都道府県別の将来推計人口(平成9年5月推計)について

ここでは「都道府県別の将来推計人口」の概要について説明しています。データについては、将来推計人口データベース、その他の詳細については市販されている刊行物(2000円)及びCDROM(4000円)をご覧ください。

T.推計結果の概要


1.都道府県別総人口の推移


(1) 2020年代には人口減少県は44都道府県に

 先に公表された全国推計(中位推計)によれば、わが国の総人口は平成19(2007)年をピークにして減少をはじめる。 一方、国勢調査の結果によれば、平成2(1990)年から平成7(1995)年にかけて、すでに13都県で人口が減少している。今回の推計によれば(表1)、人口が減少する都道府県は、全国人口が減り始める前(平成12(2000)〜平成17(2005)年)に半数を超える(25都道府県)。人口の減少する地域はその後も広がり、平成32(2020)年から平成37(2025)年にかけては44都道府県で人口が減少する。 この時点で人口増加が続くのは埼玉県、滋賀県、沖縄県の3県である。

 また平成37(2025)年の人口を、平成7(1995)年人口を100とした場合の人口指数でみると、 指数が100未満、すなわち平成7(1995)年より人口が減少する都道府県は33都道府県である。また指数が90以下、 すなわち人口が1割以上減少する都道府県は17都道府県である。

 地域ブロック別にみると、平成7(1995)年から平成12(2000)年にかけて人口が減少するブロックは中国・四国である。 その後まず地方圏で、ついで大都市圏で人口減少が始まる。平成27(2015)年以降は、すべての地域ブロックで人口が減少する。

   表1 将来の都道府県別総人口

(2) 今後も東京の周辺県の人口シェアが増大

 平成7(1995)年の国勢調査によると、日本の総人口に占める割合が最も高かったのは東京都(9.4%)、ついで大阪府(7.0%)である。今回の推計によれば、東京都と大阪府の人口が日本の総人口に占める割合は今後低下し、平成37(2025)年にはそれぞれ7.8%、6.0%になる。一方、東京の周辺に位置する県や地方中核都市をもつ愛知県、福岡県、宮城県では総人口に占める割合が上昇を続ける。

 地域ブロック別にみると、平成7(1995)年に全国人口に占める割合が最も高かったのは南関東で、25.9%であった。南関東の人口割合は、今後も緩やかに上昇を続け、平成37(2025)年には26.8%に達する。また北関東と中部の人口割合も上昇するが、それ以外の地域ブロックの人口割合は低下する。

  

2.年齢別人口の推移

(1) 年少人口は全般的に減少傾向

 全国推計(中位)によれば、全国の年少人口(0〜14歳)は平成16(2004)年まで減少を続けたあと、出生率の反騰により平成22(2010)年まで増加すると予想されている。今回の都道府県推計によれば、こうした全国の傾向を反映して、平成12(2000)年まではすべての都道府県で年少人口が減少するが、その後平成17(2005)年から平成22(2010)年にかけては18府県で年少人口が増加する。しかし平成22(2010)年以降は年少人口の減少する地域が拡がり、平成32(2020)年には再びすべての地域で減少が起きる。

 また、年少人口が各都道府県の総人口に占める割合をみると(表2)、平成17(2005)年から平成22(2010)年にかけて割合の上昇する地域もあるが、その後は年少人口割合の下がる地域が増加し、平成32(2020)年以降はすべての都道府県で割合が低下する。平成37(2025)年時点で、年少人口の割合が最も高い都道府県は沖縄県(17.1%)、最も低いのは東京都(10.6%)である。

   表2 将来の都道府県別年少人口の割合

(2) 生産年齢人口も全般的に減少傾向

 全国推計(中位)によれば、全国の生産年齢人口(15〜64歳)は今後一貫して減少すると見通されている。今回の都道府県推計によれば、平成7(1995)年から平成12(2000)年にかけて生産年齢人口が減少するのは34都道府県にとどまり、東京の周辺地域では依然として生産年齢人口が増加する。しかし、平成27(2015)年にはすべての都道府県で生産年齢人口が減少に転じる。その後、幾つかの県で生産年齢人口が回復するが、大部分の都道府県では減少が続く。

