査は,主として次の諸点に関する把握,計測を目的として設計された。
    1. 結婚過程,および結婚意欲の計測
    2. 結婚過程,および結婚意欲の社会経済的要因,意識要因(男女観・結婚観)の把握
    3. 夫婦完結出生力,出生過程の計測
    4. 夫婦完結出生力,出生過程の社会経済的要因,意識要因(家族観)の把握
    5. 出生意欲(理想・予定子ども数など)の計測と社会経済的要因,意識要因の把握
    6. 出生抑制手段・行動,女性の健康
    7. 就業,育児資源(家族支援,制度・施設)など子育ての環境
  2. 調査方法と調査対象

     厚生労働省統計情報部が平成17 年度に実施した国民生活基礎調査の後続調査として,配票自計・密封回収方式により行った。調査は全国のすべての国勢調査区から,無作為に抽出された調査地区内に居住する妻の年齢50 歳未満の夫婦ならびに18 歳以上50 歳未満の独身男女を対象とした。標本抽出は,平成17 年度の国民生活基礎調査の標本を親標本とし,そのなかから無作為に700 調査地区を選定し,その地区内の該当する夫婦と独身の男女を対象とした。

  3. 調査の時期

     平成17 年6 月1 日現在の事実を調査する。

  4. 調査実施状況と公表

     本調査の夫婦調査は,全国の妻の年齢50 歳未満の夫婦を対象とした標本調査であり(回答者は妻),平成17 年6 月1 日現在の事実について調べたものである。調査票配布数(調査客対数)7,976 票に対して,回収数は7,296 票であり,回収率は91.5%であった。独身者調査も夫婦調査と同一の調査地区に居住する年齢18 歳以上50 歳未満の独身者を対象として実施し,調査配布数は12,482 票,回収数は9,900 票であり,回収率は79.3%であった。なお,調査結果は,平成18 年度中に公表する予定である。

(3) 研究組織の構成

担当部長
高橋重郷(人口動向研究部長,〜平成17 年6 月)/
金子隆一(人口動向研究部長,平成17 年7 月〜)
所内担当
大石亜希子(社会保障基礎理論研究部第2 室長),釜野さおり(人口動向研究部第2 室長),
佐々井 司(同部第3 室長),池ノ上正子(同部主任研究官・情報調査分析部第1 室長),
三田房美(企画部主任研究官),
岩澤美帆(人口動向研究部・社会保障応用分析研究部主任研究官),
守泉理恵(人口動向研究部研究員)





4 第5 回世帯動態調査(分析)

(1) 調査概要

  1. 目的と方法

     本調査は,全国規模のサンプル調査で本格的に世帯構造の変化を把握した我が国唯一の調査であり,他の公式統計では捉えることのできない世帯の形成・拡大・縮小・解体の実態などを明らかにするものである。結果は,各種の行政施策立案などのほか,国立社会保障・人口問題研究所が実施する世帯数の将来推計のための基礎資料として活用される。
     今回の調査(第5 回)は,厚生労働省大臣官房統計情報部,都道府県,保健所を設置する市・特別区および保健所の協力を得て,平成16(2004)年7 月1 日に調査を実施した。調査の対象母集団は,全国の世帯主および世帯員である。調査対象者の抽出にあたっては,平成16 年国民生活基礎調査で設定された調査地区(5,280 地区)より300 調査地区を無作為に選び,その調査地区内に住むすべての世帯の世帯主および世帯員を調査の客体とした。調査票の配布・回収(密封)は調査員が行い,調査票への記入は原則として世帯主に依頼した。主な調査事項は,世帯の属性に関する事項,ライフコース・イベントと世帯内地位の変化,親の基本属性と居住関係,子の基本属性と居住関係などである。

  2. 実施状況

     調査は,平成16 年7 月1 日に実施され,対象世帯数は15,972 世帯,うち11,732 世帯から調査票が回収,最終的に10,711 世帯を有効票として集計・分析の対象とした。従って回収率は73.5%,有効回収率は67.1%となる。回収された調査票は,研究所における点検作業の後,入力作業,データ・クリーニング,合成変数の作成,集計まで終了している。

(2) 研究組織の構成

担当部長
西岡八郎(人口構造研究部長)
所内担当
鈴木 透(国際関係部第3 室長),小山泰代(人口構造研究部第3 室長),
清水昌人(同部第2 室長),山内昌和(同部研究員)





5 第3 回全国家庭動向調査(事後事例)

(1) 調査概要

 第3 回全国家庭動向調査の分析と併せて,全国調査の実施そのものの検討,ならびに調査の対象となった地域の実態を把握し,次回調査の調査設計に資するためにヒアリング調査を実施した。ヒアリング調査は,沖縄県庁,那覇市,八重瀬町等で行った。とくに,沖縄県南部の自治体の協力を得て,当該地域の家庭機能の変化と施策の現状等について聞き取り調査を実施した。今後,このヒアリング調査の結果を参考にして,第4 回全国家庭動向調査等の調査改善に利用する。

(2) 研究組織の構成

担当部長
西岡八郎(人口構造研究部長)
所内担当
小山泰代(人口構造研究部第3 室長)
所外委員
星 敦士(甲南大学講師)





6 第6 回人口移動調査(企画)

(1) 調査概要

  1. 調査の目的

     人口移動の動向と要因を明らかにするとともに,将来の人口移動の傾向を見通すことを目的として,平成13 年の第5 回調査に引き続き,第6 回の人口移動調査を行う。この調査ではこの5 年間で都道府県レベルの人口移動傾向がどのように変化したかを明らかにすることは当然であるが,さらに以下の点に重きを置く。
     第1 に,平成の市町村大合併が市区町村間人口移動に及ぼす影響を明らかにする。
     第2 に,「団塊の世代」の大量定年退職開始がUターン移動に及ぼす影響を明らかにする。

  2. 調査対象

     全国の世帯主および世帯員を対象とし,平成18 年国民生活基礎調査で設定された調査地区内より無作為に抽出した300 調査地区内のすべての世帯の世帯主および世帯員を調査の客体とする。

  3. 調査期日

     平成18 年7 月1 日

  4. 調査事項

     世帯・世帯主・世帯員の属性,世帯主・世帯員の居住歴と将来の居住地域見通し等

(2) 研究組織の構成

担当部長
小島 宏(国際関係部長)
所内担当
西岡八郎(人口構造研究部長),千年よしみ(国際関係部第1 室長),
清水昌人(人口構造研究部第2 室長),小池司朗(同部主任研究官)





7 社会保障総合モデル事業(平成16 〜 18 年度)

(1) 研究目的

 経済成長の鈍化,高齢化のさらなる進展など社会保障を巡る環境は依然厳しいままである。平成16 年度には大きな年金制度改正がなされた。また平成17 年度には介護保険制度の見直し,平成18 年度には医療保険法の改正が行われる。社会保障制度のあり方を考えると,短期的には財政収支の動向ももちろん重視されるべきであるが,しかしより長期的な視点から安定した制度を模索し,改革の方向性を議論していくことが欠かせない。そのためには,経済社会の動きと社会保障制度の動向を整合的に分析するツールが必要である。マクロ計量モデル,重複世代モデル,マイクロシミュレーション手法などはこうした目的に添った有効な分析手法であり,長期的な社会保障制度のあり方を研究する際には,モデルを用いて議論することが不可欠である。平成16 〜 18 年度のプロジェクトの特徴は,今までの蓄積をもとに,社会保障制度の抜本改革(年金制度の積立制や租税方式の導入など)の実現可能性について重複世代モデルなどによる検討を行うとともに,保険料の企業負担変更がもたらす諸影響(国際競争力や設備投資などへの影響)を探るため,マクロモデルを拡張し,海外市場や労働市場などを含めた広範囲な分野との連関を重視した改良を行うことである。さらに,重複世代モデルやマイクロシミュレーションなどを用いて,分配面への影響についても詳細な検討を行うことにある。

(2) 研究計画

 本研究では,研究目的にあるような状況を踏まえ,社会保障総合モデル事業においては,従前のプロジェクトで行ってきた年金制度改革の評価に加え,医療制度改革の方向性や介護保険の動向などの分析を行うとともに,年金の財政方式の抜本的改革に関する議論や労働市場等への影響,さらには年金積立金の運営が金融市場に及ぼす影響などを研究していくことを予定している。平成17 年度は,以下の3 つの項目に重点を置いて研究を重ねてきた。
  1. 基本データベースの構築等

     介護保険導入や年金制度改革等の状況変化を反映するような最新の社会保障関連データベースを構築するとともに,諸モデルに用いる金融市場・財投関連諸データの整備を行った。とりわけ,コーホート・ベースのデータを整理して,今回の年金制度改正を踏まえた給付と負担に関するシミュレーション実施の準備を行った。

  2. 既存のマクロモデル拡充の検討

     既存の長期マクロモデルを改訂するとともに,将来の人口減少に関連するいくつかのシミュレーションを実施するとともに,労働市場や海外市場等と連関した企業行動の分析が行えるような総合的なモデルへの拡充が可能かどうかについて,幅広い視点から検討した。