 また、生産年齢人口が各都道府県の総人口に占める割合は、平成32(2020)年まですべての都道府県で減少する。しかし、全国推計(中位)によれば、平成33(2021)年から平成40(2028)年までは全国の生産年齢人口割合が上昇することもあり、平成32(2020)年から平成37(2025)年にかけては24府県で生産年齢人口割合が上昇する。平成37(2025)年時点で、生産年齢人口の割合が最も高い都道府県は埼玉県(62.4%)、最も低いのは島根県(53.7%)である。

(3) 老年人口は平成32(2020)年まで全県で増加

 今回の都道府県推計によれば、老年人口(65歳以上)はすべての都道府県で平成32(2020)年まで増加する。老年人口の増加率が最大の時期は、ほとんどの県で平成7(1995)年から平成12(2000)年にかけてである。しかし老年人口の増加率はその後変動をともないながら縮小していき、平成32(2020)から平成37(2025)年にかけては31都道府県で老年人口が減少に転じる。平成37(2025)年の段階で老年人口数が多い都道府県は、東京都、神奈川県、大阪府、埼玉県、愛知県など大都市圏に属する都府県である。また増加率でみると、平成7(1995)年から平成37(2025)年にかけて老年人口が倍以上に増加するのは、茨城県、埼玉県、千葉県、神奈川県、愛知県、奈良県、沖縄県である

   図 都道府県別の老年人口(平成7年,平成37年)

(4) 平成37(2025)年には14県で老年人口割合が3割を越える

 老年人口が総人口に占める割合は、どの地域でも今後一貫して上昇する。都道府県別にみると(表3)、老年人口割合が30%を超える都道府県は、平成27(2015)年には4県、平成32年には8県、平成37(2025)年には14道県に達する。平成37(2025)年に最も老年人口割合が高い都道府県は秋田県(33.8%)、最も低いのは滋賀県(22.8%)である。

   表3 将来の都道府県別老年人口の割合

U.推計方法の概要

1.推計期間

 推計期間は平成7(1995)年〜平成37(2025)年まで5年ごとの30年間とした。

2.推計の方法

 前回同様、コーホート要因法を用いた。この方法は、ある年の男女・年齢別人口を基準人口として、ここに出生率や移動率など4種類の仮定値をあてはめて将来人口を計算する方法である。そのためコーホート要因法による推計には、(1)基準人口、(2)将来の出生率、(3)将来の生残率、(4)将来の純移動率、(5)将来の出生性比が必要となる。

 なお最終の推計結果は、いったん各都道府県別にコーホート要因法によって将来人口推計を行った後、各都道府県の男女・年齢別人口の推計値の合計が全国推計(中位)の値と一致するよう一律補正を行ったものである。

3.基準人口

 推計の出発点となる基準人口として、総務庁統計局『平成7年国勢調査』による平成7(1995)年10月1日現在、都道府県別、男女・年齢(5歳階級)別人口(総人口)を用いた。ただし、年齢「不詳」の人口を5歳階級別に按分して含めた。

4.女子年齢別出生率の仮定

 将来の出生数を推計するには、将来の女子年齢別出生率が必要となる。本推計では、出生率の設定に将来の全国推計値の動きを反映させるため、都道府県別、女子年齢別に全国値との相対的な格差を計算し、この相対的格差を将来値の仮定設定に用いた。ただし、この相対的格差の変動傾向には一定の特徴を示す地域があるため、将来値の仮定設定に際してはこの地域差を考慮した。

 具体的には、まず全国値との相対的格差について、昭和55(1980)年以降一貫した拡大、或いは縮小傾向が見られる場合は、この傾向を将来にも反映させることにした。ただし全体としてみると、近年、どの年齢階級でも地域格差の拡大・縮小傾向は鈍り、安定に向かいつつある。そこで平成2(1990)〜平成7(1995)年から平成7(1995)〜平成12(2000)年にかけての相対的格差の変化を、昭和60(1985)〜平成2(1990)年から平成2(1990)〜平成7(1995)年にかけての変化の半分と仮定設定して、計算を行った。また平成12(2000)〜平成17(2005)年以降はその相対的格差を一定とした。一方、相対的格差に昭和55(1980)年以降一定の変動傾向がみられない場合には、平成2(1990)年〜平成7(1995)年の相対的格差を将来も一定と設定した。そして最終的に将来の都道府県別、女子年齢別出生率を設定する際には、以上のようにして設定された将来の相対的格差を、全国推計(中位)での将来の女子年齢別出生率に当てはめて、仮定値の計算を行った。(ただし沖縄県に関しては、30歳代後半以降の出生率が現在でも非常に高い水準にあるため、年齢別出生率の相対的格差を一定にすると、将来の30歳代後半以降の出生率が異常に高く推計されてしまう。そこで沖縄県に限り、30歳代後半以降の出生率の相対的格差を平成32(2020)〜平成37(2025)年まで指数関数的に減少させた。)