  3. OLG モデル等の整備

     OLG モデルについては,パートタイム労働への厚生年金適用拡大が次期改正の課題となったこと,及びフリーターなど不安定就労を余儀なくされることの多い若年層の国民年金加入問題などが認識されるようになったことを踏まえて,労働供給の側面をより現実的に改良したOLG モデルを作成して,年金改革の影響を世代間の公平性と所得分配への効果を視点にシミュレーション分析をおこなった。また,医療サービスが健康資本から人的資本を通じて労働供給に及ぼす影響を織り込むようにOLG モデルを改良し,医療保険改革の分析が可能となるOLG モデルの構築による総合的な分析を試みた。

(3) 研究組織の構成

担当部長
府川哲夫(社会保障基礎理論研究部長)
所内担当
金子能宏(社会保障応用分析研究部長),山本克也(社会保障基礎理論研究部第4 室長),
佐藤 格(同部研究員)
所外委員
大林 守(専修大学商学部教授),藤川清史(甲南大学経済学部教授),
加藤久和(明治大学政治経済学部助教授),上村敏之(東洋大学経済学部助教授),
熊谷成将(近畿大学経済学部助教授),土居丈朗(慶應義塾大学経済学部助教授),
中田大悟(経済産業研究所研究員),稲垣誠一(農業者年金基金数理情報技術役)

(4) 研究結果の公表

 国立社会保障・人口問題研究所発行のディスカッションペーパー,日本経済学会,日本財政学会等の学会等で研究成果を報告する予定である。




8 少子化の要因としての離婚・再婚の動向,背景および見通しに関する人口学的研究(平成17 〜 19 年度)

(1) 研究目的

 近年わが国では著しい未婚化が進行する一方で,離婚率は未曾有の急上昇を続けている。すなわち1970 年代には人口1,000 対1 件の水準であったのが近年は2 件を超え,ほぼ西欧諸国の水準に達している。しかもこの間の人口高齢化や未婚化の進行の影響を除くと離婚率は実質5 倍増しており,大多数の人がある年齢までに結婚し離婚は少ないという伝統的結婚パターンは崩れつつある。この間再婚数もほぼ倍増している。
 従来,少子化の人口学的要因として主に未婚化(晩婚化と非婚化)の影響が考えられてきており,結婚後の離婚・再婚の動向が出生率に及ぼす影響は微少なものとみられ十分な研究がおこなわれてこなかった。しかし最近,夫婦の出生力の低下傾向が指摘されており,離婚・再婚の急増が夫婦の出生力に及ぼす影響を含めて少子化の要因を研究することが必要となってきた。そこで本研究においては,離婚・再婚の動向,背景および見通しを人口学的に分析する中で,年齢別結婚持続期間別の有配偶率および有配偶出生率,離婚者・再婚者の出生率等を推定し,離婚・再婚が少子化に及ぼす影響を明らかにすることをめざす。
 また離婚の増加は単身世帯・ひとり親世帯の増加の一因となっており,将来の世帯類型構造の変化に及ぼす影響を予測する上でも離婚・再婚に関する人口学的研究は不可欠である。さらに離婚・再婚の動向は国民の心身の健康,福祉,就業,家計など広汎な分野で将来の国民生活に多大な影響を及ぼすものであるが,わが国では離婚・再婚に関する包括的研究が乏しい状況にある。本研究はわが国における離婚・再婚研究の基盤づくりをめざす。

(2) 研究計画

  1. 離婚・再婚の動向の人口統計学的分析(初年度及び2 年度)

     先行研究についてレビューをおこなったのち,国勢調査,人口動態統計などマクロ人口統計データを用いて,コーホートごとの年齢別結婚持続期間別の有配偶率を推定する。その際,生命表モデルを用い,配偶関係別生命表,結婚の生命表,結婚の多相生命表などを作成する。
     初年度においては既存の文献・資料を収集し先行研究のレビューをおこなうとともに,マクロ人口統計データを用いた分析を実施した。すなわち人口動態統計により婚姻・離婚の長期にわたる年次変化を分析し主にその関連性について考察をおこなうとともに,時間とともに離婚によって結婚が解消していく状況を結婚コーホート別に観察し,結婚状態からの離婚発生の分析をおこなうことにより結婚と離婚の関連性について検討した。また年内届出婚姻件数と届出遅れ比率,1955 年から2000 年までの結婚の多相生命表,配偶関係間異動率の推移等について検討した。