5.男女・年齢別生残率の仮定

 本推計でいう生残率とは、例えばある年齢X歳の人口が、5年後に(X+5)歳になるまで生き残る確率のことである。本推計では、将来の都道府県別、男女・年齢別生残率について、将来の全国推計値の動きにあわせた設定を行うが、同時に生残率の地域格差が近年縮小していることを考慮し、都道府県格差が今後も縮まっていくという仮定設定を行った。

 具体的には、まず平成7(1995)年の都道府県別生命表を作成し、平成2(1990)年の都道府県別生命表(厚生省大臣官房統計情報部作成)との間で、平成2(1990)〜平成7(1995)年の都道府県別、男女・年齢別生残率を計算した。そのうえでこの都道府県別、男女・年齢別生残率と全国の生残率との相対的格差を計算し、この相対的格差を平成102(2090)〜平成107(2095)年に解消するよう直線的に減少させた。格差が解消される目標年を平成102(2090)〜平成107(2095)年と仮定したのは、昭和55(1980)年から平成7(1995)年までの都道府県別平均寿命について、その都道府県間格差(標準偏差)の縮小傾向に回帰直線をあてはめると、格差が0になる年が男子で平成96(2084)年、女子で平成111(2099)年となるためである。

 最終的に将来の都道府県別、男女・年齢別生残率を設定する際には、以上のようにして仮定された将来の相対的格差を、全国推計(中位)で用いられた将来の男女・年齢別生残率に当てはめて、仮定値の計算を行った。

6.男女・年齢別純移動率の仮定

 純移動率とは、ある地域の転入超過数が地域人口に占める割合を示したものである。都道府県の年齢別純移動率は、その時々の国全体あるいは各都道府県の経済状況の影響をうけるため、一定のパターンや規則性を見いだすことが難しい。ただし住民基本台帳移動報告によれば、日本全体の人口移動数は近年、低水準で安定した動きを見せている。また地域ブロック別の純移動率には平成4(1992)年以降大きな変化はほとんどみられない。そこで今回は、男女とも各年齢層で直近(平成2(1990)〜平成7(1995)年)の純移動率を将来も一定と仮定した。

 具体的には、コーホート生残率法により平成2(1990)〜平成7(1995)年の男女・年齢別純移動率を計算し、この値を将来も一定と仮定した。

7.出生性比の仮定

 全国推計と同様、最近5年間の全国の実績に基づき、女子100に対して男子105.6とした。

8.兵庫県および大阪府の仮定値の設定

 平成7(1995)年における兵庫県の生残率・出生率・純移動率は、阪神淡路大震災により大きな影響をうけたため、それぞれについて地震の影響を除去した値を推計し、その値をもとに将来の仮定値を設定した。また地震により兵庫県から転出した人口については、今後の復興にともない県に戻ると考えられるが、現在の段階では帰還する人口の割合を見込むことは難しい。そこで本推計では、地震により転出した人口のうち、5年後に半分、10年後にさらに4分の1が転出先の各都道府県から兵庫県に戻ると仮定して、将来人口の推計を行った。

 一方、兵庫県からの転出人口の半数以上を受け入れたのは大阪府であり、このため平成2(1990)〜平成7(1995)年の大阪府の純移動率は、兵庫県同様地震の影響をかなり受けている。そこで、大阪府の純移動率についても地震の影響を除去した値を推計し、その値をもとに将来の仮定値を設定した。



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政府刊行物サービスセンターへ 「都道府県別将来推計人口 平成7(1995)年〜37(2025)年 平成9年5月推計」
国立社会保障・人口問題研究所 編 (1997.10)
発行:厚生統計協会 \2,100(税込)
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