  2. 離婚・再婚の社会経済的背景と将来見通しについての検討(初年度及び2 年度)

     社会学,経済学などの視点も含めて,離婚・再婚の背景,将来の動向について分析する。その際,ミクロ的ライフコース・モデル,マクロ的人口・社会・経済モデルの両面からアプローチする。
     初年度においては既存の文献・資料を収集し,先行研究のレビューをおこなった。社会学の視点からは,離婚の社会経済的要因,離婚と家族構造,結婚難・少子化と家族システムなどに関連した分析結果が報告された。経済学の視点からは,離婚と労働市場に関する仮説の下で,その関連を時系列分析の手法を用いて検証をおこなった結果が報告された。また日本のみならず米国における離婚の原因と結果に関する研究の動向についても検討した。

  3. 離婚・再婚の動向が出生力に及ぼす影響についての分析(2 年度)

     上記を踏まえて,離婚・再婚を含めた包括的な出生力モデルを作成し,少子化の動向に及ぼす影響について分析する。具体的には,コーホートごとの年齢別結婚持続期間別の有配偶出生率,離婚者・再婚者の出生率等を推定する。

  4. 離婚・再婚の動向が世帯構造変化に及ぼす影響についての分析(3 年度)

     世帯類型構造(とりわけ単身世帯,ひとり親世帯など)の変化に及ぼす影響について分析する。

(3) 研究会等の開催状況

第1 回(2005 年7 月4 日)
報告:@佐藤龍三郎「本研究プロジェクトの進め方について」,A白石紀子「先行研究文献・資料等について」,B石川 晃「社人研将来人口推計プロジェクトと本プロジェクトの関係について」
第2 回(2005 年10 月19 日)
報告:加藤彰彦「離婚の家族人口学」
第3 回(2005 年11 月30 日)
報告:加藤久和「離婚と労働市場の時系列分析」
第4 回(2005 年12 月21 日)
報告:別府志海「結婚の多相生命表について」
第5 回(2006 年3 月1 日)
報告:米澤哲一(総務省統計局統計調査部国勢統計課審査担当課長補佐)「国勢調査における「配偶関係」の集計について」

(4) 研究組織の構成

担当部長
佐藤龍三郎(情報調査分析部長)
所内担当
石川 晃(情報調査分析部第2 室長),白石紀子(同部第3 室長),別府志海(同部研究員)
所外委員
安藏伸治(明治大学政治経済学部教授),加藤彰彦(明治大学政治経済学部助教授),
加藤久和(明治大学政治経済学部助教授),
ジェームズ・レイモ(ウィスコンシン大学社会学部助教授)

(5) 研究結果の公表

 初年度の研究成果は2006 年7 月刊行予定の第1 報告書に収録する。




9 非正規就業の増大に対応した社会保障制度の在り方に関する研究(平成17 〜 19 年度)

(1) 研究目的

 1990 年代後半以降,国際競争の激化や社会保険料の増大等を背景に,企業(求人側)にとっては労務費軽減という経済的誘因もあって非正規就業者が増大しており,それが(就業者数全体が増加しているにもかかわらず)厚生年金と健康保険の被保険者数の減少をもたらし,また,国民年金の未加入・未納問題の原因にもなっているなど,我が国の社会保険制度の大原則である皆年金・皆保険の在り方を考える上で大きな問題となっている。非正規就業の典型例としては,フリーターに象徴される若年者の不安定就労と,世帯主の賃金上昇率の低下に伴う家計補助のための(女性)パートタイム労働が挙げられるが,これらを含む就業形態の多様化に対して社会保障制度が総合的に対応すべきことは,社会保障審議会「今後の社会保障改革の方向性に関する意見書」(平成15 年6 月)が指摘するところであり,既に具体的な制度改正の検討が行われているもの((女性)パートタイム労働に対する厚生年金の適用拡大)や,政府としての対処の必要性が指摘されているもの(若年世代の非正規就業について社会生活基盤欠如の問題としてとらえて対処する必要性の指摘(「青少年育成施策大綱」(内閣府,平成15 年12 月)))もある。しかしながら,これまで働く側と企業の側の両方から非正規就業が社会保障制度に及ぼす影響を把握することは,必ずしも十分には行われてこなかった。
 したがって,本研究では,非正規就業者が増大する中で社会保障制度の持続的発展を図るために,若年者の不安定就労と(女性)パートタイム労働の性質の違いにも配慮しつつ,非正規就業者の実態やその抱える問題を把握・分析し,非正規就業者が将来に対して抱く意識やライフスタイルに応じて受け入れられやすい社会保障制度の在り方を考察することを目的とする。そのために,非正規就業者の実態と意識に関する既存調査及び企業と非正規就業者との関係に関する既存調査を収集・整理してデータ・アーカイブを構築し,これを利用して非正規就業者が不安定就労に留まる諸要因を考察する。その上で,それらの諸要因を踏まえつつ,非正規就業者が社会保障制度によってカバーされかつその担い手となることを通じて社会保障の持続的発展を導く諸条件を見いだすための分析を行うとともに,それらを前提とした社会保障制度の姿を示すシミュレーション分析を行い,社会保障政策の基礎的資料を提供する。

(2) 研究計画・実施状況

 社会保障制度が総合的に対応すべき非正規就業の実態把握は,フリーターあるいはパートというカテゴリーごとに個別に調査が実施されている。また供給側(就労)と需要側(企業)にも個別化して調査が行われている。本事業はこの4 つの次元を社会保障制度の立場から包括して分析を行うために,既存調査を集中的に利用しその再検討を行う。
 また,分析に利用すべきあるいは資料的価値のため収集すべきデータを選択すること,これらのデータを利用する際の新しい分析手法の検討を行うため,有識者と所内担当者からなる委員会を組織し,これらの論点の検討と外部有識者からのヒアリングを行う。
 平成17 年度:上述のデータ・アーカイブを構築しつつ,それを用いて2 次分析を行うことにより,非正規就業者が不安定就労に留まる理由(例:将来に対して不安があるものの他に選択肢が無い状況なのか,あるいは将来の目標実現のための過渡期として意識しているのか等)を詳細に把握することを通じて,非正規就業者への社会保障制度のあるべき姿(例:独立したリスクに対する所得保障として構築すべきなのか,正規就業者になった場合との接続性を考慮した社会保険の適用拡大としてとらえるべきなのか等)について検討する。
 平成18 年度:既存調査の収集とデータ・アーカイブ化を続け,初年度と本年度のアーカイブを利用して,非正規就業者の意識と収入面での実態を把握することを通じて,制度の適用拡大を行う際の保険料賦課に係る望ましい手法(例:段階保険料とするか比例的賦課とするか等)を明らかにする。
 平成19 年度:2 年度に渡り構築したデータ・アーカイブの分析に基づき,非正規就業者が,正規就業者と同等に機会が保障される社会保障制度によってカバーされかつその担い手となることを通じて社会保障の持続的発展を導く諸条件を見いだすための分析を行うとともに,それらを前提とした社会保障制度の姿を示すシミュレーション分析を行い,社会保障政策の基礎的資料を提供する。
 平成17 年度は,データ・アーカイブの構築については,1999 年から2004 年の間に実施された非正規就業者及び若年者の雇用問題等に関連する調査を実施または管理している政府関係機関・自治体・財団・シンクタンク等に,実施後の調査の管理方法について調査し,本研究事業のための2 次利用可能性について検討した。調査の2 次分析としては,内閣府が実施した「若年層の仕事と生活に関する意識調査」と「青少年の社会的自立に関する意識調査」の再集計を,内閣府の許可を得て行った。

(3) 研究会等の開催状況

第1 回(2005 年8 月12 日)
新谷康浩「フリーター対策は妥当か?:高卒無業者の歴史的相対化を手がかりにして」
第2 回(2005 年9 月1 日)
Robert Holzmann(Sector Director, Social Protection for joint HDN/PREM Team)「LABOR MARKET, JOB CREATION AND GROWTH」
第3 回(2005 年9 月13 日)
「欧州各国の若年就業政策の動向について」
夏目達也(名古屋大学)「フランス」
坂野慎二(国立教育政策研究所)「ドイツ」
堀有喜衣(労働政策研究・研修機構)「イギリス」
第4 回(2005 年12 月1 日)
金子能宏(社人研)「国民年金(第1 号)被保険者の未納・未加入の状況と意識」

(4) 研究組織の構成

担当部長
金子能宏(社会保障応用分析研究部長)
所内担当
西村幸満(社会保障応用分析研究部第2 室長),小島克久(同部第3 室長),
菊地英明(社会保障基礎理論研究部研究員),酒井 正(企画部研究員),
稲田七海(客員研究員)
所外委員
岩木秀夫(日本女子大学大学院人間社会研究科教授),
松繁寿和(大阪大学大学院国際公共政策研究科教授),
首藤若菜(山形大学総合政策科学科講師),
新谷康浩(横浜国立大学教育学部助教授),
大井方子(県立高知短期大学社会科学科助教授)


